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詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

みかん

2024年01月11日 | 

部屋を流れる朝の光の川

その中洲にたたずんで

みかんの皮をむく

皮にくっついた薄皮がむけ果肉があらわれる

まだむかれていないほうの丸い皮の外側に

橙色を消さない透明なしずくがひと粒


こんなつるりとした肌の内側に

こんな涙をためていたなんてとあらわれる明かり

その汁を味わいたいと手にとったみかん

偶然の重なる傾きではじめて見えること

そのときわたしは時間と光のプールを泳いでいた

目はいつも開いている

ただまぶたが

すべてを見ないですむために蓋をしているだけ

ひとみの丸みにやさしく沿うように


涙で覆われている地球

その丸みにやさしく沿って

こぼれ落ちずずっと湛えてられているしずく

いつもうるおっている

無数の情報のプールに浸る

そのうるおい

閉じられることのないまぶた

代わりに夜がゆっくりひと回りする


外側にしかいられないわたしたち

いっしょにいたくて

こぼれるときもその丸みに沿って流れる

瞬きはやさしく

小鳥のまつげのように繊細に

ときどき感じてほしくて

あなたの手の甲にまつげを沿わせる

主に夜

新しい感覚が眠り

親しい感覚がそっと目覚めるじかん

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読むこと、書くこと

2023年11月17日 | 
ほのかにあかく流れていく時間を
日々惜しむことはできるでしょうか
空へ時間へ挑むようにそびえる建物も
冬に向かって早くなっていく一日を
引き延ばそうとがんばっている
わたしはあきらめに似た気持ちで
憧れている

毎日
読むこと、書くこと
特に、読むこと
平らなわたし
無力な人で
感じることしかできない

グラスに残った氷が溶けていく
そこから漏れだした液体を少しずつ飲む
音楽のように
流れるそれを急いで
味わってしまうことはできないの

わたしの読むことにかかる時間は
社会の回り続ける速さに
うまく噛み合わないけれど
わたしはそれで百年二百年を少しのことのように
一日や一瞬をとてもとても長く
光のように旅することを知った
冷たくてあたたかくて

どんなに急いでいても
ひとの時間は変わらない
同じ太い光の柱で
生まれてから死ぬまで焦らずに
触れることのできるもの
たくさんの紙のやわらかさ
どれほどの円を描いたことか
読みきれない文字が少しだけ広げる
樹皮のような
わたしの感受性で
伸びたり縮んだりしながら
愛することを誓います


***
早稲田祭2023
作家堀江敏幸氏によるご講演
「本を読むこと、書くこと」を聴講して
コメント (2)
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夕日の思い出

2023年11月09日 | 
北鎌倉から江ノ島まで
歩いたり江ノ電に乗ったりして
やわらかな線を結んだ
とても天気の良い日で
山を覆う木々は艶やかに葉をなびかせ
海岸の光は散乱して目に痛いほどだった

私たちは互いのこのところの
生活の変化や
考えていることを交換しあったり
景色についての感想を
順々に伝えあったりした

江ノ島の橋の袂に着いたのは
見事な夕暮れ時

じっと見守っていた夕日が
山の間に隠れてしまうと
桟橋に残る人はシルエット
海が静かに揺れていて
なだらかな無数のさざなみ一つ一つに
もうくらくなっている空にはない
淡いけれども明るい
桃色と水色を繰り返していた

私たちもひとりひとり
しずかに揺れていて
空を写し海を写して
淡いけれども明るい
桃色と水色
見分けもつかず
みずからのおもてに繰り返している

夕日が沈んでも
空と海と私たち
不思議に明るい夕暮れ
その思い出をじゅんじゅんに語り合っている
色が夜に沈むまで


*お詫び*
「いいね」をいただいた後に、うっかり
コピーをせずにそのまま大幅変更してしまいました。
申し訳ありません!
いつも「いいね」をありがとうございます😊
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眠り

2023年10月24日 | 
眠りは不思議な生き物
毎晩欠かさずわたしのもとを訪れる
わたしになんの取り柄もなく
創造力のきらめきもなく
つまらなくても
闇の中にそこだけほのかな意識となったわたしに
両側から黒い腕をからめて
広く柔らかな背中に乗せ
暗い世界で音楽のように飛翔する

境界は波のように定まらず
眠りはあいまいな生き物だから
温度を感じられることは稀
誰かの話を聞いている
けれど粒はあいまいになり
それは縁がレース飾りのように波打つ切手
ハルだけで満たされている

わたし自身の道のりで
詩にはなかなか出会えないけれど
眠りがどれほど大きなポケットを備えているのかは計り知れない
成長していく家や美しい階段
とっておきの感情を 素朴に用意しておく
込められたメッセージが
閉じられた循環でありながら
どこからでも出たり入ったりして
浸潤の容易な膜のように
「印象」という形を受け取り
与え返し
わたしを超えたものとして
ひっくり返され
わたしを包む
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不思議な

2023年09月14日 | 
「不思議な」に続く言葉を考えてみる
「不思議な」に続けて面白くなる言葉は見つけるのはむずかしいぞ
なぜなら、不思議なことに「不思議な」はどんな言葉についていても不思議じゃないからだ
巻き貝に負けないくらいのひねりが必要なのではなかろうか

不思議な時間
不思議な夢
不思議な友人
不思議な家族
不思議な家
不思議な音楽
不思議な石
不思議なストーリー
不思議な本
不思議な毎日
不思議な平凡
不思議な髪型
不思議なとうもろこし
不思議なメガネ
不思議な夜景
不思議な正解(意外とありそう)
不思議なアリバイ
不思議な変態(もともと不思議なものにつけると普通に近づく?)
不思議な未成年
不思議な怒り
不思議な気持ち
不思議な天気
不思議な電気
不思議な伝記
不思議な午前零時
不思議な宇宙人(むしろ絶対不思議なものにつけてみた)
不思議な




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