東北大震災に伴う福島第1原子力発電所の1号機から3号機における炉心融解事故の後始末は 想像以上に困難であることがますます明らかになってきた。福島第1原発の4つの原子炉の内、1号機から3号機は炉心が融解しており、炉心の内部がどのような状態になっているか、未だに不明のまま、廃炉の見通しも立っていない。
2013年、福島第一原発の廃炉作業に必要な技術の研究開発を目的として、技術研究組合である国際廃炉研究開発機構(IRID)が設立された。構成メンバーは、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所や原発プラント・メーカーの他、電力会社である。日本の総力を挙げて廃炉作業に臨む組織のように見える。しかし、国際云々と謳ってはいるが日本が主体であり、その後の動きを見ると、寄せ集めの感は免れない。
さて、正常に運転停止した場合の廃炉であっても、日本では経験が無く大変な作業が予想されるのに、未だに原子炉内部の様子が分かっていない。電源停止による炉心融解の為、原子炉内部は放射線量が高く、人間による直接的な調査が出来ないのが最大の原因であろう。
このための一つの方法として、宇宙線が大気に衝突した際に生じる ”ミュー粒子” を利用し、レントゲン写真のように建屋を透視して溶け落ちた核燃料を捜す新しい技術により、1号機では原子炉の中に核燃料が見当たらないことを突き止めた。すなわち1号機の原子炉格納容器内で核燃料は大部分が格納容器内に落下し、冷却水に浸かっているらしいと分かったが、それ以上のことは分からない。
廃炉作業の前段階で核燃料を取り出すことが必要となるが、どのような状態になっているかが分からなければ、取り出し方も分からない。このような状況ではロボット的なものが必要不可欠になる。ロボット的と表現したが、どんな悪環境の中でも自在に動き回り、必要な情報を集め、かつ物を移動することが出来るとの何か理想的なものを表現しているだけで、具体的な形が分かっている訳ではない。鉄腕アトムが理想的なロボットに近いが、アトムのように大空を自由に動き回る能力ではなく、僅かな隙間を見つけて自在に動き回る能力が必要となる。
東京電力は1月26日、2号機の原子炉格納容器の本格調査を始め、原子炉直下で黒い塊や強い放射線量を確認した。報道でははっきりしないが、人間が棒の先にカメラや線量測定器を付け容器内に押し込んで測定した結果であるようだ。このような手法では棒の届く範囲に限られ、また曲がった先での観測は無理だ。
そこで次には自走ロボットが必要になる。自走ロボットの理想形は、電池等のエネルギー源を搭載し、各種観測機器を有し、障害物を自分で判断して回避し、しかも小さい障害物であれば把持し移動する能力を有する移動ロボットであろう。しかし現在の技術の総力を挙げても当分の間出来そうにない。
東電は2月16日、IRID開発の調査ロボット ”サソリ” を格納容器内部に入れた。このロボットは、各種の観測機器を有しているが、レールの上をクローラと呼ばれるキャタピラーで動き、電源ケーブル等のひも付きロボットであり、理想形とは程遠いが、最初のロボットとしては仕方がない。
しかし、途中左側のベルトの動きが鈍くなり目標の原子炉の真下まで進めず、また後戻りも出来なくなったため、回収を断念し、今後の調査の支障にならないよう、レールの脇に移動させたうえでケーブルを切断し、放置する措置がとられたそうだ。
原因はロボットの駆動輪に異物が入り込んで動かなくなったと判断しているようであるが、本当であれば初歩的なミスである。本来であれば、様々な環境の中で試験し、滑らかに動くように試行錯誤している筈だ。
IRIDは、日本の最高の知能を集めた組織の筈だが、開発体制にも懸念が生ずる。”船頭多くして船山に登る”状態になっていなければよいが。それとも単に人数合わせのために集められた凡才集団か。
東電はロボットが集めたデータを分析するとともに、今後の調査計画を検討するとしているが、新たな設計には半年を要する。また、1号機、3号機の核燃料は水中に没している可能性が高く、更に水中用ロボットの開発が必要となるかも知れない。
東電作成の中長期ロードマップ(2015年6月作成)には、燃料の取り出し方法の確定時期は、2018年度上半期と記されている。まだ、核燃料の在りかも分からない状況では時間的な余裕があるとは言えない。IRIDによると、福島第一原発1~3号機の格納容器調査にかかる事業費は、14~17年度で計約70億円と見込んでいるが、こんなものでは済まないであろう。2017.02.25(犬賀 大好-315)
2013年、福島第一原発の廃炉作業に必要な技術の研究開発を目的として、技術研究組合である国際廃炉研究開発機構(IRID)が設立された。構成メンバーは、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所や原発プラント・メーカーの他、電力会社である。日本の総力を挙げて廃炉作業に臨む組織のように見える。しかし、国際云々と謳ってはいるが日本が主体であり、その後の動きを見ると、寄せ集めの感は免れない。
さて、正常に運転停止した場合の廃炉であっても、日本では経験が無く大変な作業が予想されるのに、未だに原子炉内部の様子が分かっていない。電源停止による炉心融解の為、原子炉内部は放射線量が高く、人間による直接的な調査が出来ないのが最大の原因であろう。
このための一つの方法として、宇宙線が大気に衝突した際に生じる ”ミュー粒子” を利用し、レントゲン写真のように建屋を透視して溶け落ちた核燃料を捜す新しい技術により、1号機では原子炉の中に核燃料が見当たらないことを突き止めた。すなわち1号機の原子炉格納容器内で核燃料は大部分が格納容器内に落下し、冷却水に浸かっているらしいと分かったが、それ以上のことは分からない。
廃炉作業の前段階で核燃料を取り出すことが必要となるが、どのような状態になっているかが分からなければ、取り出し方も分からない。このような状況ではロボット的なものが必要不可欠になる。ロボット的と表現したが、どんな悪環境の中でも自在に動き回り、必要な情報を集め、かつ物を移動することが出来るとの何か理想的なものを表現しているだけで、具体的な形が分かっている訳ではない。鉄腕アトムが理想的なロボットに近いが、アトムのように大空を自由に動き回る能力ではなく、僅かな隙間を見つけて自在に動き回る能力が必要となる。
東京電力は1月26日、2号機の原子炉格納容器の本格調査を始め、原子炉直下で黒い塊や強い放射線量を確認した。報道でははっきりしないが、人間が棒の先にカメラや線量測定器を付け容器内に押し込んで測定した結果であるようだ。このような手法では棒の届く範囲に限られ、また曲がった先での観測は無理だ。
そこで次には自走ロボットが必要になる。自走ロボットの理想形は、電池等のエネルギー源を搭載し、各種観測機器を有し、障害物を自分で判断して回避し、しかも小さい障害物であれば把持し移動する能力を有する移動ロボットであろう。しかし現在の技術の総力を挙げても当分の間出来そうにない。
東電は2月16日、IRID開発の調査ロボット ”サソリ” を格納容器内部に入れた。このロボットは、各種の観測機器を有しているが、レールの上をクローラと呼ばれるキャタピラーで動き、電源ケーブル等のひも付きロボットであり、理想形とは程遠いが、最初のロボットとしては仕方がない。
しかし、途中左側のベルトの動きが鈍くなり目標の原子炉の真下まで進めず、また後戻りも出来なくなったため、回収を断念し、今後の調査の支障にならないよう、レールの脇に移動させたうえでケーブルを切断し、放置する措置がとられたそうだ。
原因はロボットの駆動輪に異物が入り込んで動かなくなったと判断しているようであるが、本当であれば初歩的なミスである。本来であれば、様々な環境の中で試験し、滑らかに動くように試行錯誤している筈だ。
IRIDは、日本の最高の知能を集めた組織の筈だが、開発体制にも懸念が生ずる。”船頭多くして船山に登る”状態になっていなければよいが。それとも単に人数合わせのために集められた凡才集団か。
東電はロボットが集めたデータを分析するとともに、今後の調査計画を検討するとしているが、新たな設計には半年を要する。また、1号機、3号機の核燃料は水中に没している可能性が高く、更に水中用ロボットの開発が必要となるかも知れない。
東電作成の中長期ロードマップ(2015年6月作成)には、燃料の取り出し方法の確定時期は、2018年度上半期と記されている。まだ、核燃料の在りかも分からない状況では時間的な余裕があるとは言えない。IRIDによると、福島第一原発1~3号機の格納容器調査にかかる事業費は、14~17年度で計約70億円と見込んでいるが、こんなものでは済まないであろう。2017.02.25(犬賀 大好-315)