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プロポーズ小作戦62

2009-05-03 22:45:07 | コードギアス
プロポーズ小作戦62
2020年8月初頭
実のところ、会議は形式的なものに過ぎない。
政治のプロが天文学のプロである必要はない。
必要なときに必要な専門化を利用できるシステムがあればいい。

今回の会議のきっかけは、自国の被害を隠さず口にした扇の言葉。それに対して各国からも同時点に被害があったとの意見が出始めた。政治家として扇の判断は英断とたたえられているが、実のところ事実を隠しても仕方が無いという扇の人生観が出たに過ぎない。
その言葉を拾い上げ、「これは世界の危機であり、地球の悲鳴である」と口にしたのはシュナイゼル。
さらにそれに応じて、「世界は人類のものだが、地球は生命全てのもの」だ。
「地球の危機を乗り越えるために、世界は今一度原点に却って集まろう」と公式コメントを出したのはゼロ・スザク。
このコメントはシュナイゼルの言葉に対応しての事だと、当初受け止められた。しかし、ゼロ・スザクとタイミングを合わせて会議を提唱し、その前段階として科学者の集まりを開いたのは中華。

世界は新しい認識をした。ブリタニア寄りを言われていたゼロは、中華に鞍替えしたのだと。
となると、中華のコメントは天子が出しているが内容は全て、あの大司馬からなのは常識。
3代目ゼロは偉大な2代目ゼロの同盟者に鞘を預けるらしい。

世界で唯一の正義の剣とたたえられるゼロ。
そのゼロの鞘を受け取るという事は、中華が『正義』を使えるという事。
もちろんその為には相応の力が必要だ。

天子が、主催国のトップであるから当然の義務として、議長席に座った会議は敵対関係の国々が多いにもかかわらず、どこかほんわりと始まって終わった。もちろん中華に対して悪意を抱く国も多いが、基本的に今回はそういう意見はほとんど出なかった。また、天子が答えに窮するような問いも無かった。
なにしろ太陽風が原因という結論は、すでに科学者の会合で出ているし、緊急対策としていにしえの観測装置を何とかして使って今後の参考にしようとの結論も出ている。いにしえの観測装置とは人工衛星や廃棄された宇宙ステーションである。
ずっと以前、世界が戦争以外にエネルギーを向けていた時代の遺産。
それを持っているのは中華とブリタニア。

世界は正義の剣を中心に両大国がバランスをとる体制を見せ始めた。
もちろん、そこには大量の悪意も存在する。
しかし、いかなる悪意もこの微笑には融けてしまうだろうとはミレイの弁である。
平和の三女神。
ブリタニアの現皇帝、中華の天子。そして「一般人です」とのコメントを出し、公式には参加者ではないが、日本の皇。
会議が終わった後、すっかりくたびれた天子を囲んで、女性軍はお茶会である。
三女神のほかに、ミレイや各国首脳の夫人達も招かれた。
本来ならマスコミはシャットアウトなのだが、ミレイが招待された事でその辺りはあいまいにされた。
「お疲れでしょう」の海の瞳のお姉さまの声にポロリと本音を洩らす天子。
「服が重くて、それに、お尻が痛かったの」
このかわいらしい感想に各国首脳婦人は大いに警戒心を緩めた。
まだ子供だと。
天子はこの時点では知らないが、各国首脳婦人の中には複数の、星刻と関係があった女性がいる。
まだ青い頃からつまみ食いして、すっかりいい男に仕上がった頃においしくいただくはずが、天子に横取りされるとは。
悔しい、というのが彼女達の感情。
しかし、現実に目の前にいる天子はまだほんの子供。
となると噂は事実ではなく、もうひとつの噂、大宦官を廃したあと中華は革命将軍の下にある。しょせん天子は血筋だけの傀儡である。こちらが正しいと彼女らは信じた。人は自分の感情に都合のいい事実を素直に信じるものである。


デザートには意外にも中華の菓子ではなく、オレンジムースが出た。
オレンジの香りを生かしたその風味にはさすがに8000年の皇族と、味に五月蝿い首脳婦人達も素直に頷いた。


女性達が平和と美味を味わっている頃、男達もデザートタイムとしゃれ込んでいた。ただし、こちらは美味とは程遠い。
中華軍精鋭の白虎300機が軍勢をそろえてお目見えした。あの神虎の意識を受け継ぐ量産機。
中華は正義の鞘を受け持つにふさわしい国であることを、各国の前に見せつけた。

実のところ会議に間に合わせるため、外見だけ大急ぎで造らせ、これからもう一度部品を外して取り付けしなくてはならないとはいかにも中華らしいお家の事情であった。

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