2016年、米国経済は順調な回復を続けており、失業率は約9年ぶりの水準に回復し、物価上昇率も、連邦準備制度理事会(FRB)が重視する指標は年1.4%まで回復したようだ。トランプ次期米大統領の活躍を待たなくても、米経済は好調のようである。
例えば、2016年の米国の新車販売台数は、2年連続で過去最高を更新したとのことだ。低金利政策で自動車ローンの金利低下に加え、ガソリン価格が低下したことが原因とのことである。低金利政策の影響は住宅ローンの金利低下にも現れ、着工件数も堅調のようである。
2008年9月に起きたリーマンショックでは、サブプライムローンが有名になった。これは低所得者向けの住宅ローンであったが、今回は自動車ローンの先行きが危ぶまれているらしい。すなわち、米国の自動車販売台数が伸びたとはいえ、現在の米自動車ローン残高は過去最高のおよそ100兆円に達しているそうだ。その内およそ35~40兆円がサブプライムな自動車ローンとのことだ。
米国はサブプライム住宅ローンで痛い目にあっている筈であるのに、同じ過ちを犯そうとしている。自動車購入者が住宅購入者と別の人間か、あるいは貸し出す方が手の込んだ旨い細工をしているのかも知れないが、儲けを当て込んだローンである限り、住宅ローンと ”同じ穴のむじな”であることには間違いないだろう。
今年は買い替え需要が一巡し、金利上昇も予想されることから、米国の新車販売は減少に転ずると予想され、この問題が顕在化するかも知れない。
このような懸念材料を抱えながらも、全体として、米経済は順調である。これを受けて、昨年12月連邦公開市場委員会(FOMC)は、一年ぶりの0.25%の利上げを全会一致で決定した。
目下最大の関心事はトランプ次期大統領が掲げる景気刺激策だ。トランプ氏は大規模な減税に加え、10年間で1兆ドルのインフラ投資を公約する。米経済は好調な上、更にこの公約が実施されるとインフレになるとの懸念で、FRBは今回、来年の利上げペースをの見通しをこれまでの年2回より年3回に引き上げた。
トランプ大統領は ”雇用第1主義” を掲げ、雇用確保に力を入れている。そのため、メキシコに工場を移転しようとする企業に対しては、輸入関税を課すと、ツイッターで脅している。ツイッターは、公式の意見ではなくその場の思い付き発言に過ぎないと思われるが、企業は敏感に反応している。
昨年11月、空調機器大手、キャリア社は1400人の雇用を3年かけてインディアナ州からメキシコに移転する計画を発表していたが、トランプ氏の批判を受けて撤回した。フォード・モーターは3日、メキシコに16億ドル(約1900億円)投じて建設予定の新工場を取りやめると発表。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は8日、ミシガン州とオハイオ州の2工場に10億ドルを投じて設備の最新化を図ると発表した、等である。
関税の変更は、北米自由貿易協定(NAFTA)全体にかかわる問題で、議会がすんなり了承するか疑問であるが、ツイッター効果は抜群である。こんなに簡単に予定変更しても良いのかと、他人事ながら心配する。
一方、米国全体では完全雇用状態らしい。米国に工場を戻した場合、そこで働く労働者は白人優先と思われが、経営者側は低賃金で済む外国人労働者の方を選択するであろう。また、移民制限を実施した場合、更なる労働力不足となり、賃金高騰を招き、競争力が低下する懸念がある、等色々心配しだすと何かをなすことが困難になろう。
所謂知識階級はこのような理屈を並べ、有効な手は打てないと、白人労働者階級への手当に手をこまねいていたのかも知れない。ラストベルトにおける白人労働者は理屈はどうでもよく、過去の繁栄が欲しいだけだ。この意味で、トランプ大統領の手腕が試される訳だが、トランプ氏が言うほど単純では無い。これまで以上に称賛されるか、一気に人気が落ちるか、大した時間をかけずに決着するのではないかと思う。
2017.01.14(犬賀 大好-303)
例えば、2016年の米国の新車販売台数は、2年連続で過去最高を更新したとのことだ。低金利政策で自動車ローンの金利低下に加え、ガソリン価格が低下したことが原因とのことである。低金利政策の影響は住宅ローンの金利低下にも現れ、着工件数も堅調のようである。
2008年9月に起きたリーマンショックでは、サブプライムローンが有名になった。これは低所得者向けの住宅ローンであったが、今回は自動車ローンの先行きが危ぶまれているらしい。すなわち、米国の自動車販売台数が伸びたとはいえ、現在の米自動車ローン残高は過去最高のおよそ100兆円に達しているそうだ。その内およそ35~40兆円がサブプライムな自動車ローンとのことだ。
米国はサブプライム住宅ローンで痛い目にあっている筈であるのに、同じ過ちを犯そうとしている。自動車購入者が住宅購入者と別の人間か、あるいは貸し出す方が手の込んだ旨い細工をしているのかも知れないが、儲けを当て込んだローンである限り、住宅ローンと ”同じ穴のむじな”であることには間違いないだろう。
今年は買い替え需要が一巡し、金利上昇も予想されることから、米国の新車販売は減少に転ずると予想され、この問題が顕在化するかも知れない。
このような懸念材料を抱えながらも、全体として、米経済は順調である。これを受けて、昨年12月連邦公開市場委員会(FOMC)は、一年ぶりの0.25%の利上げを全会一致で決定した。
目下最大の関心事はトランプ次期大統領が掲げる景気刺激策だ。トランプ氏は大規模な減税に加え、10年間で1兆ドルのインフラ投資を公約する。米経済は好調な上、更にこの公約が実施されるとインフレになるとの懸念で、FRBは今回、来年の利上げペースをの見通しをこれまでの年2回より年3回に引き上げた。
トランプ大統領は ”雇用第1主義” を掲げ、雇用確保に力を入れている。そのため、メキシコに工場を移転しようとする企業に対しては、輸入関税を課すと、ツイッターで脅している。ツイッターは、公式の意見ではなくその場の思い付き発言に過ぎないと思われるが、企業は敏感に反応している。
昨年11月、空調機器大手、キャリア社は1400人の雇用を3年かけてインディアナ州からメキシコに移転する計画を発表していたが、トランプ氏の批判を受けて撤回した。フォード・モーターは3日、メキシコに16億ドル(約1900億円)投じて建設予定の新工場を取りやめると発表。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は8日、ミシガン州とオハイオ州の2工場に10億ドルを投じて設備の最新化を図ると発表した、等である。
関税の変更は、北米自由貿易協定(NAFTA)全体にかかわる問題で、議会がすんなり了承するか疑問であるが、ツイッター効果は抜群である。こんなに簡単に予定変更しても良いのかと、他人事ながら心配する。
一方、米国全体では完全雇用状態らしい。米国に工場を戻した場合、そこで働く労働者は白人優先と思われが、経営者側は低賃金で済む外国人労働者の方を選択するであろう。また、移民制限を実施した場合、更なる労働力不足となり、賃金高騰を招き、競争力が低下する懸念がある、等色々心配しだすと何かをなすことが困難になろう。
所謂知識階級はこのような理屈を並べ、有効な手は打てないと、白人労働者階級への手当に手をこまねいていたのかも知れない。ラストベルトにおける白人労働者は理屈はどうでもよく、過去の繁栄が欲しいだけだ。この意味で、トランプ大統領の手腕が試される訳だが、トランプ氏が言うほど単純では無い。これまで以上に称賛されるか、一気に人気が落ちるか、大した時間をかけずに決着するのではないかと思う。
2017.01.14(犬賀 大好-303)