日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

一億総中流社会は遠い昔の話になった

2019年11月27日 09時28分26秒 | 日々雑感
 11月10日、天皇陛下即位の披露パレードが行なわれ、約12万人が祝賀に参加したとのことである。このために遠くから何日も前に東京に来て、長時間沿道で待っていた人もおり、豊かで平和な日本を感ずる。一方ではアンダークラスと呼ばれる日々の生活にも困る人が増えているようで、この二つの現実を知るにつけ日本の格差社会が進行していると感ずる。

 現代日本の格差社会の進行を示すデータは各所に見られる。総務省の最近の家計調査報告によれば二人以上の世帯貯蓄額は、60代の場合平均貯蓄額は1800万円、中央値は1000万円だそうだ。平均値が中央値より随分大きいが、これは貯蓄額の極端に少ない多くの人と貯蓄高が極端に多い少数の人が存在していること、つまり経済格差が大きいことを表しているのだ。ちなみにこの世代の場合貯蓄ゼロの人はこの世代の就業人口の22%もいるとの統計結果である。

 ただし、ここで言う貯蓄とは預貯金だけでは無く、株式なども含む金融資産の総計だそうだ。なお、日銀の資金循環統計によると、2018年末時点の個人が保有する金融資産の総額は1830兆円だったそうで、人口1億人として均等に分ければ1830万円/人となる。子供まで含めた数の平均値であるので、驚くべき高い金額であり、富の偏在を伺わせる。

 また、厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国でありながら、日本は先進国の中で貧困率の高い国のひとつとして知られているそうだ。ただし貧困と言っても衣食住にも困る絶対的貧困では無く、社会全体の中で相対的に貧困である相対的貧困を意味するそうで、国民の収入の格差を示す指標と見るのが正しいとのことだ。

 早稲田大学の橋本教授によれば、相対的貧困率が高い人はアンダークラスと呼ばれ、ほとんどは非正規労働者なのだそうだ。非正規労働者は正規社員と比べてきわめて低賃金に抑えられ、貧困状態に余儀なく置かれている人々である。従って、非正規労働者を“階級以下”の存在、すなわちアンダークラスとして位置づけざるを得なくなったというのが橋本教授の主張である。

 アンダークラスは1992年393万人、2002年710万人、2015年時点で929万人と右肩上がりで増え続け、現状就業人口の15%すなわち7人に1人となるまでになってしまった。2015年の個人の平均年収は186万円で、正規労働者の370万円の約半分しかないようだ。

 安倍首相は異次元金融緩和の成果として有効求人倍率の高さを自慢したが、非正規労働者の募集が圧倒的に多く、アンダークラスの増大には大いに成果があったと言えようか。総務省の労働力調査によれば、2013年から2018年までの6年間で雇用は380万人増加したが、この内55%は非正規職員だったそうだ。安倍首相はこれを反省してか、就職氷河期世代と呼ばれる40代前後の働き盛りの年齢層に、国を挙げて支援に取り組む姿勢をようやく見せ始めたが、遅きに失した感である。

 少し前、老後2000万円問題がマスコミを賑わした。麻生財務相は評判の悪さに慌てて無かったことにしようとこの報告書を引っ込めたが、アンダークラスの存在と考え合わせるとき日本の将来が真っ暗になる。日本の人口が1億人を突破した高度成長期末期の1970年代に国民の大多数が共有した自分が中流階級に属すという一億総中流社会は遠い昔の話となってしまった。2019.11.27(犬賀 大好-552)