菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

眠る場所を探す。 『クライ・マッチョ』

2022年01月28日 00時00分31秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1998回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『クライ・マッチョ』

 

 

老カウボーイが友人の息子をメキシコからアメリカに連れていこうとする現代西部劇ドラマ。

巨匠クリント・イーストウッドが、N・リチャード・ナッシュの同名小説を監督・主演で映画化。

共演は、新鋭エドゥアルド・ミネット。

 

 

物語。

1979年のアメリカ、テキサス州。
孤独に暮らす元ロデオスターのマイクは元雇い主から、メキシコの元妻と暮らす息子ラフォを自分の元に連れ戻してほしい、と依頼される。
半ば誘拐のような訳あり仕事だったが、マイクは息子が虐待されていると言われ、渋々ながらも引き受ける。

原作:N・リチャード・ナッシュ
脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ

 

 

出演。

クリント・イーストウッド (マイケル・マイロ/マイク)

エドゥアルド・ミネット (ラフォ)

ドワイト・ヨーカム (ハワード・ポーク)
フェルナンダ・ウレホラ (リタ)
オラシオ・ガルシア=ロハス (アウレリオ)

ナタリア・トラヴェン (マルタ)
アイヴァン・ヘルナンデス (ルーカス)

 

 

スタッフ。

製作:クリント・イーストウッド、アルバート・S・ラディ、ティム・ムーア、ジェシカ・マイアー
製作総指揮:デヴィッド・M・バーンスタイン

撮影:ベン・デイヴィス
プロダクションデザイン:ロン・リース
衣装デザイン:デボラ・ホッパー
編集:ジョエル・コックス、デヴィッド・コックス
音楽:マーク・マンシーナ

 

 

『クライ・マッチョ』を鑑賞。
79年メキシコ、老いたカウボーイが恩人から息子を取り戻してくれと頼まれる現代西部劇ドラマ。
巨匠クリント・イーストウッドが、N・リチャード・ナッシュの同名小説を監督・主演で映画化。
実は、80年代に先にN・リチャード・ナッシュの脚本があり、その後小説化された。イーストウッド監督作(主演は別)として映画化も動いていたが頓挫。ゆえに、どこか古臭さがあり、『グラン・トリノ』や『運び屋』のニック・シェンクは入って現代性も加えられている。
古さを込みで味わうものとなっている。クリント・イーストウッドのやり残したものを齢90にして取り戻したと言ったところか。
今だからゆるいが、70年代くらいの映画はこういうのも普通にあったのよね。
劇中はどうも60代くらいの感じで描かれているものの90を超えたクリント・イーストウッドなので、そこに新たなテーマ、老いをこえた達観のようなものが見えてくる。
ひたすら、老いと若さが強調されており、そのライトモチーフ演出はあからさまで、オンボロ車、犬、孫、野生の馬、老いてもまだ世界は広がっている、壊れてもやれることが示される、老いへの応援歌になっている。現実のクリント・イーストウッドの老いが画面に映ることの説得力が違う。さすがに乗馬のカットは非常に少ないし、何とか乗っている感じはあるけども、乗っているだけでもすごいと言わせる何かがある。
なので、クリント・イーストウッドや老いへの思いが強い方とそうでない方で、見え方はまるで変わる。
中年は愚かで、若さには未来があり、老いても歩んできた道は己を助ける。でも、まぁ、過去に栄光を築けるほどの男ならばという感じはしないでもない。
エドゥアルド・ミネットは、前半は硬いが、後半はなじんでくる。
撮影はMCUの仕事で知られる大作を手掛けるベン・デイヴィスだが、そのコントラストの強い夜と光が和ら無い昼のくっきり対比された画が美しい。
タイトルのマッチョは、スペイン語の方で、強い男の意味であり、劇中の雄鶏の名前でもある。
明確にマッチョも孤独には勝てない、というメッセージがあるが、マチズモを肯定しつつも、強さでは何も得られないというメッセージが語られる。男性性は虚勢に過ぎない。それは、最後の決断にもそこが反映される。
鶏にさえ勝てないし、それは鶏冠に過ぎない。
二つの意味で、女に弱い、とも示される。否定をしているようで、実はマッチョはモテるのだ。ラフォも孫にモテている。
だが、そこに飲まれてはいけないという意味での現代性はある。
寝たり、横たわるシーンが7回もある。これは、寝る場所探し=ホーム探し=死に場所探しも見えてくる。
だから、ラストの行動に意味が見える。
アメ公と字幕では出るが、グリンゴと言っている。これは手塚治虫の遺作の一本『グリンゴ』と同題だったりする。アメリカ人を小ばかにする言葉でもあるが、よそ者と言う意味だそう。
この映画でよそ者とは誰か、そこを軸にすると色々見えてきて面白い。
そういう意味では現代が透けては見えてくる。
ネットで見た邦題に『マッチョはつらいよ』というのがあった。
『ランボー:ラストブラッド』とも似ている。二人のマッチョが選ぶ道を比べるのも一興。まぁ、御大に比べれば、スタローンもまだ若いと言うことになる。
マッチョ売りの少年の火が燃える馬作。


 

 

おまけ。

原題は、『CRY MACHO』。
『泣く雄』。

 

2021年の作品。

 


製作国:アメリカ
上映時間:104分
映倫:G

 

 

配給:ワーナー・ブラザース映画  

 

写真の説明はありません。

 

 

 

 

ややネタバレ。

この脚本は約70年代に書かれて以来、何度か映画化が試みられた。
クリント・イーストウッドは1988年に依頼されるが、『ダーティハリー5』のために頓挫。1991年、ロイ・シャイダーを主役に、2011年、アーノルド・シュワルツェネッガーを主役に企画が動いたことがあった。

N・リチャード・ナッシュは2000年に亡くなっている。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

『グラン・トリノ』は少数民族の移民だったが、今作はプエルトリカン。
ラストは、まるで反転したかのよう内容になっている。

 

雄鶏のマッチョは11羽で演じられたそう。

 

『運び屋』をもじった小ネタがある。

 

クライを「泣く」では「啼く」ととらえると、雄鶏マッチョがコケコッコーと啼く話って感じでもある。
終わりだと思う男と少年に目覚めよ、朝が来たと告げる物語ってことね。

 

 

 

 

 

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