ワタナベエンターテインメントDiverse Theater「物理学者たち」 本多劇場 2021.09.23 14:00~
「物語の舞台は、サナトリウム「桜の園」の精神病棟。そこに入所している3人の患者-自分をアインシュタインだと名乗る男、自分をニュートンだと名乗る男、そして「ソロモン王が自分のところに現れた」と言って15年間サナトリウムで暮らすメービウスと名乗る男-三人は「物理学者」であった。
そのサナトリウムで、ある日看護婦が絞殺された。犯人は“アインシュタイン”を名乗る患者であり、院長は放射性物質が彼らの脳を変質させた結果、常軌を逸した行動を起こさせたのではないかと疑っていた。
しかしさらなる殺人事件が起き、事態は思わぬ方向へ動くのであった・・・。」(公式HPより)
ここのところ、量子力学に興味があって、アインシュタインの相対性理論とか、そういうことを
少しかじりだしているので(といってもまだ、全然良く理解できていない・・・)
「物理学者たち」というタイトルに惹かれて、チケットをゲットしました。
でも、物理の話はほとんどなく・・・当たり前か。
E=mc2というアインシュタインの方程式しか出てこなかったけど。。。
でも、これが、この話のキモになっているわけですよね。
1幕と2幕で全然様相が変わる芝居で、なかなか面白かったです。
舞台はサナトリウム「桜の園」。ここのリビングで看護師が絞殺され、警察が現場を調べているところから始まる。
犯人はここの患者で、殺された看護師が担当していた、物理学者の男。彼は自分がアインシュタインだと名乗っている。
そして精神疾患なので逮捕することができない。事情をききたくても、現在、バイオリンを弾いていて、弾き終わるまで
聞くことができない状態で、刑事はいらいらしている。
そこに、別の患者、自称ニュートンが入ってくる。物理の話を語り、酒を飲んで立ち去っていく。
次に、サナトリウムの院長がやってくる。刑事はここは危険なので、看護師ではなく、屈強な男性を置くべきだと主張する。
ここにはもう一人の患者がいるが、彼には別の棟に移ってもらうことを考えていた。
刑事が去った後、院長のところに、もう一人の患者メビウスの元妻とその再婚相手と子供がやってくる。再婚相手の事情でマリアナ諸島に
転居することになるので、最後にメビウスに会いに来たのだった。
「ソロモン王が自分のところに現れた」と主張するメビウスはかなりボケていて、妻や子供のことをはっきりと覚えていない。そして途中で怒り出し、ローゼたちを追い返してしまう。
そこに、メビウスの担当の看護師モニカが来る。モニカはメビウスのことが好きで彼に結婚を申し込む。二人は抱き合い、結婚を
認められたかと思いきや、メビウスはモニカを絞め殺してしまう。
ここで1幕終了。
2幕の始まりは1幕と同じで。。。リビングにモニカの遺体。そしてそれを警察が実況見分を。
刑事は院長に、犯人がわかっていて、そこにいるのに逮捕できないのがもどかしいと言って去っていく。
メビウスがいるリビングにニュートンがやってくる。ニュートンは、自分は実はキートンという物理学者だと
話す。彼はスパイとしてここにやってきたのだった。そこにアインシュタインが来る。アインシュタインも
エルンストという名前で彼も、別の組織からこのサナトリウムにスパイとして来たと話し、
キートンと対立し、銃を向け合う。
キートンとエルンストは科学に対しての持論を展開し議論になる。そこにメビウスも加わる。
3人のところに院長が来て、女性看護師に替わり雇われた屈強な男性看護師によって、彼らを拘束する。
物理学者たちは思想が危険すぎるので、ここに閉じ込めると。。。。
3人の物理学者は、閉じ込められた中で、高級料理やワインを食し、キートンはニュートン、エルンストはアインシュタイン
そしてメビウスはソロモン王と名乗ってそのまま暮らした。
扱っている題材は、かなり硬質で重いものではあるけど、演じている役者さんの雰囲気も相まって、
非常にユーモアたっぷりの芝居だなと思った。
それから、2幕の物理学者3人の口論のシーンは見ごたえがあった。
サナトリウムの患者のふりをしていた3人が、その「ふり」を捨てて、自分たちの本来の目的のために
真剣に口論する。アインシュタインとニュートンは東西の大国で、そしてメビウスは科学を権力が
利用すべきではないという純粋な物理学者を表しているのだろうなと。。。感じたんだけど。。。
話の時代背景が1960年代ということで、東西の緊張が高まっているころ。
アインシュタインの方程式を利用しての核開発がさかんになっているころ。
科学者の自由な研究と、人類の滅亡との匙加減・・・
いつの時代も同じ課題があると思う。
また、その科学を政治・権力がどう利用するか。それも大きな課題。
それは、今の世の中にも通ずることで。
核開発は今も続いているし、新型コロナウィルスも科学が作り出したという説もあるし。。。
科学技術は発達したことによる、新たな問題もどんどん出てくる。
新しい技術の研究開発と、その利用。。。本当に難しい問題。
かといって、サナトリウムの院長のように、こういう技術者は危険だから、
幽閉してしまおうというのも危険な発想としか思えない。。。。
そんないろんなことを考えさせられた舞台でした。
とっても面白かった。
気になったキャストの感想
院長の草刈民代さん
最初、誰だかわからないくらいでした。
草刈さんと言えばバレエのイメージが強いから、背筋を伸ばした立ち姿って感じなのですが、
背中が曲がっているおばさんという感じ。。。え?ってびっくりでした。
それと同時にさすがだわ~と。
癖のあるサナトリウムの患者たちに負けない個性だった。
メビウスの入江さん
入江さんの怪演。。。いやあ。引き込まれちゃいました。
賢いのかボケているのか、狂ったふりをしているだけなのか。。。。
そして2幕の口論のシーンでは、非常に優秀で、倫理的な科学者を
演じていて。。。いろんな引き出しを1つの芝居で見せてくれました・・・
刑事役の坪倉さん
「カメレオンズリップ」の不思議な人の役。。。で舞台で映える~と思ってたけど、
この役もなかなかでした。ある意味、出演者の中では普通の感覚を持つ刑事さんなんだけど。。
だけど、坪倉さんが演じると、なんだか不思議な人に見えるのはなぜ?
声がとってもいいので、もっともっと舞台に出てほしいです
ニュートンの温水さん
ずるいよね~出てくるだけで、変な人だし。
ちょっとしたしぐさだけで、笑いを誘うし。。。
「ペイジルタウン」のときのような役も好きだけど、こういう変わった人を
演じる温水さんも可愛くて好きです~
アインシュタインの中山さん
たぶん。。。初めて拝見するんじゃないかと。
阿佐スパの方で、名前は知っていましたが。。。
人を殺してしまったのに、、、バイオリンのことを考えているヘンな人。。。
でも、この方も2幕の口論のときは、全然違う人になってて、
すごいな~と・・・
皆さん、芸達者な方ばかりで見ごたえ抜群でした。
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