国の借金である国債の発行残高は約900兆円、地方政府の借金である地方債の発行残高は約200兆円、国と地方を合わせるとその総額は約1100兆円に達するそうだ。一方国民全員の一年間の稼ぎであるGDPは約500兆円で、日本の債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率は220%で、経済協力開発機構(OECD)36の加盟国中最悪とのことだ。
政府は一応この事実を懸念しているのか、財政健全化目標として2025 年度の基礎的財政収支(PB)黒字化を目指すとしているが、この達成年度はたびたび引き延ばされた結果であり、本気でやる気があるとは思えない。PBの黒字化は、年々増加する社会保障などの政策経費を新たな借金なしで賄えることを示しているだけで、これまでの借金分を減らすまでには至らない。
OECDは日本の経済政策についての提言もしている。日本が十分に財政健全化を進めるためには、主に消費税で歳入を増やすことが必要と指摘し、20~26%への税率引き上げが妥当だとしている。今年10月消費税10%化がようやく実行されたが、安倍首相は更なる増税は当分必要ないと例により力強く宣言した。その裏には夢のような高い経済成長実現の期待があり、首相の言葉の無責任さにいつもながらあきれ果てる。
日本の台所事情は火の車である筈だが問題無しとの意見もある。その言い分は、政府の金融資産すなわち貯蓄はいま約1800兆円もあり、国と地方の長期債務残高は1100兆円余りだから、日本経済は安泰である、である。必要となれば政府の資産を誰かに売ることができるからとの理屈であろうが、これが本当か理解できない。
経済専門と称する人でも意見が異なり、経済素人には到底理解できないことは当然と思われる。しかし、いずれ債務残高が貯蓄を超えると大変なことになるとも言っており、予想される災難としては、超インフレや重税日本の到来らしい。
最近、自国の通貨で借金をできる国は破綻することがない、というMMT(現代貨幣理論)が広がっているようだ。MMTによると、急激な金利の上昇が起きないかぎり、自国の通貨で借金ができる国は、お金を刷りさえすれば、それを借金の返済にあてることができるため、破綻はしないと断言しているのだ。
日本の国債はほとんどが日本国内で買われているため、自国の通貨で借金できる国に相当し、MMT理論の実験場になっているとのことだ。MMT理論は日本の現状を見て出来た理論と思われ、練りに練って出来た理論では無く、砂を土台とした理論と思われる。
お金を大量に刷って貨幣価値を下げて行けば、他人に金を貸すとき高い金利を当然要求するだろう。金利の急激な上昇が無ければの前提条件は、大雨が降らなければ洪水は発生しないと言っているような当たり前の話で、これだけでも信用ならない。
幸いなことに、異次元金融緩和に拘わらず現状では金利の上昇は起こっていない。これを良いことにMMTに悪乗りし、財政健全化どこ吹く風と、財政再建は先送りされて政府の債務は増加する一方である。
首相が主催する”桜を見る会”の予算は過去5年間はいずれも約1765万円だったそうだが、実際に使用された金はその数倍になったそうだ。国家予算に比べれば微々たるものであるが、この放漫経営の姿勢が国家全体に及んでいるのではないかと危惧する。2019.11.23(犬賀 大好-551)