時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

欧米の民主的空爆 (カンボジアと比較しながら)

2015-12-08 22:05:39 | 中東
とうとうアメリカでは、シリアへの地上軍の派遣を支持する声が半数を超えたようである。

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米国市民の大半が初めてシリアとイラクにテロ組織「イスラム国(IS)」
撃退のための地上軍を送ることを支持する用意を示した。
CNNと調査センターORCの合同調査で分かった。

回答者の53%が地上作戦を容認する用意がある。
これまでこの数字が半数を超えることはなかった。
68%が既に米国が採択している対IS軍事行動は充分に攻撃的ではなかった、と見ている。

カリフォルニアのサンベルナルディノにおける銃乱射(テロ行為と認定されている)により、
地上作戦の遂行を容認する市民が多くなっていると見られている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20151208/1281794.html#ixzz3tjaTlJ9j
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忘れてはならないのが、アフガン戦争にせよイラク戦争にせよ、
これらは国民の圧倒的な支持によって行われたということである。

ある学者は、民主主義は戦争を起こしにくくするためのシステムだと語るが、
 実際には、民主主義は大衆が容認する限り、暴力が維持されるようになっている。

その暴力が国外に向けば、それは空爆になり、国内に向けば差別や弾圧となる。
フランスでは、パリ事件を通じて市民の監視下が進む中、極右政党が台頭しつつある。


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フランスで行われた州議会選挙で、マリーヌ・ルペン氏が党首を務める
「国民戦線」が現時点でトップに立っている。ロイター通信が報じた。


出口調査によると、「国民戦線」の得票率は、
フランス北部と北東部で30パーセントを超えている。
2位は、サルコジ前仏大統領が率いる共和党で
得票率はおよそ27パーセント、3位はオランド大統領率いる社会党。

ルペン氏は、現在の結果を、
フランスにとって歴史的な出来事だと指摘し、「国民戦線」に投票したのは、
「息苦しいシステムの代わりとなるものを明確に選択した愛国者たち」であると述べた。

フランス州議会選挙は2回投票制。今回の選挙は、
全政党にとって、2017年の大統領選挙の前哨戦とみなされている。

州議会選挙第2回投票は、13日に実施される予定。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/europe/20151207/1279946.html#ixzz3tjd0T1gR
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日本の政党で例えるならば、1位が維新の会、2位が自民党、3位が民主党という状況である。
どれだけ危機的な状況か何となく感じ取れるだろうか……

次の州議会選挙で、どの政党が首位を取ったとしてもシリアへの空爆は止まらないだろう。

空爆自体は戦闘機に搭乗するパイロットが行うものだが、
その爆弾はフランス(アメリカ)国民の総意を象徴したものである。


ここで、民主主義の名の下に行われる空爆が如何に偽善的なものかを論じておきたい。

空爆と聞いて、私が真っ先に頭に浮かぶのがカンボジアにおける米軍の空爆である。
カンボジアというと、ポル・ポトの虐殺のほうが有名だし、
大抵の人権運動家や平和主義者はポル・ポトが如何に悪かをこれでもかと書き綴る。

ところが、実のところ、ポル・ポト政権だった1976~1979年の3年間で亡くなった
100~300万人の犠牲者のほとんどは飢餓によるものであり、
直接ポル・ポト政府に殺された数は案外少なく、5~15万程度しかない。

対して、1968年より行われてきたアメリカ軍のカンボジア空爆は大変苛烈なもので、
その投下量は第二次世界大戦中に連合国が太平洋で行った爆撃の合計に匹敵するものだった。

人口密集地に落とされたこともあり、この爆撃では数十万の農民が死亡した
200万の農民が難民になり、田園地帯が破壊されたことで深刻な食糧不足に陥った。

この空爆を支持したヘンリー・キッシンジャーは
動いているものはすべて、飛べるものなら何でも使ってやっつけてしまえ
と発言したが、彼は後にノーベル平和賞を受賞している。

言語学者であり、また有名な批評家でもあるノーム・チョムスキーは、
ポル・ポト政権の3年間ほどカンボジア史において徹底的に調べつくされた時代はないが、
その数年前はどうかというと、ほとんど何も知られていないに等しいとコメントしている。

事実だけを淡々と述べれば、ポル・ポトよりキッシンジャーのほうが人を殺している。
ところが、前者は前代未聞の独裁者として記憶され、後者は平和への貢献者として称えられる。

なんともはや凄まじい話だが、昨今のシリアや列強の空爆に対する意見や世論はまさにこれで、
右翼も左翼もアサド政権やダーイシュ(ISIS)が如何に悪かということを強調した上で、
仏軍の暴力行使を強く求め、懐柔できそうな武装組織を支援し、侵攻にゴーサインを送っているが、
その実、自分たちがこれまで何をしてきたのか、しようとしているのかについて語ろうともしない。

しかも、この態度は誰かに強要されてとられたものではなく、
民主主義国家の中で自発的に共通善として示されたものなのである。

このように民主的に承認され、推進され、歯止めが利かなくなった暴力が現地に何をもたらすか。
言うまでもない。


北朝鮮に帰った朝鮮人はどうなったのか

2015-12-08 21:53:11 | 北朝鮮
総連傘下のニュースサイト「朝鮮新報」は他のサイトと比べると、
それほど頻繁に更新しないが、たまに面白い記事を載せてくるので侮れない。

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<月間平壌レポート>“科学の力で未来を切り開く”
朝鮮の復興を担う人々

【平壌発=金志永】
近年、朝鮮では教育者、科学者のための住宅団地や保養施設が相次いで建設されている。
11月には平壌・平川区域に「未来科学者通り」が竣工した。
約2000世帯が入居する高層アパート群と学校や病院などの公共施設、
商店や食堂など約150の店舗が連なっている。


「こんな立派な家に住むなんて、想像すらしなかった」

金策工業総合大学の教員、キム・スヒョンさん(38)は、
未来科学者通りのアパート入居証を受け取るとすぐさま両親に報告した。
二人は「涙を流して喜んだ」という。

キムさんの父親は1960年代、
両親とともに日本から帰国し、
医大を卒業して心臓外科医になった。


70年代に単身で東海を渡った母親は、外国語大学で教鞭をとった。

キムさんは、両親の影響を受け、幼いころから「科学の道」を目指した。
秀才養成校である平壌第1中学校で学び、金策工大に入った。
卒業後、教員として大学に残ったが、コンピューター技術を
共に学んだ同窓生の中には、IT関連の会社を選ぶケースも少なくなかった。

「会社勤めをした方が経済的には恵まれる。30代になり、
いつまで教員を続けるんだと同窓生に言われて動揺したこともある。
そんな時、励ましてくれたのが両親だった」

キムさんの専攻はコンピューターグラフィックス。
大学生時代にCGを導入した劇映画の制作に参加し、その後もこの分野の研究を続けた。
教員としては、全国教授法コンクールで一位を獲得したこともある。
これらの実績が評価され、2009年に「金日成青年栄誉賞」を受けた。
そして今回、家具付き4LDKの新居が無償で与えられた。

未来科学者通りの住民の内、約700世帯が金策工大の教員の家族だ。
キムさんは、以前住んでいたアパートを出る時、そこの住民の祝福を受けた。
「何と喜ばしいこと」「科学者の息子を持つ親が羨ましい」と声をかけられたという。

党と国家の幹部も未来科学者通りを訪れ、住民を祝福した。
キムさんの新居には副総理が訪ねてきた。

「金策工大の教員であるという誇り、国の未来を担う教育者としての責任を感じる。
 さらに大きな実績をつくり、人々の期待に応えていきたい」

朝鮮以外の国では、教育者や科学者のための住宅を国家予算で建設し、
数千世帯に無償で提供したりしない。社会主義の国だからこそ可能な施策だが、
教育者や科学者が厚遇されているのには、それなりの理由がある。
朝鮮労働党は、自力更生による経済復興を戦略的路線として打ち出している。
他国に依存することなく、自国の力と技術、資源に基づいて、経済の発展を図るということだ。

そのために科学重視、人材重視の政策が行われている。未来科学者通りの建設も、その一環だ。
人材育成、科学発展の担い手たちの生活を手厚く保障し、彼らの研究意欲、
働く意欲をを向上させることに国家予算が優先的に使われている。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/11/20151128riyo/
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この記事を読んで「おや?」と思わないだろうか?
北朝鮮内での在日コリアンの扱いが韓国のそれと比べて遥かに平等なのである。

日本ではテッサ・モーリス・スズキ氏などの一部外国研究者も含めた上で、
いかに帰国事業が間違いであったのかをこれでもかと力説する人物が大半だ。
(というかほぼ全部がそう)

しかし、上の記事に限らず、日本から帰国した朝鮮人が結構、高い位置にいることは
何度か目にするし、実際、金正恩の母親は在日コリアンだと言われている。

そもそも、スズキ氏をはじめた各論者は北朝鮮が国内の労働力を欲して
帰国事業を進めたのだと語るが最近の朴正鎮氏(帰国事業の研究者)は、
帰国事業が開始された時期には国内労働力がすでに足りていたことを指摘している。

私がこれまでに読んだ記事や文献を通しても、労働者階級というよりは、
教師や研究者、あるいは公務員といった中産階級以上の位置にいる人間が多い印象を受ける。
(拉致被害者にしても、話を聞く限りは講師として働いていたようだ)

在日コリアンにも、きちんと市民権を与えている点では日本よりも人道的である。

「総連に騙されたコリアンは差別と貧困にあえいだ」というのが論者の言い分だが、
 むしろ、同時期(50年代末~80年代半ば)においては韓国のほうが厳しい。

当時、軍事政権だった韓国では在日コリアンは「棄民」ということで冷遇されていた。
要するに、国民として扱ってもらえなかったのである。
そればかりか、北朝鮮のスパイと疑われ、逮捕・拘禁・拷問される人間も大勢いたのだ。

他方、今となっては信じがたい話だが、当時の北朝鮮は経済的にも韓国より優れていた。
こういう背景が帰国運動にはあったこと(韓国での弾圧、日本での差別)も見逃せない。

実際には、帰国した時期や定住した地域、本人の能力に応じて
多様な扱いを受けたのだろうと思われるが、詳しい分析と調査ではなく、
とりあえず北朝鮮を悪し様に非難したいという願望を達成させることが目的の言説が非常に多く、
もう少し、冷静というか多角的な分析や評価ができないものかなと思えてならない。

私がスプートニク紙をはじめ、他国(主に非欧米国)のメディアに注目するのも、
日本では決して載せられない言説が読めるからでもある。