現在世間を騒がしている新型コロナウイルスは、スペイン風邪流行の場合のように、全人口の半数以上に抗体が出来ない限り収まらないようだ。但し、SARSやMAASの場合のように必ずしもそうならずとも沈静化している場合もあり、よく分からないことが多いが。
さて、1918年から始まったスペイン風邪の流行は世界規模で猛威を振るったが、世界規模に広がったことにより死亡者も甚大になった一方で、生き残った人たちには抗体が出来、それが感染の減少と繋がり自然消滅的に収束したのだそうだ。
抗体を得るためには、感染して自身の体で抗体を得るか、あるいはワクチンが完成するのを待って注射により獲得するかどちらかである。兎も角6~7割の人々に抗体が出来ない限り広がるそうだ。
今回の新型コロナウイルスの場合でも、当初症状は普通の風邪程度と甘く見ており、何もしないで放って置けばその内多くの人が感染するので収束すると楽観に構えていたのも感染拡大の一因となったようだ。
現在日本のコロナウイルス感染者の数は1.5万人程度であり、隠れ感染者の数がその10倍いたとしても計16.5万人程度で、多めに見積もったとしても日本人口の0.2%以下だ。6~7割の人々に抗体が出来るのを待つより、ワクチンの開発の方が早そうである。
加藤厚労相は10日のNHK番組で、新型コロナウイルス感染症を巡り、ワクチン生産を急ぐ考えを示した。”開発できたと言ってから生産を始めたのでは間に合わない。多少見切り発車でも開発と生産の議論を並行して進め、一日も早く届ける体制をつくりたい”、と述べた。厚労相のこの発言は至極もっともであるが、PCR検査数の少なさに関する一連の発言は最高学府を出た有能な大臣とは到底思えない。
さて、今年3月に米国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)の所長は、米国上院議員達に、ワクチンを使えるようになるまでに少なくとも1年半はかかるが、本当に1年半でできれば、最短記録になる、と話したそうだ。ほとんどのワクチンは市場に出るまでに5年から15年もかかり、SARSやMAASのワクチンは今もって出来ていないとの話だ。
何しろ人間の健康に関するワクチンの開発手順は複雑だ。すなわち通常、基礎研究2~3年、非臨床試験3~5年、臨床試験(Ph1~Ph3)3~7年、承認審査1~2年、かかりようやく製造販売となる。
世界保健機関(WHO)の纏めによると、現在臨床試験に入っているワクチンは数種類あり、中にはこの夏にも臨床試験の最終段階P3試験を始める予定の企業もあるとのことだ。世界的に流行する中、通常の開発期間が短縮されることもあるだろうが、NIADの所長が言っているようにワクチンが使えるようになるのは、早くても来年の夏以降であろう。
また、世界のどこかでワクチンが使えるようになったとしても、世界の人々が使えるようになるまでには更に年数がかかるであろう。それまでは、感染拡大→行動規制強化→感染拡大縮小→規制緩和→感染拡大 を繰り返すのであろう。
2020東京五輪は1年延期されたが、世界のコロナ騒ぎが収まるのは数年先になろう。開発途上国がコロナ騒ぎの真最中でありながら東京でのお祭り騒ぎは出来ないであろう。中止となる可能性は極めて大きく、今から対策を進めるべきである。2020.05.13(犬賀 大好-599)