日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

タクシー減車と成長戦略

2015年08月15日 09時55分17秒 | 日々雑感
 2002年にタクシーは規制緩和され、新規参入や増車が原則自由になった。しかし、結果タクシー数が過剰になり、限られたお客を奪い合い、長時間労働等の運転手の待遇に問題が生じた。このため、国土交通省が事業者の同意を得て「特定地域」に指定すれば、国が減車を命令することが出来るようになった(タクシー適正化・活性化法、2014 改正)。東京23区や名古屋市は現時点ではこの対象外であるが、大阪や福岡市は特定地域に指定される見込みとのことである(2015.8.9 現在)。
 規制緩和は、自由な競争により業界が活性化し、利用者にとっても車をつかまえ易くなる等、皆が幸せになるとの目論見であった。実際、格安タクシーの誕生、更に「子供タクシー」や「介護タクシー」等の新サービスが登場し、利用者には便利になった。
 今回の国交省の取り決めは、利用者より業界向けのサービスであり、成長戦略に逆行する処理である。規制緩和による自由競争の下では、需要と供給の原則に則り、タクシー数は適度なところにバランスする筈であった。事業者は薄利多売を狙い、タクシー数を過剰に増やすと共に運転手に歩合制を嫁した。運転手も新たな冒険を避け、従来通りの仕事を続けることをよしとした。そこには、新たな仕組みに対する工夫など無い。このため、運転手は長時間労働を余儀なくされた。
 もし、タクシー減車の目的が長時間労働の防止であるならば、厚労省が規制に乗り出すべきである。恐らく、タクシー業界への天下りポストは国交省が占有するとして、国交省は厚労省に何も相談などしていないのであろう。
 本来、タクシー運転手もきつい仕事を敬遠し、割の良い仕事を選択する筈であった。現在、サービス業は人手不足状態であり、貨物運送業界も同様らしい。現にヤマト運輸は、来年4月に入社する高卒運転手の採用を前年より6割り増しの400人にする予定だそうだ。タクシー運転手の技能は、貨物運送業界にも通用する筈である。運転免許証等の関係で問題あれば、国交省はこのようなところで力を発揮すればよい。
 この人手不足の状況は、ここ2,3年の出来事かもしれないが、タクシー減車の施策は昨年である。安倍首相は成長戦略を推し進めている。国交省は正に後ろから鉄砲を撃っている。
 自由競争の強化は新たな創意工夫を生み、実際新たなサービスも誕生した。成長戦略は新たな職種を生み、雇用を増やすことである。限られたお客を奪い合いするだけでは成長戦略とはならない。ましてタクシー減車からは何も生まれない。
 労働者側にもチャレンジ精神が必要だ。人手不足な業界を見つけて、新たな技能を身につけるべきだ。時代の変革は年々激しくなっている。いつまでも同じ職種にしがみつくようでは、すぐに時代に取り残される。(犬賀 大好-155)