日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

神の存在と論理的思考

2017年02月18日 09時39分53秒 | 日々雑感
 トランプ新大統領の登場で、米国社会の分断が話題になっているが、その分断は色々な面に現れている。その一つが保守層と知識層の分断であるが、米国民の半数近くが未だにダーウィンの進化論を信じていないと聞くと、月に人類を送り込んだのは同じ米国人かと、思わず耳を疑ってしまう。

 しかし、ダーウィンの進化論を信じないからと言って、現在の最新技術を否定する訳ではないだろう。すなわち、神の存在を信ずることとインターネット等の使用は少しも矛盾しないのであろう。現実は現実として受け入れ、すべて神様のお陰とすれば良いだけのことである。

 ルネッサンス期における科学の進歩は、神様の存在を肯定した上で神様は一体何を考えているのだろうとの好奇心に基づいていた、と聞いたことがある。未知の領域に対する好奇心があれば、論理的思考と科学の進歩はあるのだ。

 現在科学の進歩は目覚ましいが、その進歩は更に新しい謎を生む。例えば、生命の起源である。旧約聖書ではアダムとイブが人間のご先祖様であると説いている。遺伝子に関する知見が進んだ現在の科学では、原始生命体や共通先祖から古細菌と真正細菌が生まれ、古細菌より真核生物へと進化し、更に人類に進化した、と信じられている。古細菌や真正細菌の存在が確認され、その遺伝子構造が解明され、どのように人間に進化していったかが、ある程度解明されたのだ。

 しかし、原始生命体や共通先祖はどうやって生まれたかは謎のままである。ここで改めて神様を持ち出し、人知の及ばぬ目的でお創りになったと納得すれば一気にことは解決する。しかし神様は何の目的でどうやって作ったかを知りたくなるが好奇心だ。

 また、原始生命体や共通先祖の存在が確認されても、更にその先祖は何だろうかと、そもそも地球の誕生は、宇宙はどうやって出来たのか、ビックバン以前の宇宙はどうであったか、突き詰めて考えていくと、どこかでどうしても神様を持ち出したくなる。この意味で、科学がいくら進歩しても、AIの進歩がいくらあっても、神様はその姿を変えて、いつまでも存在し続けるであろう。

 先端的な科学を追及する人も、神様の存在を信じざるを得ないような現象の不思議さによく遭遇する。そう考えると、先進国であっても、宗教を心底信じている人がいても何ら不思議ではない。問題は神様の存在する深さである。始めから盲目的に神様の存在を信ずるのと、深く考えた末に神の存在を信じざるを得なくなったのでは雲泥の差がある。

 アダムとイブの存在を何も疑わずに信ずる人は、論理的な思考結果よりも、聖書の内容が唯一である。論理的な思考は苦手であり、結果として論理的な思考を神様が邪魔していると言えるかも知れない。

 今回の米国大統領選挙では、大勢の白人の福音派キリスト教徒がトランプ氏に投票し、極めて重要な役割を担ったとのことだ。米ABCニュースの出口調査によると、白人福音派の81%がトランプ氏に投票しているのだそうだ。福音派と言えば、ダーウィンの進化論を否定し、アダムとイブを人類の先祖とする人々であろう。これが、米国における、保守層と知識層の分断の顕著な例であろう。

 トランプ米新大統領は、大統領令により、イスラム7ヵ国からの米国への入国を禁止した。テロを防止するためだとの理由である。このこと自体は非常に分かり易い主張だが、単純な発想だ。

 このことからも、トランプ氏はテロ発生の理由を深く論理的に考えていないと言える。これまでテロを起こした人にイスラム系の人が多かっただけの理由で入国を禁止して、テロ撲滅できると考えているのだろうか。トランプ氏はキリスト教徒に間違いないだろうが宗派は不明である。氏の単純さが単に世間受けのためか、宗教的なものから来るのか分からないが、前者であることを願うばかりである。そうであれば、根が深くないからである。

 米国始め世界は移民排斥運動が高まりを見せているが、米国やヨーロッパ各国が難民受け入れを拒否すると、世界は一層不安定となり、テロの脅威は増すだろう。トランプ大統領はテロの根源は貧困にあることを認識し、貧しさの原因はどこにあるか、自国第一主義はテロを生むことを論理的に自覚すべきであろう。2017.02.18(犬賀 大好-313)