で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1228回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ブリムストーン』
西部開拓時代を舞台に、言葉を発することができない人妻を主人公に、信仰の名の下に数々の悲劇を味わわされ続けたその凄絶な人生をある男とのミステリアスな関係を軸に、過激な残酷描写を織り交ぜつつ、章立ての構成で描き出す衝撃のウエスタン・スリラー。
監督と脚本は、オランダの俊英マルティン・コールホーヴェン
物語。
小さな村で夫と幼い2人の子どもと暮らすリズ。言葉を発することのできない彼女だったが、助産師の仕事をすることで、村人に必要とされ、満たされた日々を送っていた。
彼女はある事情で村に来る前に言葉を失ったのだったが、今は幼い娘が通訳をしてくれていた。
そんなリズの平穏な日々は、ある狂気を引き起こす出来事によって、変貌していく。
出演。
ダコタ・ファニングが、リズ。
エミリア・ジョーンズが、ジョアナ。
ガイ・ピアースが、牧師。
カリス・ファン・ハウテンが、アン
キット・ハリントンが、サミュエル。
ほかに、ジャック・ホリントン、ヴェラ・ヴィタリ、カルラ・ユーリ、など。
スタッフ。
製作は、エルス・ファンデヴォルスト、ウーヴェ・ショット。
製作総指揮は、ニッキー・ハッティング、シェリル・クラウン、アン・シーアン、ティム・ハスラム、ヒューゴ・グランバー、ジャン=バプティスト・ババン、ジョエル・ティブー、ニック・パウエル。
撮影は、ローヒエ・ストファース。
視点の見せ方、夜の映し方はかなり雰囲気があります。好み。
プロダクションデザインは、フローリス・フォス。
衣装デザインは、エレン・レンス。
編集は、ヨープ・テル・ブルフ。
音楽は、トム・ホルケンボルフ(またはジャンキーXL)。
唖者の女性の地獄の一代記を描く残酷西部劇。
西部劇というファンタジーで真っ赤に振り切って見せるチューリップ・ウエスタン。
ダコタ・ファニングとエミリア・ジョーンズとガイ・ピアースの演技摩擦で火がボーボーで、血は凍る。
銃声大きく、血赤く、傷口広く、男は悪く、女は嗜虐で強く哀しく逞しく。
二つの現代的テーマを時代物で描くことで歴史的土台を感じさせる。
痛く生々しいのに圧倒的な寓話感。この闇の見せ方を映画館で見られる喜び背徳感。
異端西部劇へのオマージュ満載。
真逆に突き進み西部劇の枠を一つ押し広げた断作。
おまけ。
原題も『BRIMSTONE』。
"ブリムストーン(brimstone)"は、古語で、硫黄、口やかましい女のこと。そこから激しい情熱、地獄の業火、の意味がある。
『聖書』の黙示録に「a lake of fire burning with brimstone」 とあり、「硫黄で燃えている火の池」は地獄のことを指すので、ブリムストーンだけでも地獄を指すようになったみたいです。
上映時間は、148分。
製作国は、オランダ/フランス/ドイツ/ベルギー/スウェーデン/イギリス/アメリカ。
映倫は、R15+。
受賞歴。
2017年のオランダ映画祭にて、黄金の子牛賞(最高長編賞)をエルス・ファンデヴォルストとウーヴェ・ショットが、最優秀監督賞をマルティン・コールホーヴェンが、撮影賞をローヒエ・ストファースが、音響賞をHerman Pieëteが、音楽賞をジャンキーXLが、制作賞をFloris Vos社が、受賞。
2017年のヨーロッパ映画賞にて、ヘア&メイクアップ賞 Leendert van Nimwegenが、受賞。
キャッチコピーは、「私は知っている。地獄の業火と、その苦しみを――これは愛と暴力と信仰を巡る、壮絶な年代記(クロニクル)。」。
同じ出だからかポール・バ―ホーベンを継いだような作風に鼻血が滾る。
ややネタバレ。
いわば、逆『捜索者』であり、性的『狩人の夜』と『ギャンブラー』。
ネタバレ。
裂け目と液体(血、油、泥、湖、雪、雨)がモチーフ。
液体は火と対比されている。