バブルが崩壊してから30年経ち、経済もすっかり立ち直り、崩壊後の不況も”失われた20年”と過去形で呼ばれるようになったが、バブルの後遺症は中高年の引きこもり問題として顕在化するようになった。
1989年12月に日経平均は終値で最高値約4万円を付けたが、わずか9か月後には半値近い水準にまで下落しバブル景気は崩壊し、その後”失われた20年”と呼ばれる景気低迷の時代を向かえることになった。
この間、景気浮上の為に金利の値下げや成長戦略の作成等なされたが、不良債権処理の手間取り、リーマンショック、東日本大震災と原発事故が重なり、不況が長引く結果となった。
企業は正規社員の採用を控えた結果、就職氷河期と呼ばれる就職難時代を迎え、また非正規雇用労働者が増加することになった。
内閣府の今年の調査で、40~64歳の引きこもり状態の人が全国に61.3万人いるとのことが判明し、15~39歳の若年層に匹敵する数の引きこもり状態が中高年層にまで広がっていることが判明した。
引きこもる切っ掛けとしては、通常病気や仕事・学業でのつまずきがあると想像される。若者の場合、成績の低下や失恋やいじめなどの経験であろうが、もっと上の年齢の者の場合は仕事に関する挫折が多いことは容易に想像できる。
就職氷河期の1990年から2010年の間に20歳を迎えた者は、現在50歳から30歳である。中高年の引きこもりが、30代後半~40代前半に多いとのマスコミ評であるが、就職適齢期に就職難であったことに因果関係があると類推できる。
更に、正規社員として就職できなかった者が非正規社員として働かざるを得なかったことも引きこもりを増加させることになったであろう。労働者派遣法は1986年施行され、当初は自由な働き方ができると働く側に歓迎されたようであるが、次第に企業側の雇用の調整弁として都合よく利用されるようになった。
非正規雇用者は1990年に20%を超え、2013年には過去最高の36.7%を記録したそうだ。若年層の非正規雇用率は、25-34歳で27.4%であり、更に上の年齢の者に非正規雇用が多いことを物語っている。
これは、就職適齢期に正社員になれなかった者がその後正社員になることは一層困難で、非正規雇用労働者の高齢化が進んでいることを表している。
同一労働同一賃金とは、正社員と非正社員の格差を解消しようとする動きであるが、例えそれが実現されたとしても、正社員の仕事が配置転換等で高度化して賃金が上昇するのに対し、非正規労働者は長い間同一労働すなわち同一賃金を強いられるだろう。
本来であれば企業の中堅として頼りにされてきた筈の40歳前後の者が非正規雇用のままでは社会が面白い筈が無く、引きこもりになり、極端な場合社会に対する復讐となり、様々な事件を引き起こす結果となる。
多くの中高年がそれらの悪環境を乗り越え社会に貢献しており、引きこもりは自己責任の声も聞かれる。しかし、仕事の関係で挫折し中年引きこもりとなった遠因がバブルにあると思うと、バブルの後遺症はまだまだ完治しておらず、その罪深さをつくづく思う。2019.07.06(犬賀 大好)
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