金属中毒

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45 暴走する練成陣7

2007-01-03 14:16:57 | 鋼の錬金術師
45 暴走する練成陣 その7
「一度見てくる」
それだけ言うとロイは走り出した。
アメストリスで一番警備の厳しい館と噂されるほど緑陰荘の警戒は厳重である。しかし、あの夜アームストロングはやすやすと進入しさらにラッセルまで抱いて帰っている。
(並の者ならともかくもしホムンクルスが襲ってきたらひとたまりも無い)
警備体制の見直し以前に人が化け物を相手にすることがそもそも無理なのだろう。
(こんなとき、あいつらがいれば)
引き離された部下、特に今は田舎に引っ込んでいるハボックを思った。

ぎゃん!
犬が蹴飛ばされたときに叫ぶような声がした。
しかし、犬にしては声が大きすぎた。
そして、その姿は声よりさらに大きかった。
ロイは手袋を嵌めた指を鳴らした。
ごおおぉ
6メートルもある犬、否、合成獣(だろう)が炎に飲まれる。
「准将!」
エドの声よりもさらに高い少年の声。
「無事か!」
フレッチャーの足元にバラの蔓を使ったらしい、5センチはあるムチに貫かれた獣が横たわる。
「逃げろ!」
心臓を貫いたはずの獣がさらに牙をむいた。
「!」
倒したはずとの油断があったのだろう。少年はとっさに反撃できない。
ロイが指を鳴らしかける。
だが、あまりにもフレッチャーに近すぎた。
逃げては後ろに守っている部屋の中のエドが危ない。その思いがフレッチャーの足を縛った。
ムチを引きずったまま獣は跳んだ。
「兄さん!」
(やむをえん!)
ロイが指を鳴らした。
酸素濃度を調節して重症にならない程度にコントロールする。
獣が赤い炎に包まれた。そのままの勢いでフレッチャーに牙をむく。
少年の身が獣ごと炎を浴びる幻想をロイは見た。
ガッシャーン
防弾ガラスが部屋の内側から割れた。金色に鈍く光る蔓が合成獣の内臓をぶちまけた。
何があったと問う暇も無くロイは残った5頭を焔の渦に包んだ。
「エドワードさん?」
フレッチャーは合成獣が完全に引き裂かれたのを確認した後、むしろ今になっておびえたように震えながらエドを見た。
たった今、練成した蔓で獣を引き裂いたのは、間違いなくエドだった。
「でも、エドワードさんは有機系の練成は」
天才にも才能の偏りはある。エドは有機物の練成はまして成長系の練成は苦手だったはずだ。
この技はまるで、兄のもの。
フレッチャーは叩き割られたガラスを押しのけるようにして室内に入った。
エドはベッドの上に半身を起こして窓に背中を向けている。
表情を伺うことはできない。
「エド」
残った敵がいないのを確認したロイが同じく割れた窓から入ってくる。
「エドワードさん?」
「フレッチャー、ごめん」小さなかすれた声。
(兄さん?)
「にいさん」
震える声でフレッチャーはエドを呼んだ。
ガクリ
エドの体が崩れた。
「あ、」
とめる間も無く額をベッド柵に打ち付けた。
ゴン
「いてっ」
額をさする姿は間違いなくエドであった。

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