日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の貿易のグローバル化と米国の出方

2020年11月28日 14時43分39秒 | 日々雑感
 米国ではバイデン大統領の誕生がほぼ確定し、トランプ大統領の自国第1主義は影を潜め、国際協調が強化されるよう期待が高まる。しかし、グローバル化に象徴される新自由主義経済は米国内の分断を強めているとし、労働者の保護を目的としグローバル化への反省の機運が出始めている。  

 すなわち、環太平洋連携協定(TPP)についてはトランプ氏が脱退を表明したが、バイデン大統領は復帰を明言せず公約をまとめた政策綱領への記載を見送ったのだ。そこには市場開放で職を失った工業地帯の労働者に配慮し、当面はいかなる新たな貿易協定交渉にも入らないと記されたのだ。トランプ政権下で保護主義に傾いた政策の急転換は難しく、バイデン氏が持論であるTPP再交渉を封印しているのは、トランプ大統領の影響が残るからだ。

 さて、11月15日、日本など15カ国はオンライン形式で会合を開き、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名した。RCEPは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日中韓、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が参加する。日本にとっては貿易額で1位の中国、3位の韓国と結ぶ初のEPA(経済連携協定)となる。世界の国内総生産(GDP)や貿易額で3割を占める大型の自由貿易協定(FTA)が発足することになる。

 これに対し、先述のTPPは、2006年頃より4か国で始まった経済連携協定(EPA)に、2008年米国が参加、2010年日本も参加したが、2017年にトランプ大統領のアメリカ合衆国はTPPから離脱した。アメリカ合衆国の離脱後、残った国々は、TPPの一部の規定を改め、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)として、2018年12月30日に発効した。

 TPPは世界第1、2の経済大国である米国と中国が参加していない11か国の経済連合であり、中国が参加する15か国のRCEPの方がはるかに日本への影響力が大きいように思われるが、TPPが1軍だとしたら、RCEPは3軍レベルの貿易自由化だそうだ。こうした自由貿易協定では関税撤廃率が重視されるが、RCEPは参加国全体で91%となりTPPでは99%であるそうで、これを根拠に3軍と称しているのだ。

 しかも日本にとっては、中国と韓国の関税撤廃のレベルの低さが問題だ。日本からの輸入品で見れば、中国は86%、韓国は83%にとどまって及第点ぎりぎりだ。また、関税撤廃率だけを見て輸出拡大につながるとするのは早計で、中身は15~20年間といった時間をかけて撤廃するものも多く、当面大きな影響は無いとの話だ。

 一方、中国は米国との対立が続くなか、アジアでの協調を優先し、米国抜きの枠組みづくりを急ぎ、自国の影響力の及ぶ経済圏構築に力を注ぎ、更に、TPPへの参加に意欲を示しているそうだ。

 米国が大統領選の結果を踏まえ、アジア太平洋地域での貿易にどう関与するかが今後の最大の関心事だ。中国がTPPに参加するとなれば中国の存在感が増すとみられ、米国も黙って見過ごす訳にはいかないだろう。2020.11.28(犬賀 大好-656)