で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1217回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ありふれた悪事』
軍事政権末期の韓国を舞台に、国家の都合で犯人を捏造してしまう政権の恐るべき実態と、その陰謀に加担してしまった平凡な刑事の運命を描いた社会派サスペンス。
主演は、『リバイバル 妻は二度殺される』のソン・ヒョンジュ、共演にキム・サンホ、チャン・ヒョク。
監督と脚本は、新鋭キム・ボンハン。
物語。
1987年、韓国。
正義感も国家への忠誠心も強い刑事カン・ソンジンは、口のきけない愛する妻と片足の悪い息子と貧しいながらも平凡でごく普通の暮らしを送っていた。しかし、家族のために、昇進を目指し、ある殺人事件の犯人であろう男を逮捕しようと躍起になっていた。
しかし、それとは別にクリーニング店に血の付いたシャツを出した男がいるという情報を得る。
人手が足りないので、新人を相棒に両方を同時に追うが、目星をつけていた方には逃げられてしまう。
上からの圧力で、とりあえず、血の付いたシャツの男テソンを殺人事件の重要な容疑者として、報告することになる。
ある日、ソンジンは大統領直属の情報機関である国家安全企画部の室長ギュナムに呼び出される。
ソンジンが逮捕した男が、別件の事件であり、国中を震撼させている連続殺人事件の犯人であろうと告げられる。
さらなる昇進の種を手に入れたとソンジンは、テソンの自白と追っていた殺人犯と同時に追い始める。
一方、ソンジンの親友アニキと慕う敏腕の新聞記者ジェジンは、テソン犯人説に疑いを抱き始め、独自の取材を始める。
出演。
ソン・ヒョンジュが、刑事のカン・ソンジン。
チャン・ヒョクが国家安全企画部室長のギュナム。
キム・サンホが、新聞記者のジェジン。
このカッコよさに惚れますぜ。
ラ・ミランが、ソンジンの妻のジョンスク。
チョン・マンシクが、幹部のソ・シンヨン。
オ・ヨンアが、カメラマンのソンフイ。
チョ・ダルファンが、容疑者のテソン。
ほかに、チェ・ユンソ、チ・スンヒョン、など。
スタッフ。
撮影は、キム・ソンチョル。
編集は、チェ・ミンヨン。
音楽は、チョン・ジノ。
軍事政権末期の韓国で政府による連続殺人犯の捏造に加担してしまった刑事の顛末を描くサスペンス。
無力な市民のささやかな生活を押し流す権力の一部として使われる恐ろしさと抗うことで蹂躙される怖ろしさに血が逆流。
悪魔は甘く友のふりをし、真の友は苦く強敵の顔をする。
映画的隠喩や展開や突破が少々あからさまではあるが物語としての見やすさにもつながっている。
当時の韓国の前知識が少々でもあると飲み込みやすい。
ソン・ヒョンジュが凡百を超えた梵天の演技を発揮し突出。
悪が小綺麗で善は小汚いキャスティング。隣人のような役者が歴史を纏い、飛び出て、ありふれた顔の色が劇的に変わる戦慄に凍る。
キム・ボンハンの渾身のデビュー作。
幸せな首輪を自らつける安心と正しさの天秤に揺れ続ける。
当たり前に声を上げる勇気の価値を問う。
普通であることの困難に窒息する民作。
おまけ。
英語題は、『ORDINARY PERSON』。
原題『보통사람』、英語題『ORDINARY PERSON』で『普通の人』。
テーマ性は強いけど、似た名作があるしね。
邦題かなり好みです。
頭韻もいいですよね。
上映時間は、121分。
製作国は、韓国。
受賞歴。
2016年のモスクワ国際映画祭にて、NETPAC Award(最優秀アジア作品賞)をキム・ボンハンが、主演男優賞をソン・ヒョンジュが、受賞。
キャッチコピーは、「その国で“普通の人”は正義に殺される」。
韓国で起こった実際の連続殺人事件をモデルにしているそう。
たぶん、華城(ファソン)連続殺人事件ではないか。『殺人の追憶』の題材となった事件で1986年頃に発覚した。
ネタバレ。
最初の殺人事件と連続殺人の区別がちょいとつきにくい。
最初のは連続殺人の一つだったのか?
最後に玉砕戦の生き方が多くの韓国映画的な暴力に行かないのがこの映画の個性ですね。
民衆に肩入れさせる強み。