俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

分断淘汰

2014-09-16 10:10:09 | Weblog
 生存競争において有利な性質は種として継承される。体力も知力も走力も飛翔力も両性が継承する。ところが種族内競争(性淘汰)においては両性が共有する必要が無い。むしろそれぞれが役割分担をして特化したほうが繁殖のために有利になることが多い。卵子と精子が最も分かり易い例だ。栄養分を内包して動かない卵子と、遺伝子以外には殆んど何も持たず機動力しか無い精子が受精する。それぞれが中途半端に機能を持つよりもお互いに特化したほうが合理的だ。これを分断淘汰と言う。
 オスはしばしば生存競争に役立たない形状を持つ。クジャクの尾羽や鹿の角が典型例だ。魚や鳥や虫でしばしば見掛けられる派手な色彩もオスだけに表れる特徴だ。これらの特長はオスだけに遺伝する分断淘汰であり、繁殖のためにしか役立たず生存競争においてはむしろ障害となる。
 オスだけに見られる特性も分断淘汰によるのではないだろうか。ライオンやゴリラなどに見られる連れ子殺しや、ガガンボモドキなどの求愛給餌、あるいは多くの動物に見られる求愛ダンスや小鳥の囀り、これらは総てオスだけに見られる行動だ。つまりオスだけに継承される本能だ。
 どの動物でもオスは交尾に積極的でメスは消極的だ。これはオスだけに強い交尾欲が備わっているからではないだろうか。
 人類においても男女の性欲は子供の頃から大きく異なる。明らかに男のほうが圧倒的にスケベだ。これは万国共通であり文化による差異は殆んど見られない。先天的な相違と考えるべきだろう。
 売春も男の欲望に基づく。女のための売春は殆んど無い。ホストクラブ通いは多分買春とは別の欲望に基づくのだろう。慰安婦は歴史に多く登場するが、女の園に慰安男が現れることは殆んど無かろう。性犯罪の犯人も殆んどが男だ。
 性欲はオス・男だけの欲望であり、メス・女には遺伝されない。近い性質はあろうが、質的・量的に大きく異なる。だから男の性欲は女には理解不可能だ。

降圧剤

2014-09-16 09:38:22 | Weblog
 新聞・テレビ・雑誌のどれを見ても朝日新聞の偽装を非難する記事だらけだ。昨年秋にはレストランの偽装が大々的に報じられたし、STAP細胞の疑惑は科学スキャンダルではなく犯罪であるかのような扱いだ。日本人は偽装には容赦しない。
 ところがもっと重大な偽装が余り報じられていない。ノバルティスファーマ社による薬効偽装事件だ。規模においても重大性においても大変な事件だ。偽装されたのはバルサルタンという血圧降下剤のデータだ。この薬の年間売上高は1,000億円以上であり、偽装に利用されたのは京都府立医大などの5大学で、データ解析のプロと身分を偽らせた社員を使ってデータを改竄するという明らかに会社ぐるみでの犯罪だ。そして何よりもこの薬効偽装は人の命に関わることだ。医師は偽装されたデータを信じて薬を処方する。患者は医師を信じて薬を飲む。ところがそのデータは捏造されたものだった。このために病気を悪化させたり死亡した患者もいた筈だ。この極悪非道ぶりと比べれば、レストランの偽装は料理長などによるほんの勘違いレベルの問題に過ぎない。犯罪のレベルが天と地ほど異なる。
 薬害に関する情報が偏るのは、記者の大半が文系学部の出身だからだろう。薬効にせよデータ解析にせよ彼らが苦手とするジャンルだ。むしろ被害者の姿が見える子宮頸癌ワクチンの副作用のほうが扱い易い。
 報道の基準は重要性であるべきだ。読者のニーズや記者の得手・不得手あるいは自社の利害などを基準にすべきではない。ノバルティスファーマ社による犯罪は類を見ないほど悪質な事件でありながら、マスコミも政府も余り騒がない。これは鼻薬が効いているせいだろうか。
 しかしここで奇妙なことに気付く。なぜ被害者が一人も名乗り出ないのだろうか。偽装された薬のせいで病状が悪化した人がいないのであれば降圧剤はそもそも必要無かったということだろう。本態性高血圧症と名付けられた病気が実は病気ではなく治療する必要も無かったのであれば効かない薬でも充分だ。小麦粉でもビタミン剤でも構わない。バルサルタンは薬効が乏しい薬だと分かっていたからこそデータを捏造したのであり、多分副作用も少ないのだろう。元々病気ではない贋患者を対象にするのであれば副作用の少ない物が最高の贋薬だろう。贋の病気に贋の薬と贋のデータという組み合わせは現代日本の医療問題の最悪の縮図だ。