リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

用水路に鳩100羽の死骸

2009-08-23 | リッスン・トゥ・ハー
隊長は何も言わなかった。何も言わずに突っ込んでいった。俺の生き様をお前ら見とけよ、と無言のうちに伝えた、と史実は伝えているが実際は、ただ、テンションが上がってふらふらと突っ込んでいってしまった、なんか楽しくなりそう、という漠然とした感覚に身を任せて、ただ本能に正直だったにすぎない。後世の人々が好意的に解釈し、それを正義の勇気ある行動とした。それを見習って続いて部隊は活発に動いた。というわけでもなく、隊長の本能を、感じ取り感化されたその肉体のままに行動したわけだ。活発に突っ込み続ける。それが全く無意味であろうとも、何ら効果をもたらさないことであろうとも、関係がない。本能は偉大である。結果的に100羽余りが用水路に死骸としてある。勇敢な獅子、として長く永遠に奉られているが実際は、阿呆の集団である。

立ちくらみの与謝野氏

2009-08-23 | リッスン・トゥ・ハー
へえ、ここかい、ここが有名な立ちくらみ峠かい、なんでい、何の変哲もねえじゃねえか、おもしろくもなんともねえ。全くこれで有名だってんだからまいっちゃったね。与謝野氏は饒舌に誰にしゃべるともなくしゃべっている。淡々と与謝野氏の周りには誰もいないのにかまわずしゃべるしゃべる。しゃべることが存在する意義なんだと言わんばかりに。峠のその非常に細い道で与謝野氏の声はこだましている。無駄に張りのある良い声であった。与謝野氏はそのかすかな反響をいたく気に入り、何か歌でも歌いたくなってきた。丘を超えゆこうよ口笛吹きつつ、なんて歌い始めた。与謝野氏は思ったことは迷わず実行するたぐいまれな実行力の持ち主であった。気づけば熱唱している。のどもつぶれんばかりの熱唱で、酸素が足りなくなってくる。周りのものも同じ気持ちだったらしく赤い顔をして声張り上げている。声を裂けそうな声をもっとあつめてくれ。ちくしょう、やけにくらくらすらぁ。