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俳優・勝地涼くんのこと。

『犬顔家の一族の陰謀』(2)-1(注・ネタバレしてます、か?)

2008-12-21 02:05:08 | 犬顔家の一族の陰謀
パンフレットの記述と一年以上前の記憶を頼りに、箇条書きレビューしてみます。おそらくシーンの順番がかなり狂ってる気がします。ご容赦ください。


・いきなりシャンデリアが吊るされた洋風の部屋から幕開け。
一瞬「『犬神家の一族』が大もとのはずなのに何事!?」と思いましたが、すぐに『オペラ座の怪人』のパロディだとわかる。映画だけでなくミュージカルもガンガンバロってるんですね。
最初「リンチンチン」という名前(この名前を叫ぶときの裏返った声が最高)の元ネタがわからなかったんですが、その後映画『ALWAYS 三丁目の夕日2』を見たさいに「名犬リンチンチン」なる語句が出てきたので調べてみたら、そういうタイトルの映画があった模様。なるほどー。

・ストーリーは『オペラ座の怪人』から『キャッツ』パロへと移行。この流れに「このお芝居、どこへ行く気なんだろう」と思っていたら殺人事件が起こり、そこから今までの展開が劇中劇であったことが明らかに。
舞台上で殺された女優が犬顔家の一員だったことで、やっと本筋への合流点が見えてきます。
スクリーンに映像を映す形で輪転機の回転と新聞の見出しを見せるやり方は、ドラマやアニメの古典的演出パターンのパロディってことでいいんでしょうか。

・スクリーンを使って、黒地に出演役者の名前を白抜き?で紹介する―役者名が途中で直角に折れている妙な表示法で―のは映画『犬神家の一族』のパロディ。
音楽も大野雄二氏による有名な『犬神家の一族』のテーマ曲ですね。舞台を見る前に一応映画を見て予習しておいた甲斐があった。
ところで開演前ロビーで、「ルパン三世のテーマ」が流れていたのは何だろうと思ってたんですが、大野雄二作曲つながりということのようです。他の曲も全部大野メロディだったらしいですし。
この大野作品メドレーから一転して「ジューダス・プリースト」の曲(新感線の開演時の定番)が響き渡ったときはシビれたなあ。

・自分の名前がスクリーンに出たところで役者さんが一人ずつ登場し軽くパフォーマンス。
野見山玉男=勝地くんはテニスのラケットをもってさわやかに素振りをしていました。玉男がテニスをする場面は本編に登場しないのでなぜテニスなのかちょっと不思議。
そして演出家・マックス犬顔役の池田成志さんが登場のさい、前方に灰皿を投げつけると後ろから巨大な灰皿が飛んできて後頭部にぶつかる、というネタに爆笑してしまいました。これ若かりし頃の蜷川幸雄さんがよく怒って灰皿を投げていたというエピソードが下敷きなんですよね?

・キャスト名の中に、(映画で金田一を演じている)石坂浩二さんの名前が出たのに「おお!ゲスト出演してるのか!?」と期待したら、「・・・は出ない」と続く(笑)。
上記の灰皿直撃シーンもそうですが、あの物悲しいテーマ曲と演出のギャップが可笑しさを倍増させている。

・主人公・金田真一(宮藤官九郎さん)初登場。そのボサ髪と貧相な(誉めてます)外貌がすごく金田一のイメージに叶っている。そのうちドラマなどで本家の金田一耕助も演じてほしいなあ。絶対ハマると思うんですが。
そば屋?の隣りを間借りして探偵業とそば屋の電話番を兼任してるあたりも金田一っぽい感があります(本家にそんな設定はないですが何か似合いそう)。

・助左衛門助介(橋本じゅんさん)死去の場面。犬顔家のメンバー+玉男が本編初登場。
今公演の目玉(?)・じゅんさんの日替わり物真似が炸裂。ダッチワイフ振り回して暴れる場面といい・・・自由な人だなーと感じさせます。
実は非常に緻密な計算に基づいたお芝居だったりするのかもしれないけど。

・オープニング場面で分かってたことではありますが、玉男の髪が思ったより明るい色なのに驚いた。パンフレットとセットの玉男ブロマイドが黒髪ぽかったのでてっきり黒髪で演じるのかと。
そういえば公演前に行われた記者会見写真?でも明るい茶髪だった。七三分けの髪型と舞台メイクもあいまって、宝塚の男役の人みたいに見えたものです(写真こちら)。

・助比代(礒野慎吾さん)が黒い覆面を取ると、その下からは白い不気味なゴムマスクが!と書くと原作通りですが、犬耳(+犬ヒゲ)がついてるだけであんなに可愛らしくなるとは。耳がピンと立つシーンとか最高です。
これが実は誤って整形された素顔ということで、なぜ整形が失敗したかの経緯が語られるところなどもうくだらなすぎて。リオのカーニバルって何よ(笑)。
そして何よりも「助比代(すけぴよ)」という名前があまりにもツボでした。この先「すけぴよ」って名前が呼ばれるたびに、どんな真面目なシーン(そんなものは皆無に等しいですが)だろうと漏れなく噴き出してました。

・これも日替わりネタな「助比代の吐き出したガムがどこへ転がるか」。
結構みなさん本気で阿鼻叫喚してるような気がします。そりゃ人の吐き出したガム当てられたかないわな。

・ロベール(古田新太さん)とエマニエル(保坂エマさん)の父娘が登場。
この場面に限りませんが古田さんの台詞まわしは淡々と気がなさそうで、今思いついたことをそのまま喋ってるかのように響く。それが妙なおかしみを醸し出している(後半のヘアヌード写真うんぬんのくだりなど特に)。
リアルに内面から発せられた言葉のようで、作り物の匂いがしない。演技に見えない演技というのが一番難易度が高いと思うので、さすがは古田さんだよなあと感心してしまいました。

・溺れるエマニエルを助けに出た糠橋さん(インディ高橋さん)のボートが大爆発。
金田が激怒する糠橋さんを評して「糠橋さん大爆発」ってヘンな表現だなあと思ってたら、ここに繋がる伏線だったと後々にわかる。
スクリーンに大写しになった、爆発で吹き飛ばされる糠橋さんの図には爆笑。

・「誘われている!」で始まる玉男オンステージ。
一人芝居、ひたすら独白(しかも内容がしょーもない)で数分観客の興味を繋がなくてはいけない、演技上最大の難所と言えるシーン。ですが、思い入れ、というか思い込みたっぷりのオーバーアクションなハイテンション演技で笑いをもたらしてくれました。
勝地くん自身もしばしば語っているように、シリアス芝居以上にコメディは難しい。しかもこれだけ濃い出演者揃いの中でも埋もれちゃっちゃいけないわけで。
脚本・演出のいのうえさんの「(勝地くんは)一服の清涼剤」というコメント(こちら参照)を読んで、個性の薄い綺麗どころといった役なのかなと思ったりもしてたんですが、どうしてどうして。
「さわやかだけがとりえ」と言いつつ、自らそう宣言しちゃう段階で十分濃いし変だよ、という愛すべきおバカキャラクターに仕上がっていました。
改めて彼は「出来る子」だなあと感じたものです。

(つづく)

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