日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

増大する所有者不明土地に見る土地政策の遅れ

2019年07月13日 09時17分15秒 | 日々雑感
 30年前のバブル全盛期には土地価格は果てしなく値上がりするものだとの土地神話があった。しかし、時代は移ろい、土地価格は暴落し、売るに売れない時代となり、持っていても税金等の維持費がかかるばかりで負不動産とも揶揄されるようになった。そのため、土地が遺産相続対象となった場合でも相続が無視されるようになり、所有者不明の土地が激増するようになったのだ。

 所有者は土地神話時代には明確であったであろうが、その後負動産化したため、転居したり、死亡したり、等する内に、所有者が曖昧になり不明土地となるようだ。所有者が不明だからと言って、他人が勝手に使用することは許されない。

 現在、所有者不明の土地は全国で、九州本土を大きく上と推計されるのだから、時代の変化は急だ。しかも現在の登記制度では、少子化・高齢化により所有者不明土地は更に増えると予想されるが、このような土地の増加はどんな災いを招くのであろうか。

 固定資産税の減少がまず懸念される。通常、税を納めないと財産が差し押さえられて、競売にかけられるというのが規則であるが、所有者不明土地においては、差し押さえても価値が無ければ、競売するどころかその後の維持管理に費用が嵩むことになり、競売の対象にさえしても貰えない。

 しかし、所有者不明の土地であっても固定資産税が支払われている例も多いとのことだ。これは、土地の所有者が死亡して登記簿謄本が書き改めない場合でも、税の請求は遺産相続人、あるいはその該当者全員に送られるシステムとなっているからのようだ。しかし、支払われたからと言って、登記簿謄本には何の影響も与えないのは不思議な話だ。

 固定資産の課税金額の決め方をよく理解していないが、売るに売れない土地となれば税額も大したことでは無いだろう。所有者不明土地の内、税が払い込まれる率を知らないが、総額も大したことにならない、従って税収の減少は大きな問題とならないと想像される。

 所有者不明土地化した土地の最大の災いは、その土地を他人が有効活用する場合の妨げになることだろう。例えば、土地の区画整理等の話になると、登記簿上の所有者の許可を得ねばならず、所有者不明土地がネックとなるのだ。今後、細切れ土地の集約化、大規模化の必要に迫られても、大きな障害となるだろう。現在の日本においては個人の財産権は固く守られているのだ。

 そこで、登記簿謄本上所有者を特定できない土地でも他人が利用可能にする特別措置法が昨年6月、国会で成立した。私有財産であっても、一定の条件の下で国や自治体といった公的機関にその利用を認める制度が出来たことは極めて画期的との話だが、適用条件が厳しくこれが対象となるのは極一部だろう。

 新しい道路を通すような場合に、この法律が適用され土地が有効利用されるのであろうが、地方の多くの土地の場合は、国や自治体は触らぬ神に祟りなしとばかり、放って置かれるだろう。手入れをしない土地は、2,3か月で雑草に覆われ、数年で林となる。耕作放棄地の荒廃は典型だ。

 所有者不明土地激増はここ20年くらい前からの問題であろう。財産であることを証明する登記簿謄本は法務省の管轄であり、税を徴収する固定資産課税台帳は財務省の管轄等、バラバラな行政で土地政策の時代遅れが目立つ。

 また、所有者不明土地問題と同様に空き家問題も大きな問題となっており、空き家を撤去すれば固定資産税が増加する等の矛盾が空き家撤去を妨げている。

 少子高齢化の時代に、時代遅れとなっている土地政策を大幅に見直す必要に迫られているが、夏の参院選でこの問題を指摘する声は全く聞こえない。2019.07.13(犬賀 大好-563)

トランプ大統領の掌で踊らされる安倍首相

2019年07月10日 08時55分10秒 | 日々雑感
 先月25日、米国トランプ大統領が、日本との安全保障条約を破棄すべく熟考中、と周囲との私的な会話の中で述べたとの報道があった。翌26日には、この安保条約を不平等だとする見解を公に示し、安保条約破棄も全くの絵空事でもなさそうである。

 安倍首相は日米首脳会談がある度に、日本と米国の同盟関係が揺ぎ無いものであることを確認したとの談話を出しているが、これもトランプ大統領のリップサービスに旨く乗せられているようにも見える。

 先の発言の裏には、日米貿易交渉を有利に進めるための脅かしがあるとの話であり、安保破棄は商売上の駆け引きの一つかもしれない。実際、当面の問題は日米貿易交渉である。そこでは環太平洋経済連携協定(TPP)の水準を超える要求、為替条項や自動車の数量規制の要求等、裏では相当強い要求があるとの予測であるが、安倍首相は耐えきれるだろうか。

 トランプ大統領は来年の大統領再選選挙を控え成果を焦っており、安倍首相のへつらい外交を旨く利用しているように見える。安全保障では米国におんぶに抱っこの日本は高額兵器を言い値で買わされ、沖縄問題でも日米地位協定を盾に、沖縄住民の安全軽視が際立っている。

 高額兵器の筆頭はイージスアショアと呼ばれる地上配備型のミサイル防衛システムである。これまで我が国に飛んでくるミサイルはイージス艦によって撃ち落とす作戦であるが、船を動かすためには多くの人員を要するため、地上配備型は運用面でメリットが数多いとの宣伝文句だ。

 北朝鮮のミサイル攻撃に備えるためとの配備説明であり、山口と秋田に設置予定とされる。ただ、2基配備には総額6千億円以上を要し、1隻約1700億円のイージス艦3隻分以上に相当する巨額な買い物である。

 さて、今年5月上旬に、北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射実験があった。安保理決議は、北朝鮮に弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も禁じているが、トランプ大統領は、気にしない、とツイッターに書き込んだ。

 トランプ大統領は北朝鮮の米国にまで届く長距離ミサイル実験には断固反対するであろうが、日本が射程範囲となる短距離ミサイル実験は容認しているのだ。これも日本にイージスアショアを売りつけるための作戦であると思うと、安倍首相のお人好しに呆れ、毅然たる態度を期待したい。

 一方、イランと米国が核開発を巡り揉めている最中、安倍首相は米国とイランの間の危機打開の仲介役への期待を担いイランを訪問した。イランと日本は昔から友好関係にあり、また安倍首相がトランプ大統領と親密な関係にあるとみなされていることから、安倍訪問が米国とイランの緊張緩和の仲介が出来るとかすかな期待があったが、予想通り思惑が外れた。

 そもそも、日本にイランと米国の仲裁が出来るほどの外交カードがあるのか疑問視されたが、これもトランプ大統領の煽てに乗った結果であろう。

 しかも首相のイラン訪問中に日本の石油タンカーに対する爆破攻撃があった。選りによって訪問中の出来事である。米国はイランの革命防衛隊の仕業と主張するが、イランは真っ向反対している。

 イランにとって何ら得るものが無い一方、イランの仕業と見せかけて日本を怒らせ、日本とイランを仲違いさせようとの誰かの魂胆にも見える。トランプ大統領の魂胆で無ければ良いが。2019.07.10(犬賀 大好-562)

中高年の引きこもりにバブルの後遺症は残る

2019年07月06日 10時22分45秒 | 日々雑感
 バブルが崩壊してから30年経ち、経済もすっかり立ち直り、崩壊後の不況も”失われた20年”と過去形で呼ばれるようになったが、バブルの後遺症は中高年の引きこもり問題として顕在化するようになった。

 1989年12月に日経平均は終値で最高値約4万円を付けたが、わずか9か月後には半値近い水準にまで下落しバブル景気は崩壊し、その後”失われた20年”と呼ばれる景気低迷の時代を向かえることになった。

 この間、景気浮上の為に金利の値下げや成長戦略の作成等なされたが、不良債権処理の手間取り、リーマンショック、東日本大震災と原発事故が重なり、不況が長引く結果となった。

 企業は正規社員の採用を控えた結果、就職氷河期と呼ばれる就職難時代を迎え、また非正規雇用労働者が増加することになった。

 内閣府の今年の調査で、40~64歳の引きこもり状態の人が全国に61.3万人いるとのことが判明し、15~39歳の若年層に匹敵する数の引きこもり状態が中高年層にまで広がっていることが判明した。

 引きこもる切っ掛けとしては、通常病気や仕事・学業でのつまずきがあると想像される。若者の場合、成績の低下や失恋やいじめなどの経験であろうが、もっと上の年齢の者の場合は仕事に関する挫折が多いことは容易に想像できる。

 就職氷河期の1990年から2010年の間に20歳を迎えた者は、現在50歳から30歳である。中高年の引きこもりが、30代後半~40代前半に多いとのマスコミ評であるが、就職適齢期に就職難であったことに因果関係があると類推できる。

 更に、正規社員として就職できなかった者が非正規社員として働かざるを得なかったことも引きこもりを増加させることになったであろう。労働者派遣法は1986年施行され、当初は自由な働き方ができると働く側に歓迎されたようであるが、次第に企業側の雇用の調整弁として都合よく利用されるようになった。

 非正規雇用者は1990年に20%を超え、2013年には過去最高の36.7%を記録したそうだ。若年層の非正規雇用率は、25-34歳で27.4%であり、更に上の年齢の者に非正規雇用が多いことを物語っている。

 これは、就職適齢期に正社員になれなかった者がその後正社員になることは一層困難で、非正規雇用労働者の高齢化が進んでいることを表している。

 同一労働同一賃金とは、正社員と非正社員の格差を解消しようとする動きであるが、例えそれが実現されたとしても、正社員の仕事が配置転換等で高度化して賃金が上昇するのに対し、非正規労働者は長い間同一労働すなわち同一賃金を強いられるだろう。

 本来であれば企業の中堅として頼りにされてきた筈の40歳前後の者が非正規雇用のままでは社会が面白い筈が無く、引きこもりになり、極端な場合社会に対する復讐となり、様々な事件を引き起こす結果となる。

 多くの中高年がそれらの悪環境を乗り越え社会に貢献しており、引きこもりは自己責任の声も聞かれる。しかし、仕事の関係で挫折し中年引きこもりとなった遠因がバブルにあると思うと、バブルの後遺症はまだまだ完治しておらず、その罪深さをつくづく思う。2019.07.06(犬賀 大好)

年金システムは既に破綻状態であることは周知の話

2019年07月03日 09時08分41秒 | 日々雑感
 金融庁の報告書”高齢社会における資産形成・管理”が、先月3日に公表された。この資料の試算によると老後に必要な資金は2000万円だと言うのだから、夏の参院選挙に向けて、マスコミを含め与野党ともに大騒ぎである。

 この金融庁の報告に対し、マスコミは年金問題が初めて分かったかのように報道しているが、現行の年金システムが破綻状況にあることは周知の事実であり、ほとんどの若者は将来自分らは年金を当てにできないと感じているとのことだ。

 政府は、この報告書が年金の将来に対し不安を煽る誤解を招くとして、報告書を無視する作戦に出た。そもそも”100年安心プラン”は老後を年金だけで安心して暮らせるとの誤解を生じさせるものであったが、国にはこの誤解を敢えて正そうとの姿勢は全く見られなかった。

 100年安心プランは、当時崩壊すると言われてきた年金を、当時厚生労働相だった公明党の坂口副代表が中心になり100年間持続可能な年金改革として2004年に制度化した。

 政府が持続可能な制度だとする理由は、支給水準を自動的に抑制する”マクロ経済スライド”と呼ばれる仕組みの存在だ。よく理解できていないが、要は年金財政の収支バランスが取れれば、財源が枯渇せずに年金が支給され続けるとのことであり、これには当然支給額の低下も各種保険料の高騰も含まれているのだ。

 ここでは、制度自体の持続可能性を安心と言っているのであり、年金生活の安心を保証するものではない。金融庁の先の報告書はこの誤解を解くために、国民の啓発用にまとめられたもので、決して誤解を招くようなものではない。ただし惰眠を貪る寝た子を起こしたことには間違いないだろう。

 麻生副総理もこの事実を十分承知しており、当初若いうちから資産形成に努力しろ、と言っていたが、騒ぎが大きくなると、手のひらを反したようにこの報告書を金融庁としては正式に受け取らないと言い出した。副総理のいつもながらの定見の無さには呆れる。

 さて、年金制度の改革に関しては、旧民主党の政権時代に消費税を上げて、年金制度に補填すると、2010年当時の菅直人首相が表明した。後継の野田佳彦内閣が2012年、社会保障と税の一体改革の一環として、消費税率を8%、10%と段階的に引き上げる消費増税関連法案を国会に提出し、同年に参院本会議で一応可決された。

 しかし、税金の値上げに対する国民の反発は大きく、総選挙で民主党は大敗し、現在の安倍政権誕生する運びとなった。

 金融庁の先の報告書も参院選の直前で無ければ、年金問題を改めて考える良いきっかけ造りであり、麻生副総理の功績となっていたかも知れないが、直前であったのが不運であった。

 この夏の参院選における選挙の焦点の一つは、消費増税の是非であるが、旧民主党流れを汲む立憲民主党や国民民主党は消費増税に反対しているものの、年金改革に関しては明確なビジョンを示せないでいる。消費増税による年金改革は何処へ行ったのか。

 年金問題は安倍首相にとって厄病神とのことであったが、民主党政権時代の体たらくが今なお記憶に留まり、それほど波風の立つ選挙となりそうにない。2019.07.03(犬賀 大好-560)