新型コロナウイルス騒動で老人介護施設等での集団感染予防の為高齢者が自宅待機を強いられている。しかし、高齢者のコロナ感染は防止できても体力低下や認知症の進行が懸念される。コロナ問題は何れ収束するだろうが、高齢者の健康問題は長年影響が残る。
健康維持のための適度な食事、睡眠は勿論のこと運動習慣も自宅に居ながら十分対処でき、ウイルス感染予防の為の自宅待機と何ら矛盾しない筈だが、高齢者にとってこの習慣を長続きさせることは難しい。高齢者の運動は、若者と違って体を鍛えるより、体力維持の為であり、楽しみが伴わなくてはならないが、楽しみは人との交流から見出すことがほとんどである。この点で自宅待機による体力低下等の健康劣化は避けられない。
体力維持や認知症の予防で一番大切なのは、本人が無理なく続けられることだ。体力維持はさておき、麻雀、パチンコや将棋など、本人が大好きな趣味があれば、特に認知症予防と銘打っていなくても認知症予防になるそうだ。
緊急事態宣言が発せられた時期、パチンコ店の営業が話題になった。パチンコ店は換気が悪く人が密集し、感染拡大の巣のイメージであったがここでクラスターが発生したニュースは無かった。パチンコ台の前に座り込み皆無口でパチンコに熱中するからであろうか。これが本当であるとすれば、雀荘や将棋の集まりも感染源にはなり難く、逆に高齢者に推奨すべきだ。
これに対し、大声でおしゃべりする居酒屋や大声を発するカラオケ店ではクラスター発生のニュースがあった。例えば昼間のカラオケ店でのクラスターが6月、札幌の同じ区内にある2つの喫茶店で確認されたとのことだ。5月1日~6月14日に札幌市で感染が判明した230人のうち、約21%に当たる49人が昼カラオケの関係者で、60歳以上が45人に上ったそうだ。昼カラオケを生きがいにしている高齢者が多く、独り暮らしのストレス解消のための憩いの場になっているようで、感染予防を徹底したカラオケ店を模索すべきであろう。
高齢者の家での閉じこもりは、体力低下のみならず認知症を促進する。コロナウイルス騒動はその内収まるだろうが、一旦落ちた体力は高齢者にとって回復が極めて困難であり、認知症は一方的に進み後戻りできない。
先日厚労省から新型コロナウイルスを想定した”新しい生活様式”を具体的にイメージ出来る実践例が示された。しかし、買い物は一人で行き、会計は電子決済で済ます等、感染予防対策のみからの視点で、高齢者の健康維持には配慮を欠いた内容である。
厚労省の推計によると認知症の高齢者は2025年までに約700万人となり、5人に1人となる見込みだそうだ。恐らくこの推計にはコロナウイルス騒動の影響は含まれていないだろう。今回の騒動の影響を加味するとどの位増えるであろうかと思うと、ゾーとする。
厚労省にとって、高齢者対策は大きな課題である。国家予算の約1/3は社会保障関係費であり、高齢化が進む中にあって、将来にわたって安定に維持する必要がある筈だ。さて、このような状況下で厚労省からの提案はコロナ対策一辺倒だ。木を見て森を見ずとはこのことだ。2020.07.04(犬賀 大好ー614)