金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

デートアフターフォローマニュアル

2009-03-09 15:55:25 | 鋼の錬金術師
デートアフターフォローマニュアル

翌日、ラッセルは大きなバラの花束を抱えてアームストロング家を訪れた。
開口一言、「キャスリン姫にデートを申し込みに来ました」
これはデートのマニュアルから行けば逸脱している。まず、女性にデートを申し込み、許可を得てから家を訪ねるのが正統である。それなのに、いきなりやってくるとは。
普通ならあきれられるところだが、この申し出は諸手をあげて歓迎された。ことにキャスリンの兄は自分が申し込まれたかのように感涙の涙を滝のように流した。
さらには寝室をしばしばともにしている男女が、まだデートをしたことがない事にむしろ家人達は驚いた。
デートの場所は遊園地。スタンダードであるが王道である。心配のあまりこっそり付いていかせた幾人もの使用人によると、周りの視線が釘付けの最高のカップルであったらしい。兄たるアレックスは電話で報告を受け、妹の始めてのデートが楽しいものであったことに安堵した。
しかし、幸福そうに帰ってくるはずの妹は何故か不機嫌を隠せない様子で帰ってきた。
兄たるアレックスはラッセルが何かしたのかと心配し、むしろ何かしたほうがいいのかと、これまた父親のようなことを考えた。
一方ラッセルの弟であるフレッチャーも大きな疑問を抱えた。兄がキャスリンをデートに誘った事も、結構うまくいったこともアームストロング家の執事さんからの連絡で知っている。
それなのになぜか兄はほほに平手の跡をつけて帰ってきた。
つまりキャスリンにひっぱたかれたらしい、
妹の兄と、兄の弟はひそかに連絡を取り合った。
「いつもお世話になっているのに、今回は兄がなにかとんでもないことをしたようで申し訳ございません」
「いや、うーむ、それがな報告では最高に良いデートであったそうだが」
それなのになぜ妹がラッセルをひっぱたいたのか、見当が付かないらしい。
「僕も兄さんに聞いてみます」
兄には素で人の神経を逆なでするところがある。セントラルに来てからはすっかりおりこうさんになっているが、ふと女性を傷つけるような事を言ったのかも知れない。
弟は兄に根掘り葉掘りデートの様子を聞いた。しかし、多少王道過ぎるようだがデートは完璧だ。
そこにひょこりとハボックが咥えタバコで、火はついていないが、入ってきた。
「よお、ラッセルデートしたんだと」
「どうも、うまくいかなかったようです」
ラッセルは打たれたほほをさする。まだ痛むらしい。
まぁ、それでも加減はしたんだなとハボックは思う。ピアノを持ち上げるお姫様にひっぱたかれて赤くなる程度で済んでいるのだから。
「デートは難しいですね。ハボックさんの言うとおり最初は気を使わなくていい相手を選んだんですが」
その言葉にフレッチャーは引っかかる。
「兄さん、キャスリンさんのこと好きだからデートしたんじゃないの」
「好きだよ」
兄はあっさり答える。
「彼女はルイの妹だから」
なにそれ、フレッチャーは頭がごちゃ付いてきた。兄は今なんて言ったんだ。
「おい、ラッセル、お前気を使わなくていい相手とか言ってないだろうな」
ハボックはタバコを噛み潰した。
こいつは頭がいい。そのはずだ。違っていてくれよと祈るようにラッセルを見た。
「あぁ、言ってますよ。彼女が『どうして兄さまではなくて、私を誘ったの』と聞いてきたから」
「にいさん」「ラッセル」
「「もう2,3回引っぱたかれて来い」」
弟と兄のように思っているハボックに同時に言われて、ラッセルは自分が悪かったことを認識した。
しかし、何故悪かったのか解らない。
その夜、マスタングを中心に事態の解決のための会合が開かれた。
出席者はマスタングとフレッチャー、ハボック。
翌日デートアフターフォローマニュアルを叩き込まれて、ラッセルはまたバラを抱えてアームストロング家を訪れた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿