時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

なぜトルコはロシア軍機を攻撃したのか?

2015-12-01 00:19:17 | 中東
トルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件。同事件をきっかけに露土関係は急速に冷え込んだ。

トルコ側はロシアが領空侵犯をしており、
10度にわたる警告に応じなかったために攻撃したと語っている。

ところが、後の調査で領空をロシア戦闘機が通過した時間はわずか17秒だったことが判明した。
つまり、17秒の間にトルコ軍は10回も警告を発したことになる。これは明らかにウソだろう。

トルコが攻撃した背景として、ロシアやイランではトルコのIS(ISIS)支援を挙げている。
確かに、トルコはサウジアラビア、アメリカ、イスラエルと並び、ISを支援している国家だ。

シリア国内でIS兵として戦う外国人傭兵の大多数はトルコ領内から入っている。
トルコ政権の黙認なしに、これだけ多数の武装戦闘員が国境を越えられはしない。

また、IS戦闘員の武器はトルコ領を通って供給されており、
トルコ政府自体がシリア産石油を現在進行形で奪取し続けており。
その石油はすべてトルコのエルドガン大統領の息子の所有する企業に供給されている。

そして、ここが肝心な点だが、トルコは、ロシアがISが所有する、
石油を積んだトラック500台以上を破壊した途端に態度を激変させた。


このような状況からトルコの攻撃的な姿勢がロシアのIS攻撃に起因すると考えるのは自然だ。
また、フリー・ジャーナリストの田中宇氏はIS以外の過激派への攻撃も原因の一つとみなす。

田中宇氏:トルコの露軍機撃墜の背景

だが、私はこれとは別の理由がある気がしてならない。

ISにせよヌスラ戦線にせよ、ロシア軍が攻撃する過激派は所詮はトルコ国民ではない。
確かに民族的な繋がりはあるかもしれないが、現在、トルコはロシアと共に
天然ガスをロシアから供給するためのパイプラインを建造している最中であり、
経済的にロシアの存在が無視できないこのタイミングで、
わざわざ他国のテロリストのためにロシアと険悪な仲になる挑発をするだけの義理がない。

つまり、ロシアと敵対してなお得られる何らかのメリットがない以上、
ここまで強硬な態度をいきなり取る理由が見つからないのである。


では、そのメリットは何かと言う話になるが、
ここで考慮すべきなのが、もともとトルコがNATOの所属国であることだ。

ここで前述の田中氏の評論を引用しよう。

「トルコはNATO加盟国だ。NATOは、加盟国の一つが敵と戦争になった場合、
 すべての同盟国がその敵と戦うことを規約の5条で義務づけている。

 そもそもNATOはロシア(ソ連)を敵として作られた組織だ。
 戦闘機を撃墜されたロシアがトルコに反撃して露土戦争が再発したら、
 米国を筆頭とするNATO諸国は、トルコに味方してロシアと戦わねばならない。
 これこそ第3次世界大戦であり、露軍機の撃墜が大戦の開始を意味すると重大視する分析も出ている。
 ロシアとNATO加盟国の交戦は60年ぶりだ。

 ここ数年、米欧日などのマスコミや政府は、ロシア敵視のプロパガンダを強めている。
 NATO加盟国のトルコの当局は、ロシアと対決したら世界が
 自国の味方をしてくれると考えているだろう。だが、私の見立てでは、
 世界はトルコに味方しにくくなっている。今回の露土対立は、世界大戦に発展しにくい。」

田中氏はフランスもIS掃討に本腰を入れるようになったこの状況で、
国際社会がトルコを支持するのは考えづらいと述べている。

NATOとの関わりに注目する点までは私も田中氏と同じだが、同氏の見解では
なぜフランスとロシアが協力してIS掃討に乗り出したこの時期に攻撃を?
という問いに上手く答えられないような気がする。
ロシアがISを攻撃し始めたのは大分前だから、仮に攻撃するならもっと前に行ったはずだ。

ここで気にすべきことが、
フランスやアメリカがロシアと協調しなければならなくなった時期と
トルコが両国に代わってロシアを非難し始めた時期が一致する
という事実だ。


つまり、パイプラインの建設を犠牲にするだけの意味がある何らかの利益を受けることを条件に、
トルコがロシアの空爆を非難する役目を米仏から引き継いだのではないだろうか
と思う。

実際、ウクライナではパイプラインの建設は中止になったが、
その代わり、キエフ政権はアメリカを中心に経済的軍事的支援を得ることが出来た。

ウクライナもトルコもNATOの従属国であることを踏まえれば、
米仏が表面的には協力しながらロシアを攻撃するためにトルコを利用するのは十分有り得る。

以上、状況証拠からトルコの攻撃の背景を推測したが、
今後、仮に米仏が何らかの支援をトルコに行ったりすれば、この読みは当たりとなるだろう。
(逆に米仏がロシアに味方してトルコを非難すれば外れたことになる)


最後に、本記事とは無関係の内容だが、今回の田中氏の記事、
実は、スプートニクの徳山あすか記者が同氏のホームページから
そのまま転載したものらしいのだが、それって記者としてどうなのだろう?

完全にボランティアであり、取材費も時間もない個人が非営利目的で行うなら理解できる。
しかし、仮にもプロの新聞記者がネットの記事をそのまま引用って……手抜きすぎだろう。

この徳山記者は前から単なるインタビュー記事を、
それも日本の保守系知識人からインタビューしたものを編集して掲載するだけの
アルバイトでも出来そうなことばっかりしていて、記者としては3流だと思っていたが……

実際、リテラの梶田陽介記者と比べると、梶田記者が関連図書を読み、
きちんと基本を学んだ上で取材を行い、記事にしていることは容易に想像できる。

自民党が持ち出した「共謀罪」の危険すぎる中身!
テロ対策は嘘、トイレ落書き計画リツイートするだけで逮捕も


これなどを読むと、取材相手の言葉だけでなく、
地の文でも(つまり梶田記者自身が)共謀罪について解説を行っているのだが、
徳山記者の場合、取材相手の言葉だけで説明されており、
テープの内容をそのまま文章にしただけだということがすぐにわかる。

元産経の記者らしいリュドミラ・サーキャン氏もそうだが、
スプートニク紙には、なぜか右派の人物も混じっており、
それは中立的といえばそうだが、日本とは別視点の解説を行うという
このメディアの最大の特徴を台無しにしているような気もする。

北朝鮮がミサイルを飛ばしたと言っているけれど・・・

2015-12-01 00:11:59 | 北朝鮮
肝心の情報源が韓国の国情院。
しかも、証拠はなく、全体像は捉えていないという曖昧な情報らしい。

繰り返し語るが、この国情院は証拠を捏造して野党を強制解党させるわ、
大統領選の際に、パク・クネの政敵を誹謗中傷するコメントを60万件もツィッターで拡散させるわ、
その前身にあたるKCIAは軍事政権時代、無実の人間を逮捕・拷問するわと何かといわく付の機関だ。

ちなみに、日本でも話題になったセウォル号の事故においても、
この国情院が証拠を隠蔽したのではないかという疑いが向けられている。

「国家情報院、セウォル号就航2週前の保安測定予備調査を隠蔽」

イ・ジェミョン城南市長「セウォル号オーナーは国家情報院」と主張

しかも、この国情院は司法機関まで手中に収めており、
事実上、この機関を検察や裁判所が裁くことが出来ないシステムが出来上がっているのだ。

国家情報院が裁判官任用時に面接…事実上の思想検閲


このように国情院が冷戦時代から続く秘密警察であることを踏まえれば、
ここから発せられる北朝鮮情報が如何に胡散臭いものであるかは言うまでもないし、
実際、これまでにもいくつもの誤報をこの機関は拡散している。

ここで、北朝鮮のミサイルの話に戻すと、通常、
北朝鮮は何らかの実験を行った場合、自国のほうから外部に向けて発表する。
例えば、今年の5月には潜水艦発射式の弾道ミサイル発射に成功したという発表があった。

また、タイミング的にも米韓合同軍事演習などの挑発行為を相手国が行った場合に、
カウンターとして飛ばすことが多い。ミサイルを飛ばすにも口実が必要なわけである。
それを踏まえれば、両国の高官同士の対談が決まったこの時期に実験を行うのは不自然だ。

最後に、ここ最近の韓国政権の典型的な独裁政治に触れる必要がある。

ここ二ヶ月、韓国政府は民衆デモを弾圧したり、
民衆を扇動したと称して労組や左派系知識人の強制家宅捜索を行ったりしていたが、
パリの事件以降、テロ対策の名のもとに監視体制の強化と軍拡に乗り出している。

------------------------------------------------------
韓国の諜報機関は、テロ組織「IS(イスラム国)」を支持する韓国人10人を摘発した。
このニュースは、韓国の朴大統領が、
14年間も待たれているテロ関連法案の早期成立を議会に求めたのとほぼ同時に報じられた。

韓国当局は近年、国際テロリズムに関与した疑いで外国人48人を国外退去処分にした。
また最近、国際テロ組織「アルカイダ」と関連を持つ疑いで、
偽造パスポートを所持していたインドネシア人が逮捕された。

(中略)

政府の政策に不満を持つ労働組合の代表者たちが集会を開き、警官と衝突する事件が発生した後、
保守政党「セヌリ」党は集会やデモにおける覆面の着用を禁止する法案の成立を目指す意向を表した。

一方で最大野党の「新政治民主連合」は、このような法律が反対意見を持つ人々を
取り締まるための国の情報機関の「束縛を解く」可能性があるとして懸念を表している。
朴大統領は、「暴力的な抗議行動の根絶」を呼びかけている。

朴大統領によると、テロ組織「IS(イスラム国)」との戦いが強まっている今、
テロリストが違法集会で参加者の中に入り込み、韓国市民に脅威を与える恐れがあるという。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151126/1231530.html#ixzz3szEuykTj
--------------------------------------------------------

パク大統領は北朝鮮からの対話の呼びかけに応じる一方で、
11月23日には軍部に戦闘準備体制をしくよう呼びかけてもいる。


そして現在、北朝鮮を迎撃するための新基地の建設に励んでいる

「韓国の済州島南部で建設が進められている新たな海軍基地は、
 北朝鮮から挑発を受けた場合に、軍艦の展開時間を短縮することができる。
 韓国の聯合ニュースが報じた。

 基地の建設は、約96パーセント完了しており、2016年1月にも公式に稼働する見込み。
 韓国軍関係者が聯合ニュースに伝えたところによると、
 艦艇は済州島の基地から延坪島の海域まで、釜山にある主要基地から出発するよりも
 6時間早い、わずか15時間で到着できるという。

 延坪島は韓国と北朝鮮の海上の境界線に位置しており、
 そこでは定期的に南北海軍間の争いが起こっている。特に2010年に緊張が高まった。

 続きを読む http://jp.sputniknews.com/asia/20151130/1250641.html#ixzz3szGWkFDz」

簡単に言えば、新基地の稼動が予定される直前のこの時期に、
高官同士の対話が始まり、両国との間で雪解けが始まってしまうと、
莫大な予算を費やして建設した新基地の意義がなくなってしまう。


最悪の場合、北朝鮮の呼びかけに応じて建設中止・稼動の見送りもあり得る。

両国が和解にむかって歩き出そうとする一方で、着々と反北体制が敷かれる
このタイミングで国情院が動き、北朝鮮のミサイルが発射されたと騒ぎ出す。
韓国と北朝鮮、どちらにとって都合が良いあやふやな情報かは言うまでもなかろう。

断言できるが、韓国政府は、この後、今回の「ミサイル失敗」を口実にして
和解に応じようとしたけれど、やはり無理だという姿勢を見せてくるだろう。

そのための曖昧な情報だと言える。