で、ロードショーでは、どうでしょう? 第160回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ソルト』
アンジョリーナ・ジョリーのスパイ・アクション映画。
女性的なところを外見でなく、内面に求めるように演出しているところに注目したい。
カート・ウィマーの脚本には、どこか、性差を超えて、普遍的な感情を強調するところがある。
『リベリオン』と『ウルトラ・バイオレット』を比較するとわかりやすい。
両作は、どちらも、ある種の母性が存在しているのだ。
アクションは、まぁそこまで取り立てるほどの凄さや新奇さはないが、細かいことを捨てない丁寧さがある。
注意の引き方とか、蜘蛛のことや、マガジンや照準のずらしとかね。
もちろん、リアルさとは別で。跳弾やら。
脚本には、深みはないが、上手く並べられたピースがうまいこと機能していく気持ち良さがある。
だが、映画的に機能させてはいるが、どこか都合の良さも感じて、少々冷めることもあるんですけどね。
でも、カート・ウィマー節ともいえる心意気が前面に出てくるのだ。
それは、個人の意志が行動を決めるということ。
善でも悪でも関係なく、皆が自分の心の矢印を信じて行動するのだ。
この心意気が大好物なんですよ。
それは女性でも男性でも関係なく貫かれる。
だから、性差は問題にならない。
人間の内面が行動によって浮かび上がってくるのだ。
ある種、70年代のアクションの雰囲気があるのよ。
もっと言えば、時代劇や西部劇的なシンプルな力強さがあるのだ。
それを支えるのは、実は芸達者な面々。
横に広いサム・ワーシントンともいえるリーヴ・シュレイパーの甘みと、おいらの好みのキウェテル・イジョフォーの苦みが実にいいコントラストを醸し出すのよ。
そして、アンジェリーナ・ジョリーの口元の力強さ!
でも、夫役はちょっと寂しいかなぁ。
ロバート・エルスウィットのカメラは、そつない感じで、薄味でしたけどね。
物語の調整の上手く、猪突猛進で疑問をはさむ余地をなくさせるフィリップ・ノイスの演出との相性もよかった。
いいお出汁が出てるB級アクションでしたよ。