で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1844回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『潔白』
平和な村で起きた集団殺人事件で容疑者となった母を救おうと弁護士となった娘が捜査する法廷サスペンス。
ドラマ『黄金の私の人生』のシン・ヘソンが映画初主演を果たした。
母に、ベテラン女優のペ・ジョンオク。
監督・脚本は、今作がデビューとなるパク・サンヒョン。
コロナ禍の中で、本国でも公開が延びていたが、スマッシュヒットを記録した。
物語。
幼少時から父に虐待されてきたジョンインは、現在はソウルで弁護士として活躍していた。
ある日、父が亡くなり、葬儀の場で農薬入りマッコリによる殺人事件が起きる。
多数の犠牲者を出したその事件の容疑者は、ジョンインの母ファジャだった。
それを知り、十数年ぶりに帰郷したジョンインは勾留中の母と面会するが、母はショックのあまり急性認知症を発症し、娘のことを覚えていなかった。
母の潔白を証明しようと事件についてジョンインは調べ始める。
出演。
シン・ヘソン (アン・ジュンイン)
ペ・ジョンオク (チェ・ファジャ)
ホ・ジュノ (市長)
ホン・ギョン (ジュンス)
スン・シンムン
パク・ジンヨン (裁判長)
テ・ハンホ (ヤン)
コ・チャンソク (雑貨屋の叔父)
パク・チョルミン (ファン・バンヨン)
キム・スヒョン
チャ・スンベ (ナ・イルジョン)
シン・インギョム (検察官)
ハン・ソンヨン (チョイ・ソクグ)
スタッフ。
撮影:Yoo Il-seung
編集:Yang Dong-yeop、Kim Jae-bum
音楽: リー・ジウスー
『潔白』を鑑賞。
現代韓国、殺人事件で容疑者となった母を救うため弁護士である娘が抗う法廷サスペンス。
父が死に、母が容疑者、弟が自閉症、娘が重荷を背負うようで、その圧が事件に向かう物語力。丁寧に積み上げられていく成長ではなく事実による変化。人の思いの強さ。正義とは法とはなにか。謎を追わせつつ、いいタイミングで問うてくる。いくつもの愛と欲望が裁かれる裁判。構成の巧さに舌を巻く。
壊れた心と壊れまいとする正気の芝居を安心して見て、劇に没頭させてくれる。シン・ヘソンの揺れ、ペ・ジョンオクの暮れ、ホ・ジュノの荒れ。そこを飾る韓国映画のバイプレイヤーのいい顔がこんもり。名前がわからぬが同窓生警官の大きさ。私服が文化系でダサい奴は信用できるの法則。
ああ、キャストの名前が知りたくなるのはいい芝居を見た証拠だし、見てるときに気にならないのはさらによい証。
スジ(脚本)、ドウサ(芝居)に加えて、ヌケ(撮影)もよい。それを支える、美術、ロケ地もちゃんとちゃんと。画面が厚い。顔だけ、フックだけに頼りません。
どストレートに、ニューヨークマラソン!!でこれを語るクラシカルさも味となる。一応、田舎ホラーでもある。
まとめあげた演出に脱帽。デビュー長編の質が高すぎんだろ韓国映画界。
劇が檄を呼ぶ。最優をつけたい秀作です。ちゃんと公開してよ。こういう映画が埋もれないために紹介短評を書いてるんだ。
劇の薬という意味での劇薬。
韓国の得意の自家薬籠の薬がぞろぞろ入った薬箱。
辛くとも後で見られるように残したくなる湖作。
おまけ。
原題は、『결백』
英語題は、『Innocence』。
『潔白』。
2019年の作品。
製作国:韓国
上映時間:111分
配給:「潔白」上映委員会
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2021」上映作品。
パク・サンヒョンは、助監督やプロデューサー、短編の監督など映画界での経験は長いそう。
参考にした作品の一つは、ポン・ジュノの『母なる証明』と言っている。
ネタバレ。
好みの台詞。
「本当に、あなたの母さんは潔白だとお思いですか?」「母はもう十分に罰を受けました」
最初に捜査を頼んだ刑事と勤め先の弁護士事務所のことは忘れられちゃうけどね。
ラスト、ジョンスが写真を撮っているのがいいのよね。
あの湖には殺されたお父さんがいるから。