英国のメイ首相は1月17日、欧州連合(EU)からの離脱に向けた政府の基本方針を明らかにした。”より強く、より公正で、真にグローバルな英国” を基本理念とするとのことだ。メイ首相は、他のEU加盟国との自由貿易をできるだけ続けたいとしつつ、一方では移民の流入を制限すると表明している。しかしながら、EU側は人の移動の自由と単一市場を切り離すことはできないという姿勢を崩さず、双方の立場は大きく隔たったままである。メイ首相は、この難問を如何に解決するのであろうか。
これまで、世界が突き進んできたグローバル化の流れは、経済の格差等の欠点を露わにした。例えば、国際NGO「オックスファム」は1月16日、2016年に世界で最も裕福な8人の資産の合計が、世界人口のうち、経済的に恵まれない下から半分(約36億人)の資産の合計、約4260億ドル(約48兆6千億円)に匹敵すると発表した。富の集中は極端化しているのだ。
また、1988年から2011年の間に下位10%の所得は年平均3ドルも増えていないのに、上位1%の所得は182倍になり、格差が広がっていると指摘している。グローバル化の欠点が明らかになってきた現在、何らかの対策が必要なことは言うまでもない。
さて、科学分野の研究水準は世界でも最高峰といわれる、ケンブリッジ大学はイギリスの名門である。産学連携が盛んで、大学周辺にはベンチャー企業や金融機関が集積し、学園都市を形成している。それを支えていたのが、世界からの資金や有能な人材の流入であり、グローバル化の典型と思われるが、メイ首相の言う “真にグローバルとは” 何を意味するのか是非知りたいところではある。
移民の流入の制限とグローバル化は直感的には矛盾すると思われるが、日本では矛盾しているとは思われていないようだ。日本は移民政策を拒否しているが、いつの間にか、技能実習制度等により日本で暮らす外国人は、在日韓国、朝鮮人らの特別永住者の他、国への届け出によると90万人余り(15年秋時点)と増加しているそうだ。額面上は移民を否定しているが、実質的には移民政策を実行していると思った方が良いかも知れない。
日本は、自動車産業を代表に輸出で外貨を稼ぎ、グローバル化の恩恵を受けている。また、TPPは頓挫したが、それまで推進し、これからの日本はグローバル化でしか生き残れないと主張してきた。日本ではグローバル化と移民の制限は矛盾しないのだ。既に自動車産業には大勢の外国人労働者が働いている。彼らのために日本人の雇用が奪われているとの話は聞かれないどころか、少子化に伴う労働者不足を補っている。
英国は、元々旧植民地のインド、香港、中近東、アフリカなどの出身者が多数居住しているが、 2004 年以降は年平均 24 万人の移民の流入があるそうで、外国人労働者の総数は日本よりはるかに多いだろう。
また、英国は、かって IT 技術者、医師、看護師などの不足を解消しようと移民規制の緩和に動き、その際、高技能人材は積極的に受け入れるものの、未熟練労働者や不法就労移民の入国は制限する方針だったそうだ。しかし、2000年以降のEU加盟国の増加と共に英国への移民流入は政府の想定外に急増し現在の状況になっているとのことだ。
EU の基本原則で、EU 加盟国内からの移民に関しては、「人の移動の自由」を保障しているため、このような事態に及んだとして、英国国民はEU離脱を選択したのだ。
メイ首相は、高技能人材は受け入れ、未熟技能者は拒否するとの考えであろうが、これが真のグローバルと言えるのであろうか。
一方、我が日本でも、”日本版高度外国人材グリーンカード”が3月より始まるそうだ。これは高技能人材には永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮する等、人材確保のための施策だ。世界は優秀な人材を求めたがっている。
恐らく、英国でも日本と同様に、良いとこどりの政策が行われるのであろうが、真にグローバル化と胸を張れるであろうか。2017.01.28(犬賀 大好-307)
これまで、世界が突き進んできたグローバル化の流れは、経済の格差等の欠点を露わにした。例えば、国際NGO「オックスファム」は1月16日、2016年に世界で最も裕福な8人の資産の合計が、世界人口のうち、経済的に恵まれない下から半分(約36億人)の資産の合計、約4260億ドル(約48兆6千億円)に匹敵すると発表した。富の集中は極端化しているのだ。
また、1988年から2011年の間に下位10%の所得は年平均3ドルも増えていないのに、上位1%の所得は182倍になり、格差が広がっていると指摘している。グローバル化の欠点が明らかになってきた現在、何らかの対策が必要なことは言うまでもない。
さて、科学分野の研究水準は世界でも最高峰といわれる、ケンブリッジ大学はイギリスの名門である。産学連携が盛んで、大学周辺にはベンチャー企業や金融機関が集積し、学園都市を形成している。それを支えていたのが、世界からの資金や有能な人材の流入であり、グローバル化の典型と思われるが、メイ首相の言う “真にグローバルとは” 何を意味するのか是非知りたいところではある。
移民の流入の制限とグローバル化は直感的には矛盾すると思われるが、日本では矛盾しているとは思われていないようだ。日本は移民政策を拒否しているが、いつの間にか、技能実習制度等により日本で暮らす外国人は、在日韓国、朝鮮人らの特別永住者の他、国への届け出によると90万人余り(15年秋時点)と増加しているそうだ。額面上は移民を否定しているが、実質的には移民政策を実行していると思った方が良いかも知れない。
日本は、自動車産業を代表に輸出で外貨を稼ぎ、グローバル化の恩恵を受けている。また、TPPは頓挫したが、それまで推進し、これからの日本はグローバル化でしか生き残れないと主張してきた。日本ではグローバル化と移民の制限は矛盾しないのだ。既に自動車産業には大勢の外国人労働者が働いている。彼らのために日本人の雇用が奪われているとの話は聞かれないどころか、少子化に伴う労働者不足を補っている。
英国は、元々旧植民地のインド、香港、中近東、アフリカなどの出身者が多数居住しているが、 2004 年以降は年平均 24 万人の移民の流入があるそうで、外国人労働者の総数は日本よりはるかに多いだろう。
また、英国は、かって IT 技術者、医師、看護師などの不足を解消しようと移民規制の緩和に動き、その際、高技能人材は積極的に受け入れるものの、未熟練労働者や不法就労移民の入国は制限する方針だったそうだ。しかし、2000年以降のEU加盟国の増加と共に英国への移民流入は政府の想定外に急増し現在の状況になっているとのことだ。
EU の基本原則で、EU 加盟国内からの移民に関しては、「人の移動の自由」を保障しているため、このような事態に及んだとして、英国国民はEU離脱を選択したのだ。
メイ首相は、高技能人材は受け入れ、未熟技能者は拒否するとの考えであろうが、これが真のグローバルと言えるのであろうか。
一方、我が日本でも、”日本版高度外国人材グリーンカード”が3月より始まるそうだ。これは高技能人材には永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮する等、人材確保のための施策だ。世界は優秀な人材を求めたがっている。
恐らく、英国でも日本と同様に、良いとこどりの政策が行われるのであろうが、真にグローバル化と胸を張れるであろうか。2017.01.28(犬賀 大好-307)