時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮コーラス・グループ北京コンサート中止事件の真相

2015-12-20 20:39:03 | 北朝鮮
北朝鮮と言えば、娯楽が一切ないかのような印象を受けるが、
実際はスケートしかり、ポップスしかり、この国にも遊びは存在する。

先日、北朝鮮のコーラス・グループ、「モランボン」の中国での公演が急遽、取りやめになった。
これに対して、いち早く反応したのが韓国メディアで、次のような考察が行われた。

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12~14日の3日間で予定されていたモランボン楽団の北京公演は、単純な文化交流ではない。

北朝鮮はモランボン楽団と国家功勲合唱団の訪中責任者に
チェ・フィ労働党中央委第1副部長を任命し、中国側からは、
彼女らの北京公演主管機関として“党対党外交”を担当する共産党対外連絡部が参加した。

今回の公演は、高度の政務判断による政治的なイベントであり、
朝中最高位級の交流を準備するイベントとしての側面を持ち合わせていることを裏付けている。

宋涛・中国対外連絡部長は今回の公演を「非常に重視」しているとし、
華春瑩・中国外交部報道官は、「伝統の友誼を強固にするだろう」とはやした。

北朝鮮メディアも2012年、金正恩第1書記の指示で結成された
10人組の女性バンドのモランボン楽団の初海外公演を連日大々的に報じた。

ところが、その公演が突然キャンセルされた。
中国側は11日の深夜頃、官営の新華通信を通じて「工作(実務)の面で疎通に問題が生じ」と釈明した。
北朝鮮はいかなる説明を行っていない。

様々な説が飛び交う中、モランボン楽団の
訪中以降に発生した“水素爆弾事件”に注目する必要がある。

金正恩国防委員会第1委員長の「水素弾の巨大な爆音を鳴らせる強大な核保有国」
(労働新聞 10日付1面)の発言について、華春瑩・中国外交部報道官が
「関連当事国が情勢の緩和に役立つになることを、より多く行ってもらいたい」として、
批判的な論評を出したのだ。

北朝鮮の最高指導者の発言を中国外交部報道官が
明らかに批判したことはあまり前例のない珍しい“事件”だ。

華春瑩報道官の発言が、習近平国家主席ら
中国最高指導部の意向とは無関係ではないものと思われるのも、そのためだ。

これと関連し、北京のある消息筋は12日、
「金第1書記の水素爆弾保有発言が出てから、中国側が(楽団の演奏を)観覧する人物を
北朝鮮が要求した『少なくとも、政治局常務委員級』よりも地位が低い政治局員級を提案した。

この報告を受け、金第1書記がモランボン楽団を撤収するように指示した」と述べた。

水槽爆弾の発言をめぐる対立が中国側の公演観覧者の“格”(地位)を
めぐる論議に飛び火したということだが、モランボン楽団の公演取り消し
という突発的な悪材料の根底には、核問題をめぐる両国の長年の対立と
意見の相違が横たわっている可能性があることを示している。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22787.html
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では、実際はどうだったかというと、次のようなものだった。

「女性で構成される北朝鮮の女性ポップグループが北京でのコンサートを先週中止した。
 北朝鮮と中国の情報筋の話によると、歌詞が「反米的」だということで中国当局が非難したため。
 金曜のロイター通信が伝えた。

 モランボン楽団は北朝鮮の優秀なコーラス・グループとして中国を訪れており、
 12月12日に北京国立芸術館で公演を行う予定だった。

 情報源によると、中国の検閲官は1950年から1953年にかけて行われた朝鮮戦争における
 自国を称えた歌詞の中にある、アメリカを「野心のある狼」と表現した歌詞を認めなかった。

 http://www.reuters.com/article/us-china-northkorea-idUSKBN0U113Z20151218」

歌詞がアメリカの不要な反発を生むと考えた検閲側は歌詞を変えるよう要請したが、
北朝鮮側はこれに反発し、帰国を命じたというのが真相らしい。

ちなみに、ロイター通信も北朝鮮が今回のコンサートが軽視されていることに
不満を覚えていたと書いている。いずれにしても、核は関係がなかった。

ただし、北朝鮮と中国の間で核を巡って齟齬が生じているのは確かだ。
北朝鮮は核保有の必要性を主張しているが、中国はこれを快く思っていない。

だからといって、何でもかんでも核と結びつけて憶測を飛ばすのもよろしくはない。


重要なのは、北朝鮮に対する報道に関しては、
韓国の左翼メディアであるハンギョレでさえ、この程度だと言うこと。


ハンギョレは北朝鮮に関しては、右翼メディアとタメを張れるほど攻撃的だと思う。
夏の朝韓衝突の際にも、やたらとパク・クネを擁護していた。

秋の頃には、北朝鮮がミサイルを飛ばすぞと騒いでいたし(なお、誤報だった)、
こういう北朝鮮に対して右翼と全く変わらない態度をとる新聞が右翼に対抗できるのだろうか?
(まぁ、それは日本の左翼にも言えることなのだが)

フランスの二大政党制

2015-12-20 00:08:02 | 欧米
前回の記事の続き。

今回のフランス地方選挙の国民戦線の「敗退」は、つまるところ、
二大政党制の担い手である共和党と社会党が団結して第三勢力を排除したにすぎない。

こう結論付けたわけだが、ここでフランスの二大政党制について語らなければ、
今、フランスで何が起きているのかがよく理解できないと思う。

できれば、国内の池上彰様(※1)や佐藤優様(※2)にご解説頂ければよかったのだが、
この連中に解説力など期待しても無駄なので、自分で書く。


フランスは1980年代から、長らく共和党と社会党が交代して政権を担ってきた。
この時期の大統領を列挙すると、ミッテラン(社)→シラク・サルコジ(共)→オランド(社)
となっていて、大体、14年を周期に(1981→1995→2012~)交代している。

これは首相の任期が7年、再任されれば14年ある(2002年から任期は5年に変更)ためだが、
これだけ周期が長いと、当然、この間に与党が変化することがある。

フランスではロシアのように、大統領の他にも首相が存在するのだが、
これは慣習として当時の与党から選ばれることになっている。

つまり、大統領は社会党の人間なのに、首相は共和党の人間になることも可能であり、
現にフランス現代史では過去、3度、共和党と社会党が同時に政権についた時期があった

これを保革共存(コアビタシオン)と言う。

これは結構、大事なことで、保革政党が同時に政権につくことで、今の政治が悪いと思っても、
それが共和党の責任なのか、民主党の責任なのかがハッキリしなくなってしまった
のである。

そうなると当然、既存の大政党とは違うことを、
それも過激な発言を行う新興の政党が人気を得るようになる。

それが国民戦線だったのである。


このような歴史的背景を思えば、
フランス国民の多くが国民戦線に投票を入れたのは、
単にテロにショックを受けて、衝動的に極右政党に投票したわけではないことがわかる。

また、忘れてもらっては困るのが、
民主化を口実にシリア国内の武装組織に戦闘技術の訓練・武器の提供等の援助を施し、
テロ打倒の美名の下、シリアやイラクに軍を送り空爆をしているのが社会党だということだ。

私は日本の右傾化は左翼の右傾化と主張するが、
実のところ、左翼の右傾化はフランスもまた同様の状況である。

「私はシャルリー」というカードを掲げる茶番が数ヶ月前にあったが、
 この「私はシャルリー」というメッセージには「私はフランス人」、
 東洋人(ムスリム)の被害者である西洋人という意味合いも少なからず含まれていた。

要するに、言論の自由を訴えるという左翼的な運動ですら極めて愛国的な運動でもあったわけで、 
このようなナショナリズムの色が濃い運動に共鳴していた民衆が数ヵ月後に、
共和党や国民戦線に入れたことは、自然であり必然だったのではないだろうか?


※1池上彰 様

 安保法強制採決以前の時期に、安倍政権の見解をそのままお茶の間に垂れ流し、
 いかにも安倍の意見が一理あるかのように見せかけた御仁。

 今年の7月の時点で彼は、安倍政権が集団的自衛権行使で唯一実例としてあげた
 ホルムズ海峡の機雷掃海に関して、イラストまで作って解説する一方で、
 現実的ではないという意見「も」ありますと一言、申し訳程度に触れていたのだが、
 今頃になってホルムズ海峡に機雷が撒かれるなどありえない、非現実的だと語っている。

 ちなみに、自分が以前、真逆の論調をとっていたことについては特に言及がない)

※2 佐藤優 様

 あの池田大作を尊敬する創価学会の支持者。何冊か創価学会のベタ誉め本を書いている。
 これだけでも相当胡散臭いヤツだと普通の人間なら気がつくのだが、
 売れっ子なので岩波も週刊金曜日も彼に沖縄問題等の時事評論を書かせている。
 
 ちなみに彼は集団的自衛権には肯定的で、辺野古基地の建設には否定的という
 一見矛盾した態度を取っているが、前者の掲載紙が保守系の雑誌、後者の雑誌が
 革新系の雑誌であることを知れば、特に不自然なことをしているわけでもない。

 彼はどちらかというと評論家ではなくプロデューサーというべきキャラで、
 文学についてはド素人なのに、ロシア文学者の亀山郁夫とタッグを組み、
 亀山訳の『罪と罰』、『悪霊』などをベストセラーにさせている。

 ちなみに亀山のドストエフスキー論、ならびにその訳本は
 ドストエフスキーの研究者らに完全に否定されているが、
 否定するほうが異常なのだという見解を持っている。)



フランス地方議会選挙を振り返って

2015-12-14 23:51:36 | 欧米
第一回目では極右政党である国民戦線の圧勝だったフランス地方議会選挙。
決選投票である第二回では、ほとんどの県で共和党・社会党が第一党となった。

これをもって国民戦線の敗北と称する動きもあるが、あまり頂けない。
国民戦線は今回の選挙をもって議席を大幅に増やした。その数、実に3倍である

加えて、ほぼ全てのフランス地方議会で国民戦線は野党第一党になっている
同党の代表、マリーヌ・ルペンは今回の結果は敗北ではなく強化だと述べたが、
それは確かにその通りであり、文字通りの大躍進と見て差し支えないだろう。

今回の選挙では、約20年間、社会党が第1党だったパリで共和党が勝利した。

これは、パリ市民がテロ事件を契機に急激に右傾化したことを意味するよりは、
社会党が共和党と大差ないレベルなので、より無難なほうを選択したと見るべきだ。

もともと、社会党は3党ある左派政党の中でも最も右よりの政党で、
81年の全盛期において、すでに政策を右旋回し、同党に失望する左翼も少なくなかった。

歴史的に見れば、それまで最大勢力であったフランス共産党を駆逐するようにして
社会党が台頭し、結果的にはフランス共産党を押さえつける役割を担うことで成長してきた

私は日本の右傾化は左翼の右傾化であり、そもそも戦後日本の主流左翼は反共左翼で、
冷戦下、国内の共産党勢力をけん制するために保守派に利用されてきた存在だったと主張するが、
これと同様に、フランスでも反共的な左翼・中道・保守を吸収して社会党が成長してきたと言えよう。

そういう意味では、極めて保守派と通じるものがあり、本来なら共和党と対決すべき立場なのに、
国民戦線を封じるために共和党と馴れ合うような愚行を平然とやってのけてしまう。

共和党は「中道右派」と言われているが、
その党首であるサルコジ自体はフランス版石原慎太郎と言うべき人物だ。

パリ郊外の移民を「社会のクズ」と呼んだ男である。

大統領時代には新自由主義と排外主義を標榜しており、
その徹底した移民排斥で都市部の保守派の支持を集めてきた。
今から9年前の2006年に出版された『沸騰するフランス』(花伝社)によると、
2005年の移民暴動の際にとった彼の弾圧的政策を、国内の極右の97%が支持した。

この点からも、サルコジが国民戦線とは違うとアピールしながらも、
実際には保守層を支持基盤とし権力を維持・拡大していることがわかるのではないだろうか?

こういう人物が率いる「中道右派」と協力して極右勢力を撃退したということは、結局のところ、
二大政党制となったフランスにおいて、既得権益を侵されないように両党が協力し合って野党を排除したことに他ならない。

とするならば、今回の選挙、別に嬉しいことなど何一つなく、
国民戦線の躍進を「敗北」とレッテル貼りすることは、
フランスにおいて未だに人権が尊重されているかのように勘違いさせることにつながるだろう。

前にも書いたが、第一回目の時点では、
フランス版維新の党>自民党>民主党という結果だった。


今回のフランスの選挙は、100%右>80%右>50%右からどれか選べといったもので、
肝心の本来の意味における左派政党は、文字通りの敗北を喫したと言っても過言ではない。
メディアは国民戦線の「敗北」よりも左派政党の「敗北」を気にすべきだろう。


なお、去年、なぜか大ブームになったトマ・ピケティ氏だが、
以前、彼が社会党の経済政策のブレーンを勤めていたことをご存知だろうか?

社会党が日本で言うところの民主党だということさえ知っていれば、
同氏の主張は社会全体が右よりになっているから左に見えるだけで、
実際には左向きでも何でもないことは簡単に看破できたものだと思える。

現にフランス国内においては当時から彼の著作は批判されていたし、
例えば、ル・モンド(月刊版)ではフレデリック・ロルドン経済学教授が
「メディアの満場一致の礼賛それ自体が
 この著作がまったく無害なものであることを裏返しのかたちで示している」と述べている。
(http://www.diplo.jp/articles15/1504piketty.htmlを参照)

そうであるはずなのだが、なぜか日本では文句を言うべき左翼まで(というより主に左翼が)
「ピケティすげー!」とはしゃいでいたわけで…日本の知識水準もここまで下がったかと
改めて驚き呆れた次第であるが、当時は経済学者でも何でもない筆者が理論的に
ピケティを批判するだけの武器を持っていなかったので、何もコメントしていなかったと思う。

ところが、これまた理由は不明だが最近、法政大学の屋嘉宗彦教授や
立教大学の北川和彦名誉教授がピケティ批判を論じ始めており、
ブームが過ぎ去った今、冷静にピケティを読み直す意味が出てきたのではないかと感じる。
(なお、両氏の評論は『経済』12月号・1月号で読むことが可能だ)

軽減税率を巡る朝日新聞の詐欺的な解説

2015-12-12 00:28:35 | マスコミ批判
今朝の朝日新聞の記事によると、食品全般を減税の対象にすることに決まったそうだ。

当初、自民党は生鮮食品(青果、畜産、水産)のみを対象にするつもりだったらしい。
正気かという話だが、これを素でやるのが自民党。

ここで気になるのが、この問題を巡る各メディアの報道姿勢である。

例えば、朝日は社説で「軽減税率導入 社会保障を忘れるな」と書いているが、
実は朝日新聞は少なくとも8年前から消費税増税を主張してきた新聞だった。

その時も次のような社説を書いていた。

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将来を見通せば、増税による負担増は避けられない。
そう覚悟を決め、あえて大胆に発想を転換しないことには、
社会保障の基盤を固めて希望社会への道筋を描いていくことはできないだろう。

     *

では、その負担増をどの税金でおこなうか。
それはやはり消費税を中心にせざるを得ない、と私たちは考える。


消費税は国民が広く負担する税金だ。
国民みんなが互いの生活を支え合う社会保障の財源に適している。



また、少子高齢化が進むにつれ、所得を稼ぐ現役世代は減っていくので、
現役にばかり負担を負わせるわけにはいかない。

一方で、所得の少ない高齢者のなかにも、現役時代の蓄積で豊かな層がある。
こうした人々にも、消費する金額に応じて
福祉の財源を負担してもらうことは理にかなっている。


所得税や法人税の税収が景気によって大きく変動するのにくらべ、
消費税収は安定しているため、福祉の財源に適しているともいわれている。


安心の財源は消費税を中心にと考えるのは、以上の理由からだ。

http://www.asahi.com/shimbun/teigen/teigen07.html
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この文章は、2007年に書かれたものだが、少し考えてみても、
高齢者は若年層と比較して医療費や介護費がかさむことは容易に想像できるし、
低所得者に重い負担を強いる消費税が社会保障の財源に適しているとも思えない。

2013年10月には次の社説を載せている。


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安倍首相が、消費税の増税を決めた。5%の税率は来年4月から8%に上がる。

97年4月に3%から5%になって以来、17年ぶりの消費増税だ。
これまでは所得税などの減税とセットだったが、今回はない。
金額にして8兆円余り。わが国の税制改革史上、例のない大型増税である。
家計への負担は大きい。それでも、消費増税はやむをえないと考える。

借金漬けの財政を少しでも改善し、
社会保障を持続可能なものにすることは、待ったなしの課題だからだ。

「社会保障と税の一体改革」という原点に立ち返ろう。

国債を中心とする国の借金の総額は国内総生産(GDP)の約2倍、1千兆円を突破した。
今年度の一般会計では、新たな国債発行が40兆円を超え、予算の半分近くに及ぶ。

最大の原因は、高齢化に伴う社会保障費の伸びだ。
医療や年金、介護の財源は、保険料や窓口負担だけでは足りない。
国や自治体が多額の予算を投じており、国の社会保障費は年に1兆円ほど膨らみ続ける。

将来の世代に借金のツケを回しながら、今の世代の社会保障をやりくりする――。
こんなことをいつまでも続けられるはずがない。
社会保障を安定させ、財政の危機を未然に防ぐには、
今を生きる私たちがもっと負担するしかない。

では数多い税金のうち、なぜ消費税なのか。

社会保障による給付は高齢者向けが中心だ。
お年寄りの割合は上がり続けており、
所得税など働く世代の負担だけに頼るわけにはいかない。


しかも、現役組は賃金が増えないなか、子育てや教育、住宅など多くの負担を抱える。
支援を強化しないと、人口減少に拍車がかかりかねない。

こうした点を考えれば、国民が幅広く負担し、
税収も安定している消費税が、社会保障の財源に最もふさわしい。

http://d.hatena.ne.jp/oguogu/20131002/1380716457
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これに対して、私は以前、次のように反論した。


「この理論には明らかな嘘が含まれている。

 まず、所得税は所得に応じた税であり、
 勤労世代のみならず、年金世代もその年金額に応じて負担を負っている。


 次に、消費税は企業が獲得した利益から政府に対して支払う付加価値税であり、
 直接には消費者が支払っているわけではない。そのため、売上が赤字である
 中小企業(日本の全企業の7割に相当する)にとって重税となるのだ。

 国民が負担を負うというのは部分的な説明であり、
 肝心の中小企業への更なる負担という面は無視されている。


 最後に、小泉政権以降、福祉費は削減の傾向をたどっており、
 増税しても、公共事業や軍需産業に使われるのが関の山だ。
 福祉のために消費税が使われる保証などどこにもないのである。

どうせ増やしても福祉費には当てられず、軍拡と箱モノに充てられる。
残念ながら、この予言は2ヵ月後に的中した。

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来年4月に消費税率を5%から8%に引き上げて国民から約8兆円もの所得を奪っておきながら、
その増えた分の財源をつぎ込む対象は、もっぱら軍事費と公共事業費ばかりです。

対照的に福祉・教育予算は国民に痛みを強いる内容がぎっしりです。

14年度予算案は過去最大の95兆8823億円、
先に閣議決定した13年度補正予算案とあわせると101兆円以上にも達します。

今回の税率引き上げによって初めて消費税収が所得税収を上回りました。
法人税収の1・5倍の規模です。所得の低い人ほど打撃となる逆進性の
強い消費税頼みの異常な税収構造が鮮明です。

重大なのは消費税増税で拡大した財源を、
安倍政権の「暴走政治」を加速させる政策分野に最優先で投じていることです。


典型は軍事費の2年連続増です。伸び率も昨年度を超える2・8%増です。
今月中旬に一挙に閣議決定した「国家安全保障戦略」
「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」がさっそく具体化されています。
上陸作戦機能を向上させる水陸両用部隊新設などに約35億円投じます。
新型輸送機オスプレイや無人偵察機の導入のための調査費約3億円も新規につけました。
「海外で戦争できる国」へ向けた装備や部隊の増強です。
北東アジアの緊張を高め、平和に逆行する暴挙は中止すべきです。

公共事業費の2年連続増加も、先の国会で成立した「国土強靭(きょうじん)化法」を受けたものです。
「国際競争力強化」を名目の3大都市圏環状道路建設など大企業向けが顕著です。
国民と国の財政に重いツケを残す愚挙でしかない不要不急の大型開発事業は根本から改めるべきです。


消費税増税で「充実」させるはずの社会保障分野は、削減と抑制を列挙しました。
命と健康を守る医療に必要な診療報酬は、実質マイナスに転換しました。
「医療崩壊」をもたらす危険につながるものです。

歴代政権が見送ってきた70~74歳の医療費窓口負担2割への引き上げも実行します。
13年度から始まった生活保護費3年連続削減、年金の3年連続2・5%カットなども続行します。


「自己責任」を迫る社会保障大改悪を容赦なく推進することは国民の願いに真っ向から反します。
復興特別法人税廃止をいち早く決めるなど大企業に大盤振る舞いをする一方、
消費税増税やアベノミクスによる物価高騰で苦しむ国民の暮らしを支える視点が
まったくない安倍政権の危険性は明らかです。暴走にストップをかけるたたかいがいよいよ重要です。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-25/2013122501_05_1.html
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当然、福祉のために増税せよと主張した朝日新聞は、
軍事費拡張、福祉費削減について徹底して非難すべきなのだが、なぜか行っていない。

代わりにこういう社説を載せている。

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2017年4月に予定される10%への消費増税をにらみ、
食料品などの税率を現行の8%にとどめる軽減税率の導入について、
政府・与党が本格的に検討を始めた。

消費税には所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」があり、その対策という位置づけである。

欧州の多くの国が導入している軽減税率は、
わかりやすいうえ、対象品目を購入する際の負担感がやわらぐという長所がある。
しかし、裕福な人も恩恵を受けるうえ、対象の線引きが難しく、税収の目減り分が膨らみやすい。

その危うさと日本の財政難の深刻さを考えれば、
軽減税率は欧州各国のように基本税率が10%を上回るようになった時に検討することにし、
当面は支援が必要な人への給付で対応するべきだ。社説ではそう主張してきた。


首相官邸は軽減税率へかじを切った。
連立政権を組み、欧州型の軽減税率にこだわってきた公明党への政治的配慮からだ。
慎重姿勢を崩さない自民党税制調査会長を交代させるという荒療治を施し、
消費税の一部を後で消費者に還付するという財務省案も一蹴した。

消費税率が二本立てになれば、取引ごとに適用税率や税額を記したインボイス(明細書)が
不可欠とされる。中小事業者を中心に事務負担を嫌う経済界はインボイスに反対している。

そうした実務上の問題を含め、課題は山積している。

政府・与党に忘れないでもらいたいのは、なぜ消費増税を決めたのかということだ。

国の借金は1千兆円を超えた。
高齢化に揺らぐ社会保障を支え、出産・子育て支援にも取り組んでいく。
その財源には、将来世代へのつけ回しである国債発行ではなく、
全ての世代が広く薄く支払う消費税を充てる。これが「税と社会保障の一体改革」だったはずだ。

当面の焦点は、何に軽減税率を適用するかである。

飲食料品を中心に検討が進みそうだが、対象が精米だけなら
税収の目減りは400億円の一方、外食を含め酒を除くすべてだと1兆3千億円を超える。

消費税率10%時には年金の受給資格期間を短縮するなど、増税分の使途は決定済みだ。
軽減の対象を広げるなら財源の穴埋め策を考えなければならない。


どんな答えを出すのか。政府・与党は、来年の参院選をにらんだ目先の思惑にとらわれず、
一体改革の精神を踏まえて判断するべきである。
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要するに、軽減税率を導入するなと言っているのである。


先述したように、所得税は年金生活者を含む全国民から徴収するものであり、
それも、所得に応じて金額が決定される累進課税システムを採用している。

これは所得の再分配(低所得者の負担分を高所得者が補う)にかなったもので、
皆の助け合いを言うならば、高額所得者の所得税を上げろと言うべきだ。

だが、さらに言えば、過去の統計を見ると、消費税の増税は法人税の減税とリンクしている。
つまり、法人税の減税で減った分を消費税の増税で補っている。

しかもこれ(法人税減税)は経団連などの財界の要求に応じたものであり、
これだけを見ても、消費税増税が平等意識などというものから芽生えたものではなく、
一部の特権階級の要求を満たすための埋め合わせとして利用されているのは明白である。
これに朝日が言及しないのは凄まじい欺瞞であるように私は感じる。


ちなみに、法人税は赤字経営の企業に対しては免除されるが、
消費税の場合は赤字であろうと必ず支払わなければならない


これもまた、金のないところからさらに金をむしり取ろうとする
極めて不公平なもので、福祉もへったくれもないことがわかるだろう。

そもそも、政府は当初、「生活必需品」を軽減税率の対象とすると話していたはずだ。

当然、食費だけでなく、ガス・水道・衣服・医薬品・化粧品・洗剤、
石油等々のかなり広域にわたる他の商品も対象とすべきなのである。

朝日は「食品だけ対象外にして、譲歩したポーズを取るのは何事か」と本来なら怒るべきなのに、
逆に「軽減税率を採用したら財源をどうするのだ!」と逆の意味で怒っている。

ここでとても素敵なお話をしよう。
実は新聞は増税の対象外になっているのだ。

朝日、読売、日経が「新聞に軽減税率」決定を書かない理由…
消費増税主張しながら自分達は政権と取引する卑劣


前述したように、消費税は最終的には企業が国に向けて支払うものである。

つまり、我々の生活費にかかる負担が増えても、
朝日新聞社は今までと同じ分の税を国に払うことになっている。

(今後、法人税が減税されれば、朝日は今よりも楽になるかもしれない。
 もっとも、法人税は黒字経営の企業にのみ課せられるので朝日の業績次第によるが)

赤字企業の経営や低所得者の暮らしが苦しくなっても、
朝日新聞にかかる負担は今までと何ら変わらないことを書かない。

「軽減の対象を広げるなら財源の穴埋め策を考えなければならない」と書いておきながら
「未購読者も増える現代で新聞は生活必需品とは言いがたい。対象から外すべきだ」とは書かない。


これが日本のリーディング・ペーパー。日本の行く末を案じているらしい連中のありのままの姿。
右翼は、慰安婦問題がどうのこうのより、こういう点を攻撃したほうが良いと思う。


朝日の言い分は「福祉費に充てるために消費税の税率を上げよ」だったはずだが、
実際には、軍事費や公共事業費に多くが使われ、逆に福祉・教育の予算は減っている。

当然、朝日は消費税増税の必要性を力説した自らの責任を取り、
直ちに軍事費を削減し、その分を福祉に充てよと与党を非難すべきなのだ。


それなのに言葉ばかりの「初心を思い出せ!」である。
3%も上げておきながら負担だけ増えた現実を少しも非難せず、
あいも変わらず、「上げろ!上げろ!軽減税率?財源はどうする!」だ。ふざけているのか。
初心に帰るべきなのは朝日新聞ではないのか?

新聞を取らなくても平気な人間など五万といる。生活必需品ではない。
いい加減、新聞社が国民に必要とされているといった下らない妄想から醒めて、
朝日は自分たちも国民と共に増税の負担を背負うことを覚悟してもらいたい。
真に国の未来を案じているのであれば、新聞を軽減税率の対象から外せと叫ぶべきだ。

私は前々から朝日など左翼でもなんでもないと主張していた。
(逆を言えば、朝日=左翼と攻撃している連中が如何に新聞を読んでいないかということでもある)

申し訳程度の反対意見だけ唱えて逃げ道を用意するメディアは、
ある意味、産経や読売のようなストレートに政府に加担するそれよりも一層、性質が悪い。


・追記

共産党の志井委員長は次のようにコメントしている。

「軽減税率というと、あたかも税負担が軽減されるかのような錯覚を呼び起こすが、
 検討されているのは2%の増税でだいたい5兆4千億円。
 そのうち1兆円を軽減しても4・4兆円もの大増税だ
 
 軽減税率という名で大増税という毒薬を
 オブラートに包んで無理やり飲み込ませるようなものだ。


 また、現行の8%から10%となった場合、逆進性は強まるのだから
 逆進性の緩和にもならない。だから理念のない選挙目当ての党利党略の手法だといえる。」

全くもって、その通りとしか言いようがない。
大体、8%の消費税を5%に戻すというわけではなく、8%を10%に上げる話である。
今よりも国の収入が減るわけではないのに「減った分の金をどうすんだよ」と語るのはおかしい。

欧米の民主的空爆 (カンボジアと比較しながら)

2015-12-08 22:05:39 | 中東
とうとうアメリカでは、シリアへの地上軍の派遣を支持する声が半数を超えたようである。

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米国市民の大半が初めてシリアとイラクにテロ組織「イスラム国(IS)」
撃退のための地上軍を送ることを支持する用意を示した。
CNNと調査センターORCの合同調査で分かった。

回答者の53%が地上作戦を容認する用意がある。
これまでこの数字が半数を超えることはなかった。
68%が既に米国が採択している対IS軍事行動は充分に攻撃的ではなかった、と見ている。

カリフォルニアのサンベルナルディノにおける銃乱射(テロ行為と認定されている)により、
地上作戦の遂行を容認する市民が多くなっていると見られている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20151208/1281794.html#ixzz3tjaTlJ9j
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忘れてはならないのが、アフガン戦争にせよイラク戦争にせよ、
これらは国民の圧倒的な支持によって行われたということである。

ある学者は、民主主義は戦争を起こしにくくするためのシステムだと語るが、
 実際には、民主主義は大衆が容認する限り、暴力が維持されるようになっている。

その暴力が国外に向けば、それは空爆になり、国内に向けば差別や弾圧となる。
フランスでは、パリ事件を通じて市民の監視下が進む中、極右政党が台頭しつつある。


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フランスで行われた州議会選挙で、マリーヌ・ルペン氏が党首を務める
「国民戦線」が現時点でトップに立っている。ロイター通信が報じた。


出口調査によると、「国民戦線」の得票率は、
フランス北部と北東部で30パーセントを超えている。
2位は、サルコジ前仏大統領が率いる共和党で
得票率はおよそ27パーセント、3位はオランド大統領率いる社会党。

ルペン氏は、現在の結果を、
フランスにとって歴史的な出来事だと指摘し、「国民戦線」に投票したのは、
「息苦しいシステムの代わりとなるものを明確に選択した愛国者たち」であると述べた。

フランス州議会選挙は2回投票制。今回の選挙は、
全政党にとって、2017年の大統領選挙の前哨戦とみなされている。

州議会選挙第2回投票は、13日に実施される予定。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/europe/20151207/1279946.html#ixzz3tjd0T1gR
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日本の政党で例えるならば、1位が維新の会、2位が自民党、3位が民主党という状況である。
どれだけ危機的な状況か何となく感じ取れるだろうか……

次の州議会選挙で、どの政党が首位を取ったとしてもシリアへの空爆は止まらないだろう。

空爆自体は戦闘機に搭乗するパイロットが行うものだが、
その爆弾はフランス(アメリカ)国民の総意を象徴したものである。


ここで、民主主義の名の下に行われる空爆が如何に偽善的なものかを論じておきたい。

空爆と聞いて、私が真っ先に頭に浮かぶのがカンボジアにおける米軍の空爆である。
カンボジアというと、ポル・ポトの虐殺のほうが有名だし、
大抵の人権運動家や平和主義者はポル・ポトが如何に悪かをこれでもかと書き綴る。

ところが、実のところ、ポル・ポト政権だった1976~1979年の3年間で亡くなった
100~300万人の犠牲者のほとんどは飢餓によるものであり、
直接ポル・ポト政府に殺された数は案外少なく、5~15万程度しかない。

対して、1968年より行われてきたアメリカ軍のカンボジア空爆は大変苛烈なもので、
その投下量は第二次世界大戦中に連合国が太平洋で行った爆撃の合計に匹敵するものだった。

人口密集地に落とされたこともあり、この爆撃では数十万の農民が死亡した
200万の農民が難民になり、田園地帯が破壊されたことで深刻な食糧不足に陥った。

この空爆を支持したヘンリー・キッシンジャーは
動いているものはすべて、飛べるものなら何でも使ってやっつけてしまえ
と発言したが、彼は後にノーベル平和賞を受賞している。

言語学者であり、また有名な批評家でもあるノーム・チョムスキーは、
ポル・ポト政権の3年間ほどカンボジア史において徹底的に調べつくされた時代はないが、
その数年前はどうかというと、ほとんど何も知られていないに等しいとコメントしている。

事実だけを淡々と述べれば、ポル・ポトよりキッシンジャーのほうが人を殺している。
ところが、前者は前代未聞の独裁者として記憶され、後者は平和への貢献者として称えられる。

なんともはや凄まじい話だが、昨今のシリアや列強の空爆に対する意見や世論はまさにこれで、
右翼も左翼もアサド政権やダーイシュ(ISIS)が如何に悪かということを強調した上で、
仏軍の暴力行使を強く求め、懐柔できそうな武装組織を支援し、侵攻にゴーサインを送っているが、
その実、自分たちがこれまで何をしてきたのか、しようとしているのかについて語ろうともしない。

しかも、この態度は誰かに強要されてとられたものではなく、
民主主義国家の中で自発的に共通善として示されたものなのである。

このように民主的に承認され、推進され、歯止めが利かなくなった暴力が現地に何をもたらすか。
言うまでもない。


北朝鮮に帰った朝鮮人はどうなったのか

2015-12-08 21:53:11 | 北朝鮮
総連傘下のニュースサイト「朝鮮新報」は他のサイトと比べると、
それほど頻繁に更新しないが、たまに面白い記事を載せてくるので侮れない。

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<月間平壌レポート>“科学の力で未来を切り開く”
朝鮮の復興を担う人々

【平壌発=金志永】
近年、朝鮮では教育者、科学者のための住宅団地や保養施設が相次いで建設されている。
11月には平壌・平川区域に「未来科学者通り」が竣工した。
約2000世帯が入居する高層アパート群と学校や病院などの公共施設、
商店や食堂など約150の店舗が連なっている。


「こんな立派な家に住むなんて、想像すらしなかった」

金策工業総合大学の教員、キム・スヒョンさん(38)は、
未来科学者通りのアパート入居証を受け取るとすぐさま両親に報告した。
二人は「涙を流して喜んだ」という。

キムさんの父親は1960年代、
両親とともに日本から帰国し、
医大を卒業して心臓外科医になった。


70年代に単身で東海を渡った母親は、外国語大学で教鞭をとった。

キムさんは、両親の影響を受け、幼いころから「科学の道」を目指した。
秀才養成校である平壌第1中学校で学び、金策工大に入った。
卒業後、教員として大学に残ったが、コンピューター技術を
共に学んだ同窓生の中には、IT関連の会社を選ぶケースも少なくなかった。

「会社勤めをした方が経済的には恵まれる。30代になり、
いつまで教員を続けるんだと同窓生に言われて動揺したこともある。
そんな時、励ましてくれたのが両親だった」

キムさんの専攻はコンピューターグラフィックス。
大学生時代にCGを導入した劇映画の制作に参加し、その後もこの分野の研究を続けた。
教員としては、全国教授法コンクールで一位を獲得したこともある。
これらの実績が評価され、2009年に「金日成青年栄誉賞」を受けた。
そして今回、家具付き4LDKの新居が無償で与えられた。

未来科学者通りの住民の内、約700世帯が金策工大の教員の家族だ。
キムさんは、以前住んでいたアパートを出る時、そこの住民の祝福を受けた。
「何と喜ばしいこと」「科学者の息子を持つ親が羨ましい」と声をかけられたという。

党と国家の幹部も未来科学者通りを訪れ、住民を祝福した。
キムさんの新居には副総理が訪ねてきた。

「金策工大の教員であるという誇り、国の未来を担う教育者としての責任を感じる。
 さらに大きな実績をつくり、人々の期待に応えていきたい」

朝鮮以外の国では、教育者や科学者のための住宅を国家予算で建設し、
数千世帯に無償で提供したりしない。社会主義の国だからこそ可能な施策だが、
教育者や科学者が厚遇されているのには、それなりの理由がある。
朝鮮労働党は、自力更生による経済復興を戦略的路線として打ち出している。
他国に依存することなく、自国の力と技術、資源に基づいて、経済の発展を図るということだ。

そのために科学重視、人材重視の政策が行われている。未来科学者通りの建設も、その一環だ。
人材育成、科学発展の担い手たちの生活を手厚く保障し、彼らの研究意欲、
働く意欲をを向上させることに国家予算が優先的に使われている。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/11/20151128riyo/
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この記事を読んで「おや?」と思わないだろうか?
北朝鮮内での在日コリアンの扱いが韓国のそれと比べて遥かに平等なのである。

日本ではテッサ・モーリス・スズキ氏などの一部外国研究者も含めた上で、
いかに帰国事業が間違いであったのかをこれでもかと力説する人物が大半だ。
(というかほぼ全部がそう)

しかし、上の記事に限らず、日本から帰国した朝鮮人が結構、高い位置にいることは
何度か目にするし、実際、金正恩の母親は在日コリアンだと言われている。

そもそも、スズキ氏をはじめた各論者は北朝鮮が国内の労働力を欲して
帰国事業を進めたのだと語るが最近の朴正鎮氏(帰国事業の研究者)は、
帰国事業が開始された時期には国内労働力がすでに足りていたことを指摘している。

私がこれまでに読んだ記事や文献を通しても、労働者階級というよりは、
教師や研究者、あるいは公務員といった中産階級以上の位置にいる人間が多い印象を受ける。
(拉致被害者にしても、話を聞く限りは講師として働いていたようだ)

在日コリアンにも、きちんと市民権を与えている点では日本よりも人道的である。

「総連に騙されたコリアンは差別と貧困にあえいだ」というのが論者の言い分だが、
 むしろ、同時期(50年代末~80年代半ば)においては韓国のほうが厳しい。

当時、軍事政権だった韓国では在日コリアンは「棄民」ということで冷遇されていた。
要するに、国民として扱ってもらえなかったのである。
そればかりか、北朝鮮のスパイと疑われ、逮捕・拘禁・拷問される人間も大勢いたのだ。

他方、今となっては信じがたい話だが、当時の北朝鮮は経済的にも韓国より優れていた。
こういう背景が帰国運動にはあったこと(韓国での弾圧、日本での差別)も見逃せない。

実際には、帰国した時期や定住した地域、本人の能力に応じて
多様な扱いを受けたのだろうと思われるが、詳しい分析と調査ではなく、
とりあえず北朝鮮を悪し様に非難したいという願望を達成させることが目的の言説が非常に多く、
もう少し、冷静というか多角的な分析や評価ができないものかなと思えてならない。

私がスプートニク紙をはじめ、他国(主に非欧米国)のメディアに注目するのも、
日本では決して載せられない言説が読めるからでもある。

英仏の欺瞞に満ちたシリア空爆 (対テロ作戦の真のねらい)

2015-12-07 00:11:52 | 中東
イスラム国(IS、ダーイシュ)を支援していた国として
アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア等が挙げられるが、
先のパリのテロ事件を口実に、この内の半数以上がシリアへの空爆を強化し始めた。

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英国は、シリアにおけるテロ集団ダーイシュ(IS、イスラム国)への攻撃を強化する意向だ。

英国のマイケル・フェロン国防相は、ダーイシュ(IS)に対する攻撃作戦を展開中の空軍機が
離発着するキプロス領内にある「アクロティリ」英空軍基地を訪問し、次のように述べた。

「我々は、ダーイシュ(IS)への攻撃をさらに強める。
 英国政府は、テロリストらの司令本部や彼らの資金源に対する軍事攻撃を求めている。」

2日夜遅く、英国議会は、シリアにおける軍事作戦への自国の参加を承認した。
これを受けて2日から3日にかけての深夜、ダーイシュの陣地への初の攻撃が実施され、
3日から4日にかけての深夜も、作戦は続けられた。

英国防省は、標的となるのは、シリア東部の油田地帯の施設だと伝えた。
なおイラク領内のダーイシュの陣地に対する作戦は、国際有志連合の枠内で2014年から行われている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151205/1276136.html#ixzz3tYJyoQOU

シオニスト政権イスラエル軍の戦闘機が、シリア南部のダマスカス郊外をミサイルで攻撃しました。

パレスチナのゴッツ通信によりますと、
イスラエル軍の戦闘機は、4日金曜、数台のトラックを攻撃しました。
イスラエル当局は、これらのトラックは武器を運んでいたと主張しています。

シオニスト政権の戦闘機は、
これまで何度も、さまざまな口実を用いては、シリア領土を空爆しています。


これ以前に情報筋は、シオニスト政権が、
シリアのテロ組織ISISやヌスラ戦線に武器や資金を提供していることを明らかにしています。

http://japanese.irib.ir/iraq/item/60366
-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%
83%AB%E3%81%8C%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%92%E7%A9%BA%E7%88%86

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以前から指摘していることだが、シリア政府はこの空爆を許可していないし、
そもそも、これら国家はシリアに無断で爆弾を落とし、場合によっては誤爆もしている。

当然、国内でも反対の声は大きい。
例えばイギリスでは国民の約半数(3000万人)が空爆に反対している。

英国のキャメロン首相は空爆に反対する人々を「テロリズムの味方」と規定した。
彼の理屈では、3000万の市民がテロリストの支援者ということになる。

だが、忘れてもらっては困るが、そもそもテロリストを経済的軍事的に支援してきたのは
米英仏・列強侵略トリオおよびイスラエル・トルコ・サウジの中東侵略トリオだ。

イランラジオのキャラミー解説員は次のように語る。


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ISISによるパリ同時多発テロの後、
 まずはフランス、それに続いてイギリスとドイツがシリアでのISISとの戦いに入りました。

 ~中略~

イギリスとフランスは、
シリアのISISに対する空爆を自国の安全を保障するものとみなしている中で、
この5年間、テロの危険の拡大とこれらの国でのテロリストの活動を事実上黙認していました。


イギリス、フランス、ドイツは、シリアとイラクの
ISISの拠点に対する空爆によりアメリカの対テロ連合の作戦に参加していますが、
この連合は基本的に、2014年12月の結成時から多くの曖昧な点を含んでいます。
 
この連合のこれまでの行動は、ISISの弱体化や消滅の助けにはなっていません。

シリアやイラクのISISの拠点に対するアメリカ率いる連合の偏った攻撃、
対ISIS作戦の一方でのこのグループへの支援は、この連合の存在を見せかけのものにしています。

アメリカの対ISIS連合の失敗の経験に注目すると、
イギリスとフランスのシリア空爆への参加が実を結ぶことはないでしょう。
 
なぜなら、この攻撃は、
シリアのアサド合法政権との調整によって行われていないからです。


シリア領空でのイギリスとフランスの利己的な動きが、イギリス国防大臣の言うように、
イギリスやヨーロッパの他の国々の街中を安全にすることはないでしょう。

なぜなら、アメリカの対ISIS連合の存在にも拘わらず
パリの街頭がISISの攻撃に晒されたからです。


テロとの実際の戦いは、シリアの現政権と軍隊との協力にかかっています。

ロシアとイランによるテロとの戦いでのアサド政権への協力は、
この悪しき現象との闘争の真の戦線を示しており、
シリア各地へのISISの影響力を弱めることにつながっています。
(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/60420)
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シリアのアサド大統領は、
大統領はイギリスとフランスのシリア空爆は違法で無意味なものだとし、
「イギリスとフランスは、シリアのテロリスト支援の筆頭にいる」と述べた。

実際、英仏は武装組織への支援を止めていない。
これについてモスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ氏は次のように説明する。


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ところでここ数日、ダーイシュの石油インフラへの爆撃に英仏が加わった。

英仏の動機は異なる。
オランド仏大統領はテロリストらに
先日のパリへの攻撃の見せしめを行う断固とした姿勢を示そうとしている。


キャメロン英首相にはダーイシュに対する勝利者のひとりとなり、
シリアの将来を決める権利を得たいという目論見がある。


キャメロン氏はオバマ氏と同様、シリアの将来をアサド氏抜きで描いており、
米国と同じように現シリア政権に反対して戦う他の武装集団をテロリストとして認識することも、
これに攻撃を行うことも拒否している。



それだけではない。
反アサド派にアサド体制転覆を、またはシリア領土の一部を強奪するのを幇助するため、
米英はどうやら今、NATOの陸上部隊をシリア領内に送り込むことをたくらんでいるらしい


言い方を変えると、
テロリストらには西側が嫌うアサド氏をどかすことが出来なかったため、
西側のテロリスト庇護者らは今度は自ら乗り出して国家テロを起こそうとしている
ことになる。

テロを相手にした戦争に加わるにあたり、
日本が絶対に理解しておかねばならないのは、このゲームの非常におかしなルールだ。

テロリストと認証されるのは
欧米や他の「文明国」に攻撃を仕掛けた人間だけであり、
シリア、ロシア、中国にテロ攻撃を行う者らは
自由や民主主義を勝ち取ろうと立ち上がった「文明人」と見なされる。


問題なのはこうした「戦士(文明人)」らは
よくコントロール下から外れてしまい、欧米の一般市民を殺害しはじめるということだ。


もし日本がテロリストを「悪者」と「善玉」に仕分けるとすれば、
日本も裏切り者らの標的になりかねない。こうした裏切り者は
西側から資金と援助を喜んで受け取りながらも、やはり西側の文明、
これに日本も相当するのだが、これを敵ととらえ、勝利を手にするまで戦うべしと考えている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151205/1275551.html#ixzz3tYQTcpzA
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イワノフ氏は「コントロール下から外れてしまい」と述べているが、
私はイスラム国といっても一枚岩ではなく、列強が同組織の派閥抗争を利用して、
親NATO派を支援しながら反NATO派の拠点を攻撃しているのではないか
と考えている。

実際、これまで歴史的に列強諸国家は、
自分たちに従う「レジスタンス」を利用して邪魔になりそうな「ゲリラ」を潰してきた。

典型的なのがインドネシアの事例で、スカルノ政権を転覆したスハルトは
アメリカのお気に入りだったが、彼が真っ先に着手したのが国内の共産党党員の虐殺だった。

コンゴではアメリカとベルギーは、後に「アフリカ最凶の独裁者」と呼ばれるモブツを支援し、
当時国民に人気のあったルムンバを暗殺、政権を掌握した。
モブツはこの功績を称えられ、ケネディから功労勲章を得ている

モブツはルムンバと同じ組織に所属する人間だった。
スターリンとトロツキーのそれが典型的だが、組織である以上、派閥の抗争は避けられない。
歴史的に列強は常にグループ内の対立を煽り、巧みに利用して自己の支配を拡大させてきた。

ISISは巨大な組織で、シリア、イラク、アフガン、トルコと広範囲で活動している。
当然、派閥はあるはずで、今回の英仏の空爆もまた、ISIS組織内の反米、反仏派を一掃し、
自分たちの言うことだけを聞く人間に実権を握らせようとしているのではないだろうか?

無論、これは推論にすぎないのだが、パリの事件以前に、
ヌスラ戦線へのロシア軍の空爆を「穏健派の攻撃だ」と非難する一方で、
アフガンのタリバンを「反政府組織」と称して撲滅に励んでいた様子を見ると、
同じアルカイダ系でも敵と味方をその時々の都合で区別している気がする。

実際、彼らが攻撃しようとしている組織は、
ISIL→ISIS→IS→ダーイシュと日本維新の党並みに次々に分裂・統合・改名しており、
ダーイシュを攻撃することはダーイシュと敵対する過激派の援護へとつながるのである。

列強に逆らわないテロリストを支援し、体制を転覆させ、自国に有利な軍事・経済協定を結ぶ。
19世紀から続く列強の帝国主義は健在だ。グルジアやウクライナの教訓を私たちは忘れてはならない。

留意すべき事実は、こういう狡猾で残忍なゲームの仕掛け人が民主主義国家だということ
民主主義は完全無欠の政治システムではない。そのことを忘れ、善悪二元論で他国を貶め、
独善的な態度で非西欧型国家を攻撃しつづける姿勢は断じて許すわけにはいかない。

ロンドンでイスラム教徒への暴力が激増中

2015-12-03 00:29:49 | 中東
イギリスの首都ロンドンで、イスラム教徒に対する暴力が増加しています。

イルナー通信によりますと、ロンドンの警察は30日月曜、報告の中で、
この一年の間にイギリスの首都ロンドンでの
イスラム教徒に対する犯罪や暴力が47%増加した
としました。

この報告はさらに、
昨年10月から今年の10月にかけて、845件の犯罪が報告されたが、
 その前の年の同じ期間の統計は576件だった
」としています。

さらに、
フランスの首都パリで起こった同時テロにより、
 こうした暴力が増加している
としました。

これについて、イギリスのイスラム教徒の権利擁護団体・テル・ママは、最近、報告の中で、
「フランスのテロ以来、イギリスではイスラム教徒に対する犯罪や暴力が300%増加した」としています。
さらに、「この暴力の最大の犠牲者は、イスラム的な装いを身につけた女性たちだ」と報告しました。

11月13日にパリで起こった同時テロで、少なくとも132人が死亡、352人が負傷しました。
テロ組織ISISがこれらのテロ攻撃の犯行を認めています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/60267-

ヨーロッパには歴史的にイスラム文化に対する偏見が存在する。
ムスリムに対する差別を「イスラモフォビア」、ロシアに対するそれを「ルソフォビア」と呼ぶ。

この二つは未だに欧米社会に根強く残っているが、それらが
ここ最近の国際情勢の影響を受けて、ますます激しくなっているといった印象を受ける。

フランスの港町、カレーでは難民キャンプが放火されたそうだ。
どこの国にも極右がいるという好例だが、フランスのそれは他国よりも激しく感じる。

住処を焼かれた難民にとって、これはテロ行為以外の何物でもないのだが、
こういう事件を好意的に受け入れるネトウヨ(及び極右系まとめサイト)って凄すぎる。
(「難民キャンプ フランス カレー 放火」と検索をかければ、ヒットする。正直、紹介したくないのでURLは貼らない)

なぜトルコはロシア軍機を攻撃したのか?

2015-12-01 00:19:17 | 中東
トルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件。同事件をきっかけに露土関係は急速に冷え込んだ。

トルコ側はロシアが領空侵犯をしており、
10度にわたる警告に応じなかったために攻撃したと語っている。

ところが、後の調査で領空をロシア戦闘機が通過した時間はわずか17秒だったことが判明した。
つまり、17秒の間にトルコ軍は10回も警告を発したことになる。これは明らかにウソだろう。

トルコが攻撃した背景として、ロシアやイランではトルコのIS(ISIS)支援を挙げている。
確かに、トルコはサウジアラビア、アメリカ、イスラエルと並び、ISを支援している国家だ。

シリア国内でIS兵として戦う外国人傭兵の大多数はトルコ領内から入っている。
トルコ政権の黙認なしに、これだけ多数の武装戦闘員が国境を越えられはしない。

また、IS戦闘員の武器はトルコ領を通って供給されており、
トルコ政府自体がシリア産石油を現在進行形で奪取し続けており。
その石油はすべてトルコのエルドガン大統領の息子の所有する企業に供給されている。

そして、ここが肝心な点だが、トルコは、ロシアがISが所有する、
石油を積んだトラック500台以上を破壊した途端に態度を激変させた。


このような状況からトルコの攻撃的な姿勢がロシアのIS攻撃に起因すると考えるのは自然だ。
また、フリー・ジャーナリストの田中宇氏はIS以外の過激派への攻撃も原因の一つとみなす。

田中宇氏:トルコの露軍機撃墜の背景

だが、私はこれとは別の理由がある気がしてならない。

ISにせよヌスラ戦線にせよ、ロシア軍が攻撃する過激派は所詮はトルコ国民ではない。
確かに民族的な繋がりはあるかもしれないが、現在、トルコはロシアと共に
天然ガスをロシアから供給するためのパイプラインを建造している最中であり、
経済的にロシアの存在が無視できないこのタイミングで、
わざわざ他国のテロリストのためにロシアと険悪な仲になる挑発をするだけの義理がない。

つまり、ロシアと敵対してなお得られる何らかのメリットがない以上、
ここまで強硬な態度をいきなり取る理由が見つからないのである。


では、そのメリットは何かと言う話になるが、
ここで考慮すべきなのが、もともとトルコがNATOの所属国であることだ。

ここで前述の田中氏の評論を引用しよう。

「トルコはNATO加盟国だ。NATOは、加盟国の一つが敵と戦争になった場合、
 すべての同盟国がその敵と戦うことを規約の5条で義務づけている。

 そもそもNATOはロシア(ソ連)を敵として作られた組織だ。
 戦闘機を撃墜されたロシアがトルコに反撃して露土戦争が再発したら、
 米国を筆頭とするNATO諸国は、トルコに味方してロシアと戦わねばならない。
 これこそ第3次世界大戦であり、露軍機の撃墜が大戦の開始を意味すると重大視する分析も出ている。
 ロシアとNATO加盟国の交戦は60年ぶりだ。

 ここ数年、米欧日などのマスコミや政府は、ロシア敵視のプロパガンダを強めている。
 NATO加盟国のトルコの当局は、ロシアと対決したら世界が
 自国の味方をしてくれると考えているだろう。だが、私の見立てでは、
 世界はトルコに味方しにくくなっている。今回の露土対立は、世界大戦に発展しにくい。」

田中氏はフランスもIS掃討に本腰を入れるようになったこの状況で、
国際社会がトルコを支持するのは考えづらいと述べている。

NATOとの関わりに注目する点までは私も田中氏と同じだが、同氏の見解では
なぜフランスとロシアが協力してIS掃討に乗り出したこの時期に攻撃を?
という問いに上手く答えられないような気がする。
ロシアがISを攻撃し始めたのは大分前だから、仮に攻撃するならもっと前に行ったはずだ。

ここで気にすべきことが、
フランスやアメリカがロシアと協調しなければならなくなった時期と
トルコが両国に代わってロシアを非難し始めた時期が一致する
という事実だ。


つまり、パイプラインの建設を犠牲にするだけの意味がある何らかの利益を受けることを条件に、
トルコがロシアの空爆を非難する役目を米仏から引き継いだのではないだろうか
と思う。

実際、ウクライナではパイプラインの建設は中止になったが、
その代わり、キエフ政権はアメリカを中心に経済的軍事的支援を得ることが出来た。

ウクライナもトルコもNATOの従属国であることを踏まえれば、
米仏が表面的には協力しながらロシアを攻撃するためにトルコを利用するのは十分有り得る。

以上、状況証拠からトルコの攻撃の背景を推測したが、
今後、仮に米仏が何らかの支援をトルコに行ったりすれば、この読みは当たりとなるだろう。
(逆に米仏がロシアに味方してトルコを非難すれば外れたことになる)


最後に、本記事とは無関係の内容だが、今回の田中氏の記事、
実は、スプートニクの徳山あすか記者が同氏のホームページから
そのまま転載したものらしいのだが、それって記者としてどうなのだろう?

完全にボランティアであり、取材費も時間もない個人が非営利目的で行うなら理解できる。
しかし、仮にもプロの新聞記者がネットの記事をそのまま引用って……手抜きすぎだろう。

この徳山記者は前から単なるインタビュー記事を、
それも日本の保守系知識人からインタビューしたものを編集して掲載するだけの
アルバイトでも出来そうなことばっかりしていて、記者としては3流だと思っていたが……

実際、リテラの梶田陽介記者と比べると、梶田記者が関連図書を読み、
きちんと基本を学んだ上で取材を行い、記事にしていることは容易に想像できる。

自民党が持ち出した「共謀罪」の危険すぎる中身!
テロ対策は嘘、トイレ落書き計画リツイートするだけで逮捕も


これなどを読むと、取材相手の言葉だけでなく、
地の文でも(つまり梶田記者自身が)共謀罪について解説を行っているのだが、
徳山記者の場合、取材相手の言葉だけで説明されており、
テープの内容をそのまま文章にしただけだということがすぐにわかる。

元産経の記者らしいリュドミラ・サーキャン氏もそうだが、
スプートニク紙には、なぜか右派の人物も混じっており、
それは中立的といえばそうだが、日本とは別視点の解説を行うという
このメディアの最大の特徴を台無しにしているような気もする。

北朝鮮がミサイルを飛ばしたと言っているけれど・・・

2015-12-01 00:11:59 | 北朝鮮
肝心の情報源が韓国の国情院。
しかも、証拠はなく、全体像は捉えていないという曖昧な情報らしい。

繰り返し語るが、この国情院は証拠を捏造して野党を強制解党させるわ、
大統領選の際に、パク・クネの政敵を誹謗中傷するコメントを60万件もツィッターで拡散させるわ、
その前身にあたるKCIAは軍事政権時代、無実の人間を逮捕・拷問するわと何かといわく付の機関だ。

ちなみに、日本でも話題になったセウォル号の事故においても、
この国情院が証拠を隠蔽したのではないかという疑いが向けられている。

「国家情報院、セウォル号就航2週前の保安測定予備調査を隠蔽」

イ・ジェミョン城南市長「セウォル号オーナーは国家情報院」と主張

しかも、この国情院は司法機関まで手中に収めており、
事実上、この機関を検察や裁判所が裁くことが出来ないシステムが出来上がっているのだ。

国家情報院が裁判官任用時に面接…事実上の思想検閲


このように国情院が冷戦時代から続く秘密警察であることを踏まえれば、
ここから発せられる北朝鮮情報が如何に胡散臭いものであるかは言うまでもないし、
実際、これまでにもいくつもの誤報をこの機関は拡散している。

ここで、北朝鮮のミサイルの話に戻すと、通常、
北朝鮮は何らかの実験を行った場合、自国のほうから外部に向けて発表する。
例えば、今年の5月には潜水艦発射式の弾道ミサイル発射に成功したという発表があった。

また、タイミング的にも米韓合同軍事演習などの挑発行為を相手国が行った場合に、
カウンターとして飛ばすことが多い。ミサイルを飛ばすにも口実が必要なわけである。
それを踏まえれば、両国の高官同士の対談が決まったこの時期に実験を行うのは不自然だ。

最後に、ここ最近の韓国政権の典型的な独裁政治に触れる必要がある。

ここ二ヶ月、韓国政府は民衆デモを弾圧したり、
民衆を扇動したと称して労組や左派系知識人の強制家宅捜索を行ったりしていたが、
パリの事件以降、テロ対策の名のもとに監視体制の強化と軍拡に乗り出している。

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韓国の諜報機関は、テロ組織「IS(イスラム国)」を支持する韓国人10人を摘発した。
このニュースは、韓国の朴大統領が、
14年間も待たれているテロ関連法案の早期成立を議会に求めたのとほぼ同時に報じられた。

韓国当局は近年、国際テロリズムに関与した疑いで外国人48人を国外退去処分にした。
また最近、国際テロ組織「アルカイダ」と関連を持つ疑いで、
偽造パスポートを所持していたインドネシア人が逮捕された。

(中略)

政府の政策に不満を持つ労働組合の代表者たちが集会を開き、警官と衝突する事件が発生した後、
保守政党「セヌリ」党は集会やデモにおける覆面の着用を禁止する法案の成立を目指す意向を表した。

一方で最大野党の「新政治民主連合」は、このような法律が反対意見を持つ人々を
取り締まるための国の情報機関の「束縛を解く」可能性があるとして懸念を表している。
朴大統領は、「暴力的な抗議行動の根絶」を呼びかけている。

朴大統領によると、テロ組織「IS(イスラム国)」との戦いが強まっている今、
テロリストが違法集会で参加者の中に入り込み、韓国市民に脅威を与える恐れがあるという。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151126/1231530.html#ixzz3szEuykTj
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パク大統領は北朝鮮からの対話の呼びかけに応じる一方で、
11月23日には軍部に戦闘準備体制をしくよう呼びかけてもいる。


そして現在、北朝鮮を迎撃するための新基地の建設に励んでいる

「韓国の済州島南部で建設が進められている新たな海軍基地は、
 北朝鮮から挑発を受けた場合に、軍艦の展開時間を短縮することができる。
 韓国の聯合ニュースが報じた。

 基地の建設は、約96パーセント完了しており、2016年1月にも公式に稼働する見込み。
 韓国軍関係者が聯合ニュースに伝えたところによると、
 艦艇は済州島の基地から延坪島の海域まで、釜山にある主要基地から出発するよりも
 6時間早い、わずか15時間で到着できるという。

 延坪島は韓国と北朝鮮の海上の境界線に位置しており、
 そこでは定期的に南北海軍間の争いが起こっている。特に2010年に緊張が高まった。

 続きを読む http://jp.sputniknews.com/asia/20151130/1250641.html#ixzz3szGWkFDz」

簡単に言えば、新基地の稼動が予定される直前のこの時期に、
高官同士の対話が始まり、両国との間で雪解けが始まってしまうと、
莫大な予算を費やして建設した新基地の意義がなくなってしまう。


最悪の場合、北朝鮮の呼びかけに応じて建設中止・稼動の見送りもあり得る。

両国が和解にむかって歩き出そうとする一方で、着々と反北体制が敷かれる
このタイミングで国情院が動き、北朝鮮のミサイルが発射されたと騒ぎ出す。
韓国と北朝鮮、どちらにとって都合が良いあやふやな情報かは言うまでもなかろう。

断言できるが、韓国政府は、この後、今回の「ミサイル失敗」を口実にして
和解に応じようとしたけれど、やはり無理だという姿勢を見せてくるだろう。

そのための曖昧な情報だと言える。