世界経済の先行きには今年に入ってからやや楽観的な見方が浮上しているようだ。米国でインフレ率が低下傾向を辿っていること、中国がゼロコロナ政策を撤回したこと、欧州が予想外の暖冬で冬季の深刻なエネルギー不足を回避できる見込みとなったこと、等がその理由であるそうだ。ロシアの砲撃で住むところを失ったウクライナの人々がこの冬を越せるか心配していたが、欧州の暖冬で幾分かは救われたようだ。
それとは逆に、年明け後ににわかに厳しさを増しているのがロシアの経済と財政であるそうだ。2022年のロシアの成長率は、最新の国際通貨基金(IMF)の見通しでは-2.3%とマイナスとなったが、当初は2桁のマイナス成長の見通しもあったことを考えると、予想外に戦争の影響を回避できたと言える。逆に、欧米諸国の対ロ経済制裁が効いていないと言うことも出来るだろう。
2月20日の新聞報道で経済制裁の緩さが指摘されていた。例えば日本中古車輸出業協同組合がまとめた2022年10月の中古車輸出台数は、前年同月比3.6%増の10.8万台。そのうちロシア向けは同65.3%増の2.5万台と急伸し、ウクライナ侵攻以前より高い水準となったようだ。
ロシア向け輸出はかなり規制されていると思っていたが、日本からロシアに輸出される中古車は600万円以上の高級車が対象であるそうで、600万円以上の中古車があるかと驚く程で、これでは規制があって無きが如しである。
また、海産物に関しロシアの日本への輸出量に比べ、日本のロシアからの輸入量がはるかに多い不自然な状態が続いているようだ。すなわち最大で年20倍も輸入量が輸出量を上回っているとのことで、ウクライナ侵攻で米国がロシア産水産物の輸入を禁じているが、第三国を絡めた国際流通ルートが活発化し、規制が骨抜きになりかねない実態となっているとのことだ。タラバやイバラ、ズワイなど大量のカニが、日本などアジアに流れるようになり、アメ横にロシア産のカニが安価で大量に堂々と並ぶようになっているのだそうだ。
ロシアのウクライナ侵攻でNATO諸国を始めとする西欧各国の経済制裁でロシア経済はすぐに破綻すると思っていたが、モスクワ市内では物が溢れ、プーチン大統領の演説を聞く限り、ロシア経済は強靭で安定しているとのことだ。
しかし、プーチン氏の演説は政治的な配慮からであり、ロシアは早ければ2024年にも資金が底をつく可能性があるのだそうだ。これは、歯に衣着せぬ発言で知られる新興財閥のオレグ・デリパスカ氏の見解であるが、現場に近い同氏の発言の方が真実味がある。
欧米がロシアのエネルギー輸出に制裁を課し、1バレル=約8000円の上限価格を設定したことが大きく影響し、危険な兆候が表れ始めておるのだそうで、デリパスカ氏の見解通り来年にもロシア経済は破綻するのではないだろうか。その時、プーチン大統領は素直に認め、降参するであろうか。
2023.03.11(犬賀 大好ー896)