菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

これは映画である。これは現実である。 『ある女優の不在』

2020年01月04日 00時00分10秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1642回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『ある女優の不在』

 

 

 

あなたに助けを求めたが何もしてくれなかったと言う女優志望の若い女性の自殺動画を受け取った有名女優がその動画の女性を探しに田舎町に著名映画監督と向かうミステリー・ドラマ。

 

2018年のカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。

 

主演は、『ブラックボード 背負う人』のベーナズ・ジャファリ。

 

監督・脚本・出演は、イラン政府より20年の映画制作を禁じられながら、映画をつくり続ける、『これは映画ではない』、『人生タクシー』のジャファル・パナヒ。

 

 


物語。

イランの映画監督ジャファル・パナヒが、マルズィエという少女の自殺動画が届いたと人気女優ベーナズ・ジャファリに見せた。
彼女は、女優を志して芸術大学に合格したものの、家族の裏切りでその道を絶たれたが、諦めきれず。憧れのベーナーズに家族の説得を依頼しようとコンタクトを試みたが叶わなかったため、絶望し、自殺を決意したと動画の中で述べていた。映像は彼女が首にロープをかけたところでその落ちた衝撃でスマホが落ちて、最後の姿は映っていなかった。
ベーナーズはショックを受け、ことの真相を確かめるべく、マルズィエが住んでいたイラク北西部のサラン村に向かうパナヒに大作映画の撮影を抜け出し、同行する。

 

 

 

出演

ベーナズ・ジャファリが、本人役。
ジャファル・パナヒが、本人役。

マルズィエ・レザエイが、本人役。
ナレゲス・デララムが、マルズィエの母。 

 

 

 

スタッフ

製作は、ジャファル・パナヒ。

撮影は、アミン・ジャファリ。

 

 

 

 


若い女優志望者の自殺動画で責められた人気女優がこの動画の理由を求め、田舎町に映画監督と向かうミステリー・ドラマ。
ジャファル・パナヒの新作、それだけで映画への愛に満ち溢れてしまう。しかも、自分のスタイルに、師匠であるアッバス・キアロスアミの『そして、人生はつづく』を踏襲して、女優でイランの過去現在未来を語るのだから。
つまり、『これは映画である』。
圧倒的な物語と何も進まないグダグダの時間。でも、そこにこそ因習や文化や生活が染み入っていて、そこを突破する難しさを体感してしまう。
いつもながら撮ってしまうカメラはそこにあるものを見つめて、世界を時間を見通させる。でも、そこにカメラはないの、あなたが見ているの。車があるから遠くまで行けるけど、ちょっとそこへいくには軽やかにはいかないの。歩くあなたに寄り添えないの。
夢を見たまま現実を生きるには、目を覚まされることが多すぎる。でも、だからこそ夢を見てる。見ていると伝えること。言葉で行動で演技で映画で絵で日々で嘘でホントで。
いつかパリに行きたいと口にするレベルでイランの田舎町を存在として、あなたの生活の空と繋げてしまう。ああ、人間て、やっぱり人間。
フレームを四角い穴が開いたガラスはめ込みの壁にしちゃう皮作。

 



 

 

 

 

 

おまけ。

原題は、『Se rokh』。現代は、アラブ系の言葉をアルファベットに置き換えた言葉(ローマ字で書かれた日本語の方言のようなものかと推測)らしく、調べても出てこない。

映画内でも、ちょうど言語が入れ替わる地域の村が舞台なので、トルコ語など複数の言語が出てくることでコミュケーションが複雑になっている。

 

英語題は、『3 FACES』。
『三つの顔』。

 
邦題はちょっと哲学的にしたことで、テーマをぶれさせてしまった気もするし、深めた気もする。シンプル過ぎると今の日本じゃ埋もれるしなぁ。前作『TAXI』が『人生タクシー』になるわけだし。




 
 
 
 

製作国は、イラン。
上映時間は、100分。
映倫は、G。



 

イラン政府より20年の映画制作を禁じられたんは、緩和されたようで、今作はえいがとしてつくられた模様。国内で公開されたか不明だが。

 

 

イラン社会は、女性の立場がいまも抑圧されている。イスラム教は女性の立場に立ちして厳しいからなぁ。

 

 

 

 

 

現在の女優として、・未来を象徴する3人の女優の思いがけない人生の交錯を通してイラン社会における女性たちの境遇と、

 

 

 

 

 

ネタバレ。

ベーナズ・ジャファリが現在を象徴、マルズィエ・レザエイが未来の女優で、過去の女優としてシャールザードを出し、時代を表現している。

シャールザードは、国民的女優だったが、イラン政府により女優を引退させられている。
劇中の彼女は、話には出るし、後姿は見えるが、本人かどうかは不明。

激動する時代の波に翻弄されてきた芸術家たちの苦闘を描き出しているが、それはそのまま、ジャファル・パナヒの姿でもある。

 

『3FACES』には、3人の女優の顔だけでなく、一人の3つの側面という部分もあるのではないか。
加えて、ベーナーズ、パナヒ、マルズィエという最後の3人のことを指すともとれる。ある意味で、解釈でも3つの面があるとも言える。
多面的な物を含ませるためのシンプルなタイトルだろう。
原題はどう意味なのか知りたいなぁ。

 

 

 

『ある女優の不在』の邦題は、若い女優は自殺し、現役女優は撮影をすっ飛ばし、かつての女優は記憶にもない、不在にしているが実際は存在しているテーマを凝縮させたのかもしれないね。
情報が多すぎて健忘症にならざる得ない現代では、少しくさびを打っておかないと、不在になってしまうかもしれないものね。
ケン・ローチの新作『家族を想うとき』でも不在が扱われていた。
大きな力は、人を分断して、忘れさせて、団結を阻んでいるのかもしれないね。

 

 

 

 

最後の方の割れたフロントガラスのシーンの編集に映画がある。
それは行き場のない怒りであり、その怒りが力を持つことでもあり、その醜さでもある。

 

クラクションを鳴らす。見えない相手がいるかもしれないから。一本の道をぶつからないで進むために。

 

 

 

 

 

 

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