クルアーンには、繰り返し、書かれている。
「悪いことをしたら、神は見ておられる。必ずその報復を受ける」
私が生まれた頃、イランは華やかで自由なシャーの時代であった。
その絶対王政が崩れ始めたのは、私が3つの頃。
テレビで見たモノクロの映像を、今でもはっきりと思い出すことが出来る。
ホメイニ氏の大きな肖像を掲げた民衆のデモ行進。
「ホメイニさんなんか嫌い」
当然、アメリカよりのニュースに、日本人がイラン革命を応援する意見を持ったとは思えない。祖父と見ていて、どんな説明をされたのか、何を語ったかまでは覚えていない。ただ、「この肖像の人は、良くない人」。そう感じていたことだけを良く覚えている。
「ホメイニさんなんか嫌い」と、3つの私は言っていたという。
私がイランに行くと言った時、母はこのエピソードをおかしそうに話してくれた。
前世はアンダルシアで、ちょいと立ち話をする名前も知らない間柄だったジプシーに、ひょんなことで再会した。
前世ジプシーだった彼女は、日本に生まれ変わっても、日本列島を彷徨う運命にあった。彷徨うのが宿命とも知らず、現世の夢は「スパイさん」
各地で捜査活動に余念がなかった。ある時、聞き込み中の彼女は、私の名前を偶然耳にする。「ああ、前世アラブの洗濯女?会いたいの?」その人は何も知らずに、彼女を私に紹介した。
さて、そんなこととは露知らず、現世の夢は「探偵」になりたかった私。洋服のポケットを検めたり、スーツやドレス、バックから靴に至るまで何でも丸ごと洗濯してしまうのは、前世からの宿命とは知らず、盗聴器が仕掛けられていないか、丹念に調べていた。
こんな二人が再会して、イランを旅しようとは…お釈迦様はご存じなくとも、アッラーはご存知だったようである。
本人たちの意思とは関係なく、運命の巡り合わせは、私たちにペルシャ語やアラビア語を習わせ、「本当はスペイン語が一番しっくりくるのに!」と、ぼやきつつも、どんどんイスラーム世界へと引きずり込まれていく。
二人きりで初めての旅。
前世でもなかった、初めての長い時間。
長い、長い、それは長い時間。
その時間は、前世を懐かしむのにはあまりにも長い、
しかし、スパイと探偵には一瞬の時間。
その日は、ホメイニ氏の命日。
政府は「ホメイニ廟へお参りしなさい」と、言っていた。
3連休、全国民が廟へ行ったら大変なことだ。
当然、遊びに出かける多くの人々がいる。
バスターミナルには、廟に行くバスだけで、他に行くバスがなかった。
スパイと探偵は走り回り、か弱い外国人観光客の不安そうな顔を見せて、
密か仕立てられたバスに乗り込んだ。
テヘラン脱出に成功と喜んでいたのは、そう長く続かなかった。
まもなくバスは、渋滞に巻き込まれ、そして完全に停止するまでに、大して時間はかからなかった。
私たちが目的地に着くまでに要した時間。
ほとんど飲まず食わず、トイレもない20時間。
スパイと探偵ですもの。へいっちゃらです。
クルアーンの中に繰り返し出てくる言葉とともに、幼い頃、自分が言った言葉を反芻する。
人の悪口は言ってはいけない。
このたび、私はイランに触れて、決して「ホメイニさん嫌い!」なんて思ったりはしない。
ただ、そう言った天罰を、こんな形で下されようとは思っても見なかった。
神は見ておられる…
そう痛感した。
翌日のニュースでは、「多くの人が移動しようとしたので、渋滞が起きた」とまことしやかに報道されていた。
ホメイニさん、神にかけてそうだったのでしょうかね?
※このエピソードについては、是非スパイさんのブログもごらんください。
『イスブル』はいつ訪れても文章・話題が新鮮です。
やはり私たちにとって、アンダルシアは「鍵」ですね。ご一緒する時間が長くなればなるほど、共通の過去・運命の出逢いを感じてしまいます(・・・って、なんだか恋文みたいですかね・笑?)
しかし、最後の最後になって、「洗礼」を受けられて。良かったような悪かったような。
旅の本来の目的は果たせませんでしたが、ある意味、イランの真の姿を見たと言ってもいいのかもしれませんね。
あえてスパイさんのブログをリンクしなかったのですが、リンクしても大丈夫かしら?
今日開けたら、秘密警察によって、この記事は消されているのでは??と、ドキドキしていました。
アルハムドリッラー。
私のイランの旅は、非常に恵まれたものでした。最後に受けたこの「洗礼」がなければ、イランの現状をすっかり忘れて、ただただ、ロマンチックなイスブルが展開されたことでしょう。
貴重な体験をありがとうと、いたちごっこの相手に申し上げますわ!
ブログ、リンクしてくださって大丈夫ですよ。
いちおうURLも記入します。
(私のブログが見られなくなったりして)
ぜひロマンチックなことも書いてくださいね(笑)
しかし、碧さんは「洗礼」を随分前向きに捉えて
いらっしゃる(笑)
あ、それから最初のコメント、タイトル部分に絵文字をうっかり使ってしまって文字化けしてしまいました。ゴメンナサイ!
3歳の時に、「この肖像の人は、良くない人」と直感してしまった碧さん。ご本人もそうですが、そのことを覚えていらしたお母様の記憶力もスゴイですね。普通の親なら「子供って、面白いことを言うもんだ」で終わってしまいそうだけれど。
恋文往復書簡(地球散歩のコラム)もまたやりましょうね。
たかだか30数年前のことは、記憶に新しいのでは?(笑)
私も昨日のことは思い出せませんが、2、3歳の記憶はかなり鮮明ですね。
おじいちゃん大好きだったからかと…