新聞のコラムは名筆家が書いていると聞く。少ない分量で辛辣な世評を書いたりするのだから、腕が良くなくては出来ない。だが、読売の「編集手帳」の文章が時々私には分からない。本ブログを読んで下さるのは文章に関心のある方が多いので、教えて頂ければ、と思ってこれを書いている。
間接の原因を直接の原因であるかのように語る論法を〈春秋の筆法〉という。尖閣諸島近海の日本領海内で中国漁船の違法操業がやまないのは、春秋の筆法をもってすれば鳩山由紀夫前首相が災いしている。
これが9月9日(そう言えば今日は「重陽」だ)のコラムの書き出しである。上の文章は、「中国漁船の違法操業は、間接原因を直接原因のように言えば、鳩山前首相が災いになっている」と言っている。鳩山が間接原因である、と言う事になる。
その原因が何であるかは、次に書かれている。
首相として出席した今年5月の全国知事会で、日本固有の領土である尖閣諸島に触れ、「帰属問題は日本と中国の当事者同士でしっかり議論してもらいたい」と語った。さて、どちらの国の領土になりますかね…そう聞こえよう。
自国の領土に関心の無い無責任な発言である、とコラムは言っている。誰が聞いても、この首相発言はそう聞こえる。で、コラムは次の段落で、岡田外相がこの発言を不適切だと打ち消しはしたものの、「綸言汗の如し」という、と、取返しは付かないんだよ、と語っている。
「綸言」とはまた難しい言葉を使うものだ。「綸言」は君主の言葉で、それは出た汗と同じく、一度口にしたら引っ込める事が出来ない、との意味である。日本では綸言=天皇のお言葉、と理解されている。
一国の首相として、私は国土にはあまり関心が無い、と言っちゃったんだもんねえ、とコラムは非難しているのである。
と言う訳で、中国の違法操業の原因は鳩山前首相にある、と言う話になる。だが、それはこのコラムの論法で言えば、あくまでも間接原因であって、直接原因ではない、と言う事になる。
で、私は分からなくなったのである。これは間接原因だなんて言って良い問題なのか。いくら国内向けの発言とは言え、絶対に直接原因になっているはずだ。だからコラムは「自国の領土に関心が乏しく、執着も薄い首相の発言が、中国側には印象深く耳に残ったことだろう」と書いている。
中国が周辺の海底資源の確保のためにも領海を広げようと虎視眈々と狙っていて、実際にそうした行動をしているのは、我々ははっきりと知っている。韓国の竹島占領だってそうだ。日本の意気地のなさを良い事に、無法のし放題である。日本の弱気がすべての原因であって、これはすべて「直接原因」になっている。
コラムは原因の一つだと考えて、あるいは国内向けの発言だから間接原因だと言うのかも知れないが、それは日本人の心を踏みにじる考え方だ、と私は思う。
「春秋の筆法」と言い、「綸言汗の如し」と言い、気の利いた言葉を並べているが、その論旨は決して褒められた物ではない、と思う。
コラムは次のように締めくくっている。
「政治とカネ」といい、混迷の普天間といい、要らざる〝置き土産〟の多い人である。
「春秋の筆法」と言い、「綸言汗の如し」と言い、要らざる〝格言〟の多いコラムである。
と私はこのブログを締めくくる事にしたい。
間接の原因を直接の原因であるかのように語る論法を〈春秋の筆法〉という。尖閣諸島近海の日本領海内で中国漁船の違法操業がやまないのは、春秋の筆法をもってすれば鳩山由紀夫前首相が災いしている。
これが9月9日(そう言えば今日は「重陽」だ)のコラムの書き出しである。上の文章は、「中国漁船の違法操業は、間接原因を直接原因のように言えば、鳩山前首相が災いになっている」と言っている。鳩山が間接原因である、と言う事になる。
その原因が何であるかは、次に書かれている。
首相として出席した今年5月の全国知事会で、日本固有の領土である尖閣諸島に触れ、「帰属問題は日本と中国の当事者同士でしっかり議論してもらいたい」と語った。さて、どちらの国の領土になりますかね…そう聞こえよう。
自国の領土に関心の無い無責任な発言である、とコラムは言っている。誰が聞いても、この首相発言はそう聞こえる。で、コラムは次の段落で、岡田外相がこの発言を不適切だと打ち消しはしたものの、「綸言汗の如し」という、と、取返しは付かないんだよ、と語っている。
「綸言」とはまた難しい言葉を使うものだ。「綸言」は君主の言葉で、それは出た汗と同じく、一度口にしたら引っ込める事が出来ない、との意味である。日本では綸言=天皇のお言葉、と理解されている。
一国の首相として、私は国土にはあまり関心が無い、と言っちゃったんだもんねえ、とコラムは非難しているのである。
と言う訳で、中国の違法操業の原因は鳩山前首相にある、と言う話になる。だが、それはこのコラムの論法で言えば、あくまでも間接原因であって、直接原因ではない、と言う事になる。
で、私は分からなくなったのである。これは間接原因だなんて言って良い問題なのか。いくら国内向けの発言とは言え、絶対に直接原因になっているはずだ。だからコラムは「自国の領土に関心が乏しく、執着も薄い首相の発言が、中国側には印象深く耳に残ったことだろう」と書いている。
中国が周辺の海底資源の確保のためにも領海を広げようと虎視眈々と狙っていて、実際にそうした行動をしているのは、我々ははっきりと知っている。韓国の竹島占領だってそうだ。日本の意気地のなさを良い事に、無法のし放題である。日本の弱気がすべての原因であって、これはすべて「直接原因」になっている。
コラムは原因の一つだと考えて、あるいは国内向けの発言だから間接原因だと言うのかも知れないが、それは日本人の心を踏みにじる考え方だ、と私は思う。
「春秋の筆法」と言い、「綸言汗の如し」と言い、気の利いた言葉を並べているが、その論旨は決して褒められた物ではない、と思う。
コラムは次のように締めくくっている。
「政治とカネ」といい、混迷の普天間といい、要らざる〝置き土産〟の多い人である。
「春秋の筆法」と言い、「綸言汗の如し」と言い、要らざる〝格言〟の多いコラムである。
と私はこのブログを締めくくる事にしたい。