時事解説「ディストピア」

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シャルリーエブド事件再考

2015-12-22 00:23:55 | 欧米
先月に起きたパリの同時多発テロ事件は容疑者がすでに殺害されており、
ダーイシュ(イスラム国、IS)の声明があったことから、恐らく同組織の犯行と見られている。

しかし、冷静に考えれば、手柄の横取りというのは十分有り得るし、
この事件をきっかけにフランス国内の市民監視やシリアへの空爆が強化されたわけで、
どうも腑に落ちないというか、何か肝心な情報が手元に入ってきていない感触を得る。


今年の1月に発生したシャルリーエブド紙襲撃事件においても、
容疑者は警察に殺害されており、真実を知るものが誰もいない状況でテロの脅威が叫ばれていた。

そこで今一度、シャルリーエブド事件を読み直してみたいと思う。


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〈ニュースの窓〉浮上する陰謀説/シャルリー・エブド襲撃事件

パリで起きたシャルリー・エブド紙襲撃事件は残酷な「イスラム過激派によるテロ」として、
「表現の自由を守る西側」と対峙された。だが、数々の重大な疑問が浮上している。


公式報道による事件の概要

1月7日、パリ市内にある風刺週刊誌を発行しているシャルリー・エブド本社に
覆面をした複数の武装した犯人が襲撃し、警官2人や編集長、風刺漫画の担当者や
コラム執筆者ら合わせて12人を殺害、9日には別の襲撃犯がユダヤ系スーパーマーケットで
人質をとって立てこもり4人が犠牲となり、襲撃犯は計3人が射殺されたとされる事件が発生した。

犯人は自動小銃AK-47で武装し、相当な軍事訓練を受けたプロのようだったと報じられた。
フランス政府は「表現の自由」、「団結」を叫び、断固テロとたたかうことを宣言、
世界からは約40カ国の指導者、政府高官らが終結し「デモ行進」した。

数多い矛盾と疑問点

だが、不審な点や疑問は数多い。第一に、2人の犯人が使用したとされる車には
彼等の身分証明書が残されていたという点だ。とうてい「プロ」がやることではない。
9.11事件で無傷のパスポートが倒壊したビルの残骸の中から見つかったことを思い起こさせる。
また、車を運転したとされる18歳の少年が完璧なアリバイがあるとして
自首した事実を欧米メディアのほとんどが報じなかった。少年は事件とは無関係だった。

第二に、本事件の捜査を担当した司法警察の幹部が不可解な「自殺」を遂げた。
だが、この重大なニュースを主要メディアは報道しなかった。
警察当局は彼が「鬱病」あるいは「燃え尽き症候群」を患っていたと説明した。
そんな人物を事件の根幹に関わる捜査の責任者に任命するはずがない。

第三は、襲撃犯が路上でロシア製の自動小銃AK-47で2人の警官を射殺したとされる
現場の様子を鮮明に捉えた動画にある。当局もメディアも、路上に横たわっている
1人の警官に「犯人」が駆け寄りながら「とどめを刺す」一発を頭に撃ったと発表した。

だが、ユーチューブに載った初期の動画を観ると、明らかに銃弾は当たっていないし、
数十センチも離れた路面から白い煙が出ているのがはっきりわかる。空砲である。

もしも破壊力の強い実弾が至近距離で頭に命中すれば吹っ飛ぶか、大量の血が出る。
しかし、実際は一滴も血が出ていない。また、もう1人の死んだはずの警官は
こっそりスマホをポケットから取り出して「自分撮り」してまた動きを止めている。

この動画を観て不審に思ったあるフリージャーナリストは、
現場にはないはずの大量の「血痕」のようなものが「残され」、
囲いがしてあると伝えながら、不自然さを強調した。また、その動画は後にほぼ抹消された。

一部残っているものは編集されていて、「射殺された」瞬間が「残酷」だとしてぼかしが入っている。

最後に、世界のリーダーたちが何十万人もの「怒れるデモ隊」の先頭に立ってスクラムを組んで
行進しているように見える場面があるが、実際には彼等の後ろには誰もいなかった。
完全な演出だったのである。ドイツのメディアが暴露して判明した。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/02/sinbo-j_150223-2/
(朝鮮新報2月21日の記事より)
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今になって思えば、シャルリーエブド事件では、事件の真相解明、つまり、
誰がなぜ、どのように計画を練ったものなのかを解明することよりも、
この事件を政治や軍事に最大限に利用することのほうが優先されてしまった
のではないだろうか。

本来なら事件の背景として存在する欧米内でのムスリム差別や
シリア・イラクをはじめとする旧植民地国に対する旧宗主国の軍事・政治干渉についても
内外の研究者を交えて、きちんと議論を重ね、特に後者については戒めるべきだった。

そのツケが数ヵ月後の今になって回ってきている気がする。
先の地方選挙における国民戦線の健闘は、その良い象徴と言えるだろう。

すなわち、シャルリーエブド事件を通じて
フランス国内に蔓延するイスラモフォビアを撲滅する機会があったはずなのに、
これといった対策が練られなかった結果、極右政党の大幅な躍進を許してしまった。

「暴力の根底には社会の差別がある」という重大な命題を見逃してしまった。
 このことは大いに反省してしかるべきだし、今からでも遅くはないはずだと思われる。


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真の自由

年始から衝撃のニュースが世界を駆け巡った。
フランスの新聞社「シャルリ・エブド」襲撃により、17人の犠牲者が出た。
言論を暴力で弾圧し、人々を殺害した残虐行為に怒りを禁じえない

▼事件後、フランスでは「言論の自由」を守るデモが拡散。
 しかし、イスラム教関連施設に対する襲撃が相次ぎ、イスラム寄りの発言が
「テロ擁護」として抑圧されている。極右政党が支持率を大きく伸ばす一方、
 ドイツなどではイスラム社会との融和や難民の受け入れ拡大を求めるデモも行われているという

▼同紙は14日、事件後初めて発売した紙面の表紙にイスラム教の預言者・ムハンマドの風刺画を描いた。
 欧州メディアの多くがこのことを報じつつも、風刺画自体の掲載は見送った。
 暴力には反対するが、相手を傷つける風刺にも反対する姿勢だ

▼短絡的で偏重な風刺は人種差別を助長する。
 同紙の風刺画の中には、中傷、侮辱、嘲笑にしか感じ取れない下劣な作品も少なからずあった。
 言論に、人を傷つけ、貶める自由など認められない

▼一国の指導者へのテロをテーマにした映画が外交関係よりも重んじられ、
「朝鮮人を殺せ」という暴言が警察の保護の下に白昼堂々叫ばれる、
 そんな無分別な「自由」を盾に、異民族、異文化、異教徒に
 自分たちの価値観を押し付ける傲慢さを看過できない。
 違いを認める寛容、相手を思いやる尊重こそが憎悪の連鎖を断ち、自由を守ることになる。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/01/il-480/
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上の文章は朝鮮新報のコラムから引用したものだが、
シャルリーエブド事件を単に向こう側の問題として片付けてしまうのではなく、
こちら側の問題(言論の自由の名の下、差別が看過される問題)として扱った良い記事だと思う。

デイリーNKおよび同紙編集長の高英起氏によれば、朝鮮新報は北朝鮮の別働隊であり、
北朝鮮当局が総連本部、朝鮮新報本社、同紙記者との綿密な打ち合わせの上で記事を作成するそうだ。
(http://dailynk.jp/archives/32149/2)

「これらの記事はいずれも、記者個人の自由な裁量で書かれているわけではない。
 北朝鮮当局と朝鮮総連本部、朝鮮新報本社、現地記者が綿密な打ち合わせの上で
 作成しているのであり、言わば北朝鮮の準公式メッセージなのだ。」(by高英起氏)


高氏本人は
「今年1月にフランスの週刊新聞シャルリー・エブドが襲撃された際には、
 なぜかテロリストよりも米国を猛非難する記事を掲載した」と否定的に評価しているが、
仮に朝鮮新報の記事が北朝鮮政府、総連本部にチェックされ、準公式メッセージとして
発信されているとすれば、なかなか北朝鮮は本質を突く能力を持っていると評せざるを得ない。


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