俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

独立

2014-09-20 10:26:04 | Weblog
 独立の是非を多数決で決めることが正当とは思えない。55%の人がなぜ残りの45%の人を支配できるのだろうか。多数決とは様々な意見の共存を認める民主主義ではなく、多数者の横暴を認める権力主義だ。
 独立運動の背景は様々なので一概には言えないが、今回のスコットランド独立運動には地域エゴが潜んでいる。北海油田の利権を独り占めすれば今よりも豊かになれるという思惑があったように思える。
 通常は分裂しないほうが有利だ。アメリカの50の州(state)のように自主性を保ったままで連携をしたほうが得だ。もしアメリカが50の国に分裂すれば超大国から一挙に弱小国になるだろう。ユーロはアメリカに対抗するための連携だろう。アメリカの南北戦争は南部の独立を阻止するための戦争だったし、そのアメリカはイギリスとの独立戦争で勝つことによって生まれた。
 もし多数決が正当であるなら、日本ではテロリスト集団としてしか報道されない「イスラム国」にも正当性がある。多数者でありながら虐げられているスンニ派が独立を主張することは妥当であり、むしろイラクとシリアの現政権こそ少数者による独裁だと言えよう。日本のマスコミは欧米側に偏り過ぎている。
 地域の独立の是非はそれぞれの事情があるが、イギリスが独立の是非を多数決に委ねたことは困った前例になる。
 独立問題を抱えた国は少なくない。ウクライナから独立してロシアに併合されたクリミアや今も戦闘中の東ウクライナだけではない。スペインのカタルーニャ州やカナダのケベック州なども以前から揉めている。これらの地域は歴史的・文化的に異質だからだ。これらの地域が住民投票を要求しても国は認めまい。独立派が勝つ可能性がかなり高いからだ。イギリスの場合、独立賛成派はせいぜい3割と予想されていたから住民投票が認められただけであり、明らかに独立支持派のほうが多ければ認める訳には行くまい。イギリスは内紛の火種を作ってしまった。
 しかし特定の地域や民族が差別・迫害されているなら独立は肯定できる。具体的にはチベットやウィグルなどだ。チベットでは仏教徒、ウィグルではイスラム教徒(ムスリム)が多数者だ。中国の易姓革命の多くが宗教団体による反乱に端を発しているので中国共産党は宗教を敵視している。共存できる可能性は極めて低い。
 もし沖縄が独立を求めたらどうなるだろうか。沖縄県はかつての琉球王国であり本土とは歴史も文化も異なる。しかし海以外に殆んど資源が無いだけに独立しても自立することは困難だ。沖縄の独立とは実は、海洋進出を目論む中国に併合されるということに過ぎず、こんなことを沖縄県民は望まないだろう。しかし政府との交渉カードに独立を使うことは有効だろう。これをチラ付かせて、たとえ決定権が無くても住民投票を実施して県民の怒りを表明することによって自治権を拡大することは可能なのではないだろうか。

動物の脳

2014-09-20 09:38:47 | Weblog
 人類の脳の90%以上が爬虫類と共通のものだ。人類特有の脳は数%に過ぎない。この事実から人類を動物と同一視しようとは思わない。パソコンであればたった1つのソフトをインストールしただけでまるで別の機械のように変わるように、高度な脳が少し備わっただけで全く別の動物になり得る。人類とチンパンジーの遺伝子は98.5%同じだそうだが、人類とチンパンジーを同一視する人はいない。
 人類を人類たらしめる能力は予想力だと思う。現在の状況に反応することならどんな原始的な動物にでもできる。しかし事実を記憶してそれに基づいて未来を予想することは人類にしかできない。
 蝶の道という言葉がある。蝶は一旦覚えた順路を何度でも通る。たとえ危険な目に会っても懲りない。だから蝶を捕獲しようとする人は、一度逃した場所で待ち構える。
 ウサギならもう少し賢い。躓いた切り株の位置を覚えるから危ない場所を避けて通る。動揺の「待ちぼうけ」のような守株ではウサギを捕獲できない。
 ニワトリは3歩歩けば忘れる、と言われているがこれはニワトリに失礼なデマだ。鳥類の脳は小さいが意外と賢いことをカラスが証明している。
 人類には知恵があるが動物と共通する所も多い。だから人の心理を理解するために動物の行動が大いに役立つ。中でも生存と繁殖はどの動物にとっても普遍的に重要だから特によく似た行動をする。人類の恐怖・食欲・性欲は、理性よりも直感的あるいはヒューリスティックに反応し勝ちだ。
 繁殖における男の行動は動物のオスと酷似している。動物的欲求に知性が乗っかって巧妙になってはいるが基本は全く同じだ。
 恐怖に駆られた時には先祖返りをする。恐怖心に支配されれば理性は働かない。戦場でしばしば異常行動が起こるのは恐怖心に支配されるからだ。恐怖に駆られた人を正気に戻せるのは理性ではない。ショック療法が有効だ。昔の映画ではヒステリーを起こした女性の頬をひっぱたくシーンがあった。西部劇であればパニックに陥った群衆を鎮めるために保安官が空に向かって発砲した。
 振り込め詐欺に引っかかるのも思い掛けない話に、理性ではなく動物の脳が反応してしまうからだ。
 怒りは恐怖の裏返しだ。恐怖から脱出できない時に怒りが現れる。だから怒った人も思考力を失う。肝心な時に冷静に話し合って解決できないのは人が動物の脳を持っているからだ。