俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

優等生

2014-09-14 10:33:41 | Weblog
 私は優等生を否定しない。優等生は、元々賢いかよく勉強したかのどちらかだろう。頭が悪くてしかも努力しなかった人は決して優等生にはなれない。
 但し一部に困った人がいることは事実だ。昔教わったことを真実と信じて疑わない人だ。現在の教育制度においては教わったことを鵜呑みにすることが求められている。事実は1つしか無いという前提で教育が行われており、どちらも正しいという事態には触れない。こんなカリキュラムだから疑問を持つことは時間の浪費にしかならない。授業で教えられたことに疑問を持って自力でそれを覆しても、それは試験では役に立たない無駄な知識に過ぎない。
 かつて最も迷惑だったのは共産主義かぶれした連中だった。彼らはどこかで教わった共産主義を絶対に正しいと信じていた。事実を積み重ねるよりも先にイデオロギーがあった。イデオロギーのためなら事実を歪めるのだから議論が成り立たなかった。これまでの朝日新聞もそうだった。従軍慰安婦の強制連行を史実と信じていたから嘘と詭弁を繰り返しても恥じなかった。
 今最も迷惑な元優等生は医師だろう。医師は殆んどがそれなりに偏差値を稼いでいた元優等生だ。だからかつて教わったことを盲信している。医学が進歩して従来の医療が否定されても改めようとしないし、その患者に合わない治療であっても悪いのは患者であって治療法ではないと考える。養老孟司氏の解剖学の授業で「この死体、間違ってます」と言った学生がいたそうだが、間違っているのは人間ではなく知識だ。そんなことも分からない医師が多過ぎる。
 医療は患者に合わせるべきだ。99%の人に有効な治療であろうとも1%の人には有害であり得る。1%を異常者として切り捨てるのではなく患者に合った医療を行うべきだ。医学は人間学であって人間の数だけ正解があり得る。教科書どおりの治療を絶対視すべきではない。患者に合わせたオーダーメイド医療が理想だが、せめて薬の量を臨機応変に増減するイージーオーダー医療であるべきだ。年齢も体重も無視して総ての大人に同量の薬を処方するような教条主義は改めるべきだ。少し賢い患者であれば医師から渡された薬の一部を捨てている。

虫の売春

2014-09-14 09:58:36 | Weblog
 売春は人類最古の職業と言われている。日本語でも商売女という言葉は売女(ばいた)の類義語だ。死語になったBGの語源のbusiness girlにもそんなニュアンスがあったらしい。
 不思議なことに売春は人類独自のシステムではない。虫の世界にも存在する。虫は金銭を使わないから食物が対価として使用される。
 アメリカに棲むツマグロガガンボモドキという昆虫の例が最もよく知られている。この虫のオスは大きな獲物を捕らえるとメスへのプレゼントに使う。勿論、無償ではない。交尾するためだ。交尾はメスが餌を食べている間に行わねばならないので獲物が小さければすぐに食い逃げされて交尾できない。だから良質で大きな餌が選ばれる。
 オスの生活は過酷だ。自分の餌だけではなくメスに与える餌も集めねばならない。そのためにオスの行動範囲はメスの2倍、クモの巣に掛かる数は3倍と言われている。
 求愛給餌と呼ばれるこの行動はオドリバエやクモなどにおいても見受けられる。本能と言ってしまえばそれまでだが、なぜこんな奇妙な仕組みが生まれたのだろうか。彼らの先祖にはこんな習性は無かった筈だ。オスが持っていた餌を横取りしたメスに交尾したことがきっかけになったのではないだろうか。
 多くの動物が餌を奪い合っている。他種との奪い合い以上に、同じ餌を食べる同種内での争いは激しい。同性であれ異性であれ容赦しない。これらの虫の場合、餌を奪われたオスがメスの隙を見て交尾するという生活を続けている内に、奪われるのではなく奪わせるという性質が芽生えたのではないだろうか。つまり「奪われる」→「奪わせる」→「与える」という進化だ。繁殖のために有利であればこんな方向への進化もあり得る。これはメスを迎えるために東屋を作るアズマヤドリや多くの動物の求愛ダンスなどと比べて決して不自然な進化ではない。オスは交尾するためであれば何だってやる。
 オスとメスが違った方向に進化したという意味でも興味深い。生存競争において有利な特性であればオスにもメスにも共有されるが、種族内競争(性淘汰)においては、卵子と精子のように雌雄が全く違った方向に進化する分断淘汰が起こり得る。
 性欲をオスとメスの両方が持つ必要は必ずしも無かろう。どちらか一方に性欲があれば繁殖は行われる。動物にとって重要な行動原理はオスの性欲とメスの自己保存欲なのではないだろうか。人類においても男女の性欲は質的にも量的にも明らかに異なる。
 虫と人類という進化の系統樹において大きく懸け離れた種で、売春という類似行動が見られるのはそれが動物としての合理性を持つからだろう。オスがメスと交尾したがり、メスがその報酬を求めるという構造は動物としての基本的性癖なのではないだろうか。因みに私は婚姻を、全財産を対価とする究極の売春制度だと考えている。