地球温暖化対策は経済活動と密接に関係しており、相反することが多い。例えば、日本の電力は化石燃料によるものが8割近くを占め、大量の温室効果ガスを排出するが、大量の電力は必要である。温暖化対策を重視するとなると電力消費を控えるか、原子力発電か自然エネルギーに頼らなくてはならない。
原発は、東電福島第1原発事故での不信感が強く残り、また核燃料サイクルは破綻したまま、再稼働は困難な状態だ。太陽光発電、風力発電等の自然エネルギー利用は、電気料金の高さ、自然の不安定さに対する寛容さを強いられる。
温室効果ガスの排出規制は世界的な規模で必要であるが、日本だけが頑張っても効果は少なく、現実の生活を重視する大人はまず積極的になれない。
世界の年平均気温は、100 年あたり 0.85℃の割合で上昇し、日本の平均気温は、1.1℃の割合で上昇しているのだそうだ。高が1.1℃の平均値の上昇であるが、平均値の上昇は気候の大変動を招き、今年も日本に大災害をもたらした。
今月8日、国連の気候変動に関する政府間パネルは、地球温暖化の影響で早ければ2030年にも産業革命前からの平均気温上昇が1.5度に達し、地球環境の悪化が進むと予測した特別報告書を公表した。
この中で、2050年までに、世界全体の二酸化炭素排出量を実質ゼロにする必要があると訴えているが、本格的対策は一向に進まない。しかし、日本だけが火力発電を一斉に止めたところで、中国や米国が動かなければ、平均気温は着実に上昇するだろう。否、世界中が止めたところで既に手遅れかもしれない。
一旦暴走し始めた温暖化は加速的に進むらしい。例えば、寒冷地帯の白い氷が溶けて黒い地面が顔出すと、太陽熱の吸収が大きくなり、一層温暖化が進むことになるようだ。
子供や子孫のため何らかの対策が必要であるとして個人レベルで頑張る大人はいるだろうが、焼け石に水だ。スウェーデン人の環境保護活動家の16歳のグレタさんは国連気候行動サミットで演説し、気候変動問題について行動を起こさない各国首脳を非難したが、若者の気持ちは理解できる。しかし目先の経済を最優先させる各国首脳の気持ちも理解出来なくはない。彼らは有権者の声を代弁しているに過ぎないのだから。
さて一方では地球温暖化は人間の活動による炭酸ガス(CO2)濃度の増加ではなく、他の要因で起こっていると主張する科学者も確かにいる。このような気候変動懐疑論者は、これまでに地球上に起こった気温変動とCO2濃度に相関が無いと主張しているようだ。
しかし、地球環境研究センター、副センター長の江守正多氏は、温暖化をテーマにしている科学論文の97%は、CO2増加が温暖化の主な原因であると断定していると言明している。
気候変動懐疑論者であっても最近の気温上昇は否定せず、またCO2の増加も否定していないようだ。議論は必要だが、議論している間にも刻々と温暖化は進んで行く。今となっては、気候変動懐疑論者の主張がどうか正しくあって欲しいと願わずにはいられない心境だ。2019.11.13(犬賀 大好ー548)