1月15日、ロシアの大統領選挙は来年3月に予定通りに行われ、プーチン大統領側が立候補に向けた準備を始めたとの報道があった。プーチン大統領が仕掛けたウクライナ侵攻は終わる気配はない。ウクライナは西欧諸国の軍事支援を受けてウクライナ領土内で抵抗しているが、ロシア本土を攻撃する能力を有する武器までは支給されてない。プーチン大統領の”もしロシア領土が脅かされるならば核兵器の使用も辞さない”との脅しが効き、西欧諸国が武器の提供を差し控えているからだ。
ロシアは自国領土が脅かさることなく安心してウクライナ領土にミサイル攻撃を仕掛けているが、このままでは戦争が終結される目途は立たず、一方的にウクライナ領土が荒廃していくばかりである。
唯一の戦争終結の道はプーチン大統領の退陣だろう。武力クーデタによる強制的な退陣か話し合いによる平和的な退陣である。前者のクーデタの場合更に強硬な戦争続行派が現れる危険性の方が大きく、戦争終結とはならないかも知れない。後者の場合、病気等によるやむを得ない場合か選挙による方法である。
民主的な国家においては選挙が一番である。自国第1主義で世界との協調を軽んずる米国トランプ前大統領、ブラジルの民族主義的で保守的なボルソナロ前大統領は選挙で敗れ、表舞台から去った。中国のように選挙があっても立候補が著しく制限される選挙が形ばかりであれば、期待できない。ロシアも似たような状況だ。国内では政権によるプロパガンダや検閲などの情報統制、反体制派への弾圧が徹底している。
また、政権周辺のエリートは安定を重視し、プーチンが不在になることを極度に恐れており、プーチンが独断で始めたウクライナ侵攻を快く思っていないが、結局は容認し早く終わればいい位に思っている。彼らはプーチンに抵抗できない。プーチン氏が22年にわたって築いた体制は強固で、エリートの間では、有事にはプーチン氏以外の選択肢はないとの総意があるようだ。
ただし、ロシアの政治・社会情勢は現状では、プーチン氏に代わる人物はおらず、国を改善しようとする試みも国内にはないようだが、昨年秋以来状況の変化がある。
ロシア国防省は1月13日、激しい戦闘が続く東部ドネツク州で、ウクライナ側の拠点の一つソレダールを12日夜に掌握したと発表した。ソレダールを巡ってはロシアの民間軍事会社ワグネルが多くの戦闘員を投入していたとされ、ワグネルの代表のプリゴジン氏はロシア国防省の発表に先立ってソレダールの掌握はロシア軍の部隊ではなく、ワグネルの戦闘員によってなされたと主張した。
言わば手柄争いの様相だが、国家間の戦争に民間企業が入って来るとは国の統制が緩んできた証ではないだろうか。また、昨年9月の統一地方選前後に、地方議員らが連名で大統領弾劾を求める共同書簡を発表する等、ロシアの体制は周辺からじわじわと変わりつつあると感ずるが、来年の大統領選で大きな変化があるだろうか。2023.01.18(犬賀 大好ー881)