サイエンス好きな男の日記

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太陽光発電の売却は得なのか(2)~売却するとしたらいくらで売却するべきか~

2022-06-25 03:08:16 | 太陽光発電

前回、中古太陽光発電システムは結構いい金額で売却できそうであることを記載しました。

そのため、持ち続けた場合と売却する場合でどれだけ収益に差が出てくるのか。売却したほうが収益が大きいなら売却するべき、と判断できます。

その際にポイントとなるのは、太陽光発電のリスクとしてどれほどを見込むのか、売却後の想定利回りとしてどれくらいを想定するのか。これらの多くのパラメータを決めることで、どちらの場合に収益が大きいかが決まるでしょう。

以下では、できるだけ正確に計算を行い、売却してもよいと判断できる売却額を算出したいと思います。

 

売却しない・する場合の大まかな前提としては以下の通りです。

  • 売却しない場合20年間運用し、その後は発電システムを売却する。なお、売却額は0~利回り12%の範囲とする。
  • 売却する場合:FIT起算日からt年後に売却し、その後は税引後想定利回り p で運用する。

 

以下では、価格はすべて購入価格で規格化するものとします。つまり、購入価格は1とします。

売却価格:x, 土地価格:g, 年間売電収入:r, 年間経費:c, 修繕費:0.15α, 特殊経費:0.2βr
税率:q, 売却時の税率:q', 売却後の税引後想定利回り: p,  減価償却累計額:k,  長期譲渡税:h(x)
FIT開始から売却するまでの期間(年):t
FIT期間終了後の売却:25rγ/12

もし売却時に仲介手数料がかかる場合には、仲介手数料を差し引いた金額を売却価格とします。

上記のパラメータについて簡単に説明します。

  • 年間売電収入や経費等すべて消費税込みです。
  • 修繕費としては主にパワコンの修理費用です。α=0~1 を想定しています。α=1の場合、0.15となり、例えば山梨の場合には、2500*0.15=375万円となります。これは最悪、故障によるパワコンの全交換を想定しています。
  • 特殊経費とは、インボイスによる益税分の損失や出力制御抑制です。インボイスは消費税10%なので売電収入の0.1です。出力制御抑制は不確定です。以前は年間30日という上限がありましたが、それも撤廃されました。仮に30日なら、30/360=0.083です。そこでとりあえずここでは売電収入に対して最大0.1として考えます。よって、これら2つの効果を足すと最大で0.2ですので、特殊経費は 0.2βr とし、β=0~1 を想定します。
  • 税率は所得税・住民税の合計です。また、売却時には売却益が加わり税率が上がる可能性が高いため、売却時の税率はq'として、あえて通常の税率とは区別しました。
  • 減価償却累計額とはFIT起算日からt年後での太陽光発電システムの減価償却累計額です。
  • FIT期間終了後は、土地売却と設備撤去費用が同額であればγ=0,  利回り12%で売却できる場合はγ=1とし、γ=0~1を想定します。
    FIT期間終了後も電力会社等は買取をしてもらえると考えています。10年以上も先の買取単価はわかりませんが、少なくともENEOSはFIT期間終了後の買取単価を現在提示していて、おおよそ税込10円/kWh~11円/kWhです。
    そこで、仮に11円/kWhで買い取ってもらえると考えると、年間の買取額は、年間発電量*買取単価 = r / 44円/kWh * 11円/kWh = r / 4
    よって、利回り12%での売却を想定すると売却額は r / 4 / 0.12 = 25 r /12 となります。
    また、本来であれば、売却に伴う長期譲渡所得税や仲介手数料なども発生しますが、便宜上、その効果もすべてγに含まれていると考えます。つまり、利回り12%よりももう少し高く(年間売電収入は変わらないため利回りは小さく)売れるもののそこから各種税金が引かれて最終的に12%になったものと仮定します。

 

次に、売却しない場合にFIT終了までの収益と売却する場合に同じくFIT終了までに得られる収益を計算します。

売却しない場合の収益

A = (r - c- 0.2βr)(20-t)-((r-c-0.2βr)(20-t)-k-0.15α)q-0.15α + 25rγ/12・・・①

これは、FIT残年数の間に得られる収益(売電から経費を引いた額)から税金(所得税・住民税)および修繕費を引いています。そして、FIT期間終了後、売却によっていくらかを手にして終了します。

売却する場合の収益

B(x) = x-h(x) + (x-h(x))p(20-t) ・・・②

売却で得られた資金から長期譲渡税を引いた金額が最終的に売却によって手元に残った資金です。これをFIT終了時まで税引後想定利回りpで運用したとします。これによって得られる収益がB(x)です。ここでの運用とは満期後に元本が償還される社債をイメージしています。

h(x)は長期譲渡税です。正確には特別控除50万円があるのですが、ここでは省略します。ちなみに、不動産であれば、税率はおよそ20%ですが、今回は太陽光設備なので、所得税・住民税の税率の1/2(長期)になります。(つまり、分離課税ではなく総合課税)

参考URL) 国税庁
譲渡所得の計算のしかた(総合課税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm

よって、

h(x) = 0.5 q’ (x-g-k) ・・・③

売却する場合としない場合で収益が一致する場合:

A=B(x)=x-h(x) + (x-h(x))p(20-t) より、p=(A-(x-h(x)))/((20-t)(x-h(x)) ・・・④

 

売却する・しないの損益分岐となる売却後想定利回り(税引後)

次に、売却後の想定利回りがどれほどあれば売却したほうが良いのか調べます。

具体的な数値を代入していきます。

以下ではすべて税率q=0.3、売却時の税率q'=0.43とします。売却時の税率 q' を通常の税率 q 高くしているのは、売却によって得られる長期譲渡所得は分離課税ではなく総合課税扱いにより、売却年の税率が上がってしまうためです。

山梨の太陽光の場合、g=250/2500, r=350/2500, c=13.2/2500, t=7.5, k = (1950-110t)/2500

購入金額は2500万円なので実際の金額を2500で割って規格化しています。

この時の税引後想定利回り p をプロットした図が以下です。

横軸は売却額(購入額で規格化)、縦軸は売却後の損益分岐となる想定利回りです。

4つの実線は(α, β, γ)を (0,0,0), (1,0,0), (0,1,0), (1,1,0) と変えた場合の想定利回りを、
4つの破線は(α, β, γ)を (0,0,1), (1,0,1), (0,1,1), (1,1,1) と変えた場合の想定利回りを示しています。

最も上にある緑の破線(α, β, γ)= (0,0,1) は、故障もなく、インボイスや出力制御抑制が全くない、またFIT終了後も利回り10-12%ぐらいで売却できる、という太陽光発電を継続するには理想的な状況です。

最も下にある青の実線(α, β, γ)= (1,0,0) は、故障が発生しパワコンを新品に全交換、インボイスにより益税を失い、出力制御抑制は毎年5%発生、さらにFIT終了後は土地売却の収入と太陽光発電システム撤去費用が同額であり終了に伴う収入はなし、というかなり悲観的な状況です。

したがって、実際にはこれら2つの緑の破線と青の実線の間にくるだろうと予想します。

 

次に、税引後想定利回りとしてどれくらいで運用できるか、と考えます。

私の場合、太陽光発電システムを売却後に、税引後の想定利回りとして6.4%は固いとみています。その場合、緑破線で 6.4% を見ると売却額は0.9ぐらいです。

つまり、税引後想定利回りが6.4%を実現できる場合、太陽光発電システムを購入額の0.9以上で売却できるなら、太陽光発電が理想的に今後も行われていたとしても、売却したほうが得ということになります。

もし、売却後の税引後想定利回りが5%の場合でも、購入額と同額以上で売却できるなら、売却したほうが得となります。

 

次に熊本の場合:g=150/2000, r=250/2000, c=13.2/2000, t=8.5, k = (1267-109t)/2500

購入金額は2000万円なので実際の金額を2000で割って規格化しています。

この時の税引後想定利回り p ををプロットした図が以下です。

山梨と同様に、緑破線で 6.6% を見ると売却額は0.83ぐらいです。

つまり、0.83以上で売却できるなら、太陽光発電が理想的に今後も行われていたとしても、売却したほうが得ということになります。

 

継続運用と売却の場合の収益差

では、具体的にどれほど得なのか試算してみます。

売却した場合に得られる収益 B(x) を計算するときには、売却後に期待できる税引後想定利回りp=6.4%を仮定したうえで試算します。この値によって、最終的な結論も変わってきます。この根拠としては、私の場合、税引前想定利回り8%(税引後6.4%)の社債もしくは投資用不動産での運用を想定しています。どちらかというと社債のほうがやや収益性が低いため、その社債を念頭に、運用後の想定利回りを設定しています。

 

まず、山梨の場合を考えてみます。

売却しない場合の収益:A

この場合、不確定要素α, β, γ によってFIT終了後までに得られる収益が変わります。
それぞれ 0-1 の範囲として、(α, β, γ) = (0,0,0), (1,0,0), (0,1,0), (1,1,0), (0,0,1), (1,0,1), (0,1,1), (1,1,1) の8つのパターンを試算します。

γ=0

A α
0 1
β 0 1.21 1.10
1 0.96 0.86

γ=1

A α
0 1
β 0 1.50 1.39
1 1.25 1.15

0.86 - 1.5 と幅があり、今後の状況によって売電による収益は倍くらい異なってくる、ということであり、その意味では太陽光も不確定要素は小さくないといえそうです。

一方、売却した場合の収益:B(x) は以下です。(税引後想定利回りp=6.4%を仮定)

継続運用と売却の場合の収益差:B(x) - A は以下です。

山梨では、売却後に税引後想定利回りp=6.4%で運用できるなら、太陽光発電が理想的に運用できる場合であっても0.9 (購入額の90%)以上で売却できるなら売却したほうがいい、ということになります。

つまり、具体的には、2500万円*0.9=2250万円以上で売却できるならそうしたほうがいい、ということになります。

一方、太陽光発電のリスクがかなり顕在化したとしても、0.45以下でしか売却できないなら売却しないほうがよい、ということになります。

リスクがどれほど顕在化するかによって、売却額は 0.45~0.9 とかなり幅が出てきてしまい、損益分岐点を明確に決めることができませんが、言えることとしては2250万円以上で売却できるなら全く問題なし、ということになります。また、希望的観測にはなりますが、0.9で売却できるなら、収益差としては上記グラフから 0.2 ぐらい、つまり 500万円ぐらいはプラスになるのではないか、という気はします。

 

次に熊本の場合も同様に試算します。

熊本の場合は、太陽光発電が理想的に運用できる場合であっても 0.83 以上で売却できるなら売却ということになります。

一方、太陽光発電のリスクがかなり顕在化したとしても、0.4以下でしか売却できないなら売却しないほうがよい、ということになります。

 

つまり、1660万円以上で売却できるなら全く問題なし、ということになります。また、同じく希望的観測にはなりますが、0.83で売却できるなら、収益差としては上記グラフから 0.2 ぐらい、つまり 400万円ぐらいはプラスになるのではないか、という気はします。

 

さらには、今回、固定資産税や各種保険費用は含めていません。これらの効果を含めると、もう少し安くなったとしても今売却したほうがよい、という結論に近づきます。逆に言えば、今回の問題なしという金額で売却できるなら、なおさら売却したほうがよい、といえます。

 

まとめ

山梨の太陽光は2250円で売却できるなら理想的な太陽光発電システムであったとしても売却するべき。
熊本の太陽光は同様に1660万円で売却できそうなら売却する。

前回の冒頭で示したように、山梨の仲介価格、熊本の仲介価格もおおよそこの程度の額であったため、売却が難しい金額でもないと思いますので、今後は具体的に売却を進めていきたいと思います。

なお、仲介価格が上記程度ということは、現在の中古太陽光発電システムの市場価格には今後の太陽光発電のリスクが正しく織り込まれていないように感じました。今後、リスクが織り込まれてくると、価格はもっと下がるかもしれませんね。そういう意味では、今は売り時のように思います。

 

 

 

 

 

 

 

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