時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮コーラス・グループ北京コンサート中止事件の真相

2015-12-20 20:39:03 | 北朝鮮
北朝鮮と言えば、娯楽が一切ないかのような印象を受けるが、
実際はスケートしかり、ポップスしかり、この国にも遊びは存在する。

先日、北朝鮮のコーラス・グループ、「モランボン」の中国での公演が急遽、取りやめになった。
これに対して、いち早く反応したのが韓国メディアで、次のような考察が行われた。

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12~14日の3日間で予定されていたモランボン楽団の北京公演は、単純な文化交流ではない。

北朝鮮はモランボン楽団と国家功勲合唱団の訪中責任者に
チェ・フィ労働党中央委第1副部長を任命し、中国側からは、
彼女らの北京公演主管機関として“党対党外交”を担当する共産党対外連絡部が参加した。

今回の公演は、高度の政務判断による政治的なイベントであり、
朝中最高位級の交流を準備するイベントとしての側面を持ち合わせていることを裏付けている。

宋涛・中国対外連絡部長は今回の公演を「非常に重視」しているとし、
華春瑩・中国外交部報道官は、「伝統の友誼を強固にするだろう」とはやした。

北朝鮮メディアも2012年、金正恩第1書記の指示で結成された
10人組の女性バンドのモランボン楽団の初海外公演を連日大々的に報じた。

ところが、その公演が突然キャンセルされた。
中国側は11日の深夜頃、官営の新華通信を通じて「工作(実務)の面で疎通に問題が生じ」と釈明した。
北朝鮮はいかなる説明を行っていない。

様々な説が飛び交う中、モランボン楽団の
訪中以降に発生した“水素爆弾事件”に注目する必要がある。

金正恩国防委員会第1委員長の「水素弾の巨大な爆音を鳴らせる強大な核保有国」
(労働新聞 10日付1面)の発言について、華春瑩・中国外交部報道官が
「関連当事国が情勢の緩和に役立つになることを、より多く行ってもらいたい」として、
批判的な論評を出したのだ。

北朝鮮の最高指導者の発言を中国外交部報道官が
明らかに批判したことはあまり前例のない珍しい“事件”だ。

華春瑩報道官の発言が、習近平国家主席ら
中国最高指導部の意向とは無関係ではないものと思われるのも、そのためだ。

これと関連し、北京のある消息筋は12日、
「金第1書記の水素爆弾保有発言が出てから、中国側が(楽団の演奏を)観覧する人物を
北朝鮮が要求した『少なくとも、政治局常務委員級』よりも地位が低い政治局員級を提案した。

この報告を受け、金第1書記がモランボン楽団を撤収するように指示した」と述べた。

水槽爆弾の発言をめぐる対立が中国側の公演観覧者の“格”(地位)を
めぐる論議に飛び火したということだが、モランボン楽団の公演取り消し
という突発的な悪材料の根底には、核問題をめぐる両国の長年の対立と
意見の相違が横たわっている可能性があることを示している。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22787.html
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では、実際はどうだったかというと、次のようなものだった。

「女性で構成される北朝鮮の女性ポップグループが北京でのコンサートを先週中止した。
 北朝鮮と中国の情報筋の話によると、歌詞が「反米的」だということで中国当局が非難したため。
 金曜のロイター通信が伝えた。

 モランボン楽団は北朝鮮の優秀なコーラス・グループとして中国を訪れており、
 12月12日に北京国立芸術館で公演を行う予定だった。

 情報源によると、中国の検閲官は1950年から1953年にかけて行われた朝鮮戦争における
 自国を称えた歌詞の中にある、アメリカを「野心のある狼」と表現した歌詞を認めなかった。

 http://www.reuters.com/article/us-china-northkorea-idUSKBN0U113Z20151218」

歌詞がアメリカの不要な反発を生むと考えた検閲側は歌詞を変えるよう要請したが、
北朝鮮側はこれに反発し、帰国を命じたというのが真相らしい。

ちなみに、ロイター通信も北朝鮮が今回のコンサートが軽視されていることに
不満を覚えていたと書いている。いずれにしても、核は関係がなかった。

ただし、北朝鮮と中国の間で核を巡って齟齬が生じているのは確かだ。
北朝鮮は核保有の必要性を主張しているが、中国はこれを快く思っていない。

だからといって、何でもかんでも核と結びつけて憶測を飛ばすのもよろしくはない。


重要なのは、北朝鮮に対する報道に関しては、
韓国の左翼メディアであるハンギョレでさえ、この程度だと言うこと。


ハンギョレは北朝鮮に関しては、右翼メディアとタメを張れるほど攻撃的だと思う。
夏の朝韓衝突の際にも、やたらとパク・クネを擁護していた。

秋の頃には、北朝鮮がミサイルを飛ばすぞと騒いでいたし(なお、誤報だった)、
こういう北朝鮮に対して右翼と全く変わらない態度をとる新聞が右翼に対抗できるのだろうか?
(まぁ、それは日本の左翼にも言えることなのだが)

フランスの二大政党制

2015-12-20 00:08:02 | 欧米
前回の記事の続き。

今回のフランス地方選挙の国民戦線の「敗退」は、つまるところ、
二大政党制の担い手である共和党と社会党が団結して第三勢力を排除したにすぎない。

こう結論付けたわけだが、ここでフランスの二大政党制について語らなければ、
今、フランスで何が起きているのかがよく理解できないと思う。

できれば、国内の池上彰様(※1)や佐藤優様(※2)にご解説頂ければよかったのだが、
この連中に解説力など期待しても無駄なので、自分で書く。


フランスは1980年代から、長らく共和党と社会党が交代して政権を担ってきた。
この時期の大統領を列挙すると、ミッテラン(社)→シラク・サルコジ(共)→オランド(社)
となっていて、大体、14年を周期に(1981→1995→2012~)交代している。

これは首相の任期が7年、再任されれば14年ある(2002年から任期は5年に変更)ためだが、
これだけ周期が長いと、当然、この間に与党が変化することがある。

フランスではロシアのように、大統領の他にも首相が存在するのだが、
これは慣習として当時の与党から選ばれることになっている。

つまり、大統領は社会党の人間なのに、首相は共和党の人間になることも可能であり、
現にフランス現代史では過去、3度、共和党と社会党が同時に政権についた時期があった

これを保革共存(コアビタシオン)と言う。

これは結構、大事なことで、保革政党が同時に政権につくことで、今の政治が悪いと思っても、
それが共和党の責任なのか、民主党の責任なのかがハッキリしなくなってしまった
のである。

そうなると当然、既存の大政党とは違うことを、
それも過激な発言を行う新興の政党が人気を得るようになる。

それが国民戦線だったのである。


このような歴史的背景を思えば、
フランス国民の多くが国民戦線に投票を入れたのは、
単にテロにショックを受けて、衝動的に極右政党に投票したわけではないことがわかる。

また、忘れてもらっては困るのが、
民主化を口実にシリア国内の武装組織に戦闘技術の訓練・武器の提供等の援助を施し、
テロ打倒の美名の下、シリアやイラクに軍を送り空爆をしているのが社会党だということだ。

私は日本の右傾化は左翼の右傾化と主張するが、
実のところ、左翼の右傾化はフランスもまた同様の状況である。

「私はシャルリー」というカードを掲げる茶番が数ヶ月前にあったが、
 この「私はシャルリー」というメッセージには「私はフランス人」、
 東洋人(ムスリム)の被害者である西洋人という意味合いも少なからず含まれていた。

要するに、言論の自由を訴えるという左翼的な運動ですら極めて愛国的な運動でもあったわけで、 
このようなナショナリズムの色が濃い運動に共鳴していた民衆が数ヵ月後に、
共和党や国民戦線に入れたことは、自然であり必然だったのではないだろうか?


※1池上彰 様

 安保法強制採決以前の時期に、安倍政権の見解をそのままお茶の間に垂れ流し、
 いかにも安倍の意見が一理あるかのように見せかけた御仁。

 今年の7月の時点で彼は、安倍政権が集団的自衛権行使で唯一実例としてあげた
 ホルムズ海峡の機雷掃海に関して、イラストまで作って解説する一方で、
 現実的ではないという意見「も」ありますと一言、申し訳程度に触れていたのだが、
 今頃になってホルムズ海峡に機雷が撒かれるなどありえない、非現実的だと語っている。

 ちなみに、自分が以前、真逆の論調をとっていたことについては特に言及がない)

※2 佐藤優 様

 あの池田大作を尊敬する創価学会の支持者。何冊か創価学会のベタ誉め本を書いている。
 これだけでも相当胡散臭いヤツだと普通の人間なら気がつくのだが、
 売れっ子なので岩波も週刊金曜日も彼に沖縄問題等の時事評論を書かせている。
 
 ちなみに彼は集団的自衛権には肯定的で、辺野古基地の建設には否定的という
 一見矛盾した態度を取っているが、前者の掲載紙が保守系の雑誌、後者の雑誌が
 革新系の雑誌であることを知れば、特に不自然なことをしているわけでもない。

 彼はどちらかというと評論家ではなくプロデューサーというべきキャラで、
 文学についてはド素人なのに、ロシア文学者の亀山郁夫とタッグを組み、
 亀山訳の『罪と罰』、『悪霊』などをベストセラーにさせている。

 ちなみに亀山のドストエフスキー論、ならびにその訳本は
 ドストエフスキーの研究者らに完全に否定されているが、
 否定するほうが異常なのだという見解を持っている。)