時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

キューバの有機農業④

2015-05-07 23:24:06 | キューバ・ベネズエラ
今まで、キューバ研究所の新藤氏のおかしな部分について指摘してきたが、
簡潔に述べれば、無知か故意かは知らないが事実とは異なる指摘があり、
また、その引用する情報も恣意的だということが言えよう。


特にキューバの有機農業を高く評価するものを
有機農業への幻想的な願望によるキューバ訪問とその報告記」とみなすのは如何なものか。


大変申し訳ないが、都合の悪いエピソードは「体制派の人間の言葉だ」
「上手くいっているところにしか案内されないのだ」と延べ、都合の悪い統計は「捏造だ」で
すます一方で、自分にとって都合の良いエピソードは逐一紹介するのは学者としてどうよと思う。


もちろん、キューバ社会は問題が山積みされており、そういう負の部分はあまり語られないので、
その点では氏の様な批判的意見は貴重であり、傾聴に値する。有機農業もしかりだ。


有機農業はキューバの食糧事情を解決する万能薬ではない。
しかし、キューバの食糧事情(特に都市部における)に貢献するものである。


この点から、ハバナ農業大学をはじめとして、国内でも農業研究が行われている。

氏のように何でもかんでも否定的に捉えるスタンスは、
結果としてアメリカのキューバ制裁を正当化させてしまうのではないか?



新藤氏の言葉を読むと、我が国の中国や北朝鮮に対するそれと似たものを感じる。

例えば、北朝鮮では食糧事情を解決するために国が総力を挙げており、
結果的にここ数年で少しずつ生産量がアップし、かつ市場の部分的導入により、
余った収穫物は各農家が好きに売っても良いという風に変化した。

ところが、ほとんどの論者はこの点に全く触れずに、やれ飢餓だ、やれ餓死だと囃し立てている。


新藤氏はこれとよく似ており、農業のほかにも医療や教育についても、
ここも悪い、ここも腐敗している、これも問題だと一生懸命だ。


それも、どちらかというと、手放しの礼賛者と同様に、一部分を極端に強調している。
これは悪い点を知るにはある程度参考になる(誇張されている面も否定できない)


だが、大変申し訳ないが、私は90年代の冷戦終結以降、
キューバ人が金を求めることしか考えない連中になったと主張する彼の主張は受け入れられない。


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80年代のキューバでは、普通、家族は3,000~4,000ペソ貯蓄がありました。
それぞれが、職場を定時に終わり、友人や家族と談笑したり、映画や音楽会に行ったり、
ゆっくりと生活を楽しみました。バケーションは年間1カ月とって、海水浴場に行き、
リフレッシュしました。ないものは融通し合い、助け合い、市民の間に連帯感がありました。
「黄金の時代」と言われるゆえんです。

しかし、ソ連・東欧の経済が急激に悪化し、これらの国々からの資材の輸入が激減し始め
たキューバでは、1990年8月「平和時の非常時」が宣言されました。各種の生産が低下し、
食糧生産が減少するとともに、インフレが急上昇し、20年間で実質賃金は、
かつての5分の1に低下しました。つまり、普通の賃金だけでは、生活できなくなったのです。

あるものは、海外からの家族送金に頼り、あるものは観光関係の職業で得られるチップでカバーし、
あるものは、外国企業に勤めて正規以外の賃金を取得し、あるものは、特技を生かして
家庭教師や修繕サービスで副収入を得たり、あるものは、勤め先でモノを横流しする、
レジで売り上げをごまかす、賄賂を得たり、便宜を供与してもらったりして対処しています。

横流ししたり、国のものを盗んで手に入れたりすることを、
「解決する」という言い方で表現するようになりました。

一方、政府は、こうした社会現象を見て、1993年から自営業を大幅に認める政策を打ち出し、
現在、自営業者は、20年で20倍増加して42万人に達し、
経済活動人口510万人の10%近くになろうとしています。

実際、ハバナ市では、各地にパラダール(民間のレストラン)、
露天商、各種修理店が目につくようになりました。

外国人観光客は、1990年の30万人から10倍の300万に達し、
観光客向けのいろいろな商売が目につきます。
観光客のもっている日用品をキューバ人も見て、羨望心がかきたてられます。

自営農は、この5年間で5万人から22万人に増え、未利用地の使用権を取得した
新たな農民の中にニューリッチ層が生まれつつあります。

こうして、キューバは、残念ながら、それぞれが、
カネ、カネ、カネとより多くの収入を追い求める時代になってしまいました。
思いやり、連帯が忘れられ、何よりも自分と家族の問題を解決することが最優先の社会となりました。

(ラウル議長も嘆くキューバ社会の実態より)
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重要なのは、前回の記事で紹介したように、この増えつつあるニューリッチな自営農が
実は新藤氏が批判している都市の有機農業者である
という点である。

こういう都合の悪い部分をサラッと流すのは絶賛者と大差ない態度だろう。


今のキューバ社会は徐々にだが市場化されている社会であり、
自由経済の中で淘汰された人間に対するケアが不十分だという意見なら納得できる。
(それも、この不十分さは長年の経済制裁と金融制裁、国際政治からの迫害に大きく起因する)

だが、「キューバは、残念ながら、それぞれが、カネ、カネ、カネと
より多くの収入を追い求める時代になってしまいました。思いやり、連帯が忘れられ、
何よりも自分と家族の問題を解決することが最優先の社会となりました。」と断言するのはおかしい。


例えば、日本でイジメを黙認したり、時には率先してイジメる教師がいたからといって、
日本の教育は最悪なレベルにまで堕落したと結論付けられるだろうか?

新藤氏の言葉は、それと同じで極端なのである。

(そういう無茶な主張をするため、氏はキューバの市場の導入が社会の悪化を招いたと
 主張する一方で、さらなる市場化を望むという矛盾した態度を取っている)


教育も駄目!医療も駄目!農業も駄目!
自分たちが悪いのにアメリカの経済制裁のせいにする!国民は金の亡者!


こういう主張を聞いて喜ぶのはどこの国だろうか?
問うまでもない。


次回、キューバ批判者の致命的な問題点について語ろうと思う。

キューバの有機農業③

2015-05-07 23:15:21 | キューバ・ベネズエラ
キューバ研究者の新藤通弘氏いわく、日本人しか注目していないキューバの有機農業。


今回は、アメリカの農業NPO、ロデール研究所からの記事を紹介したい。


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キューバ革命から約30年後の1991年、ソ連が崩壊し、
キューバはほぼ一夜にして絶望的な食糧危機に陥りました

~(中略)~

この危機を緩和する主要な戦略の一つとして、都市に住む人たちが、都市農業を実施しました

――人々は裏庭を耕したり、放棄された土地や、閉鎖された製糖工場の敷地を、
持続可能な野菜生産や林業などの用途に解放することによって新しい命を吹き込んだのです。


政府が危機的な状況への対応策として自由市場を刺激したために、
今ではハバナ市内で十分な量のオーガニック農産物が育てられ、
250万人の市民一人ひとりに、毎日最低300グラムの果物と野菜が供給されています


私たちが会った都市農家の中には、
とても安定した職を離れ、初めて農業に従事することになった人もいました。

例えば、私たちは「チュチョ」という人に会いました。チュチョは、以前は獣医だったのです。
彼は、当初、自分の子供たちを食べさせるために農業に転向しました。

彼が言うには「1日に卵1個しかとれなくて、それを子供2人で分け合うという状況に気づいた時、
手遅れになる前に何かを変えようと決意したのです。」とのことです。

彼と以前化学者だった彼の奥さんは、今では2つの農場を経営していて、
前の職業で得ていたよりもずっと多くの収入を得ています。



もう一つの戦略というのは、大規模国営農場を小規模の協同組合に分割してきたことです。
それは協同生産基礎単位(UBPC)と呼ばれているものです。


私たちは55軒の農家を雇っているUBPCの一つを訪ねました。

彼らは合計約3.2ヘクタールの土地を耕作していて、
それぞれの農家の収入は、国民の平均月収の約4倍です。

彼らは食物を一般の市場で販売する前に、社会義務の一端としてまず地域の学校、
病院、老人ホームに供給しなければならないという事情があるにもかかわらず、
こういった成果をあげているのです。


キューバにおける都市農業成功の鍵は、農場が生産物を買う顧客の家の近所にあるということです。

例えば、私たちが会ったもう一人の「アメリカ」という名前の農家は、
自宅近くの土地を隣人の助けを得て耕作しています。
彼女は社会義務を果たしたあとで、改装した鉄道車両で農産物を売っています。
かつての鉄道車輌も、今や道沿いで、野菜直売所として活躍しているのです。

ハバナ内外のあちこちにあるこのような野菜の販売所が、
毎日、数百、数千というお客さんを引き寄せているのです。



都市農業成功のもう一つの鍵として、この国が大学の学外教育活動の改革と活性化に取り組み、
現在にまで至ったことがあげられます。この国のいたる所で、学外教育者と呼ばれる人たちが、
本来は「解放」と称される「民間教育」のモデルを厳格に守っているのです。

このモデルでは、教師が生徒より重要だと考えられることは決してなく、
教師も生徒もその過程で共に学び、経験を共有するのです。


キューバにおける学外教育の本質的な目標は、
伝統的な生産体系に新たな技術を織り込んでいくことです。

農家というのは何をどのように生産すべきかについて一番正しく判断できる人だと考えられています。
ある学外教育者が言ったように、「農家は自分が食べないようなものは育てるべきではない」のです。

キューバの持続可能な畜産生産の達成率は、野菜と果物のそれに比べると遅れています。
もっとも、豚肉と鶏肉の生産が、今では小規模農家のより多様化した農業体系で実施され始めていて、
キューバ危機以前の水準に達しているというのは目を見張ることです。

その頃はすべての家畜が従来通りの柵で囲われた施設で育てられていました。
キューバで実施された大学の調査によると、牛20頭で行う酪農が
最大の効率を上げると結論づけられました(なお、この調査は
彼らが開発した持続可能性指標を用いて行われたものです)。

http://newfarm.rodaleinstitute.org/japan/features/200304/200304052Cuba/SJ_cuba.shtml
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前回、新藤氏の主張におかしな点がいくつかあると述べ、
その1つとして「キューバの有機農業に注目しているのは日本だけ!」を挙げた。


氏の奇妙な主張は他にもあり、例えば、上にもあるように
キューバ農業を支持する人間は、都市での自給が可能であることに触れているのに、
新藤氏は国全体の自給率に言及して、自給率100%など神話に過ぎないと述べている。



他にも、キューバを実際に視察して高い評価を下した人間には
上手くできている所だけ案内してもらっているのだ」と述べ、
キューバの食糧自給率が上昇したという統計結果については
捏造されたデータだ」と述べている。


その一方で、自分と話した学者や農家や議員の話を持ち出して、
「キューバの農業は上手く言ってないと現地の人も言っている」と主張する。


こういう都合の悪い証言や統計を嘘だの捏造だのと言って無視をし、
他方、自分に都合の良い意見は事細かに取り上げる態度は、
中国政府の批判者の声をピックアップして
「ほらね、中国の人も自分の国がおかしいって思ってるんだよ」と語る右翼によく似ている。



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筆者(新藤)は、キューバ現代史研究を専門としていますが、結論からいいますと、
「世界の視線が熱くキューバ(の有機農業)に集まっている」という実情はありません。


ここ5年間キューバ国内も含めて発行された研究書(英語・スペイン語)の中で、
キューバの有機農業を専門的に論じた本も、論文も見たことはありません。

http://estudio-cuba.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-c21a.html
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ところが、この記事が書かれた2011年の12月に
フロリダ大学から研究書が出ちゃったのだ。



もちろん、「記事が書かれたのは7月だろ」と反論することも可能だが、
研究書がないから注目されていないというのは論理が飛躍しているだろう。


キューバの有機農業が日本に紹介され始めたのは2003年ごろだが、
この時期には英語論文でもキューバの有機農業に着目したものが多く執筆されている。
(Googleスカラーで検索をかければ、容易に気がつくことだ。)

新藤氏が批判している吉田太郎氏の著作はちょうどこの時期に執筆されたもので、
「キューバの有機農業が世界で注目されている」という主張はこの意味において正しい。


新藤氏の反論は吉田氏の発言された当時の状況を無視したものだ。


さて、件のフロリダ大学からの研究書(Sustainable Urban Agriculture in Cuba)だが、
この本は、著者のSinan Koont氏が数年をかけて
キューバの都市農業をフィールドワークした研究結果をまとめたもので、
新藤氏が語る「有機農業への幻想的な願望によるキューバ訪問とその報告記」とは
レベルそのものが違うものである。

次のサイトでPDF形式で入手できる。英語に自身がある人はイントロダクションだけでも読んで欲しい。
(http://muse.jhu.edu/books/9780813040431/)


この学術書は、新藤氏がキューバの農業事情を知るための
参考文献リストに書かれていない
ものなので、その意味でも読む意義はあるだろう。
意図的にリストからはずしたかどうかは不明。本人のみぞ知る)

学者だけでなく、アメリカのジャーナリストたちも有機農業に注目している(2013年時点)
http://pulitzercenter.org/projects/cuba-agricultural-sustainability-government-economy-organoponico-vivero-alamar

アメリカという国は実に不思議な国で、
政府は侵略主義丸出しのくせに、個人は参考になる意見を提言する人がそれなりにいる。
実際、サイードやチョムスキーもアメリカの知識人だ(問題は彼らの意見が無視されていることだ)


ちなみに、新藤氏はハバナ大学のリカルド・トレス教授の話を取り上げて、
自説の正しさを主張している
が、ハバナ農業大学の持続農業研究センターのルイス・ガルシア教授の
話は載せていない。同じハバナ市内に大学があるのだから、足を運んで話を聞けば良いのに。


ガルシア教授は「キューバ式持続農業」と題し、次の提案を行っている。

・総合的病害虫管理(IPM)・有機肥料およびバイオ肥料
・土壌の保全および回復 ・馬や牛など動物を耕耘に活用
・間作および輪作 ・作物生産と牧畜とを組み合わせた混合農業
・代替となる機械化 ・都市農業、および地域の参加
・地域の事情に合った代替の獣医学 ・土地の協同利用の促進
・農業研究の改善 ・農業教育の改革


新藤氏の最もおかしな点は、キューバの農業学者……というか、
キューバ政府が予算を下ろして持続可能な農業研究をわざわざしているにも関わらず、
まるでキューバ政府が有機農業を軽視しているかのような論調を示していることだ。


もちろん、立場によって取り上げたい人物は自ずと選択されるので、それ自体はおかしくないのだが、
できるだけ客観的な資料にもとづいてキューバの真実をお届けしたいというサイトの説明は
一体どこに行ってしまったのかなと思わなくも無かったりする。

キューバの有機農業②

2015-05-07 21:50:25 | キューバ・ベネズエラ
恐らく、日本語で読める最も「バランスの良い」キューバ情報サイトは、
「キューバ研究室」だろう(http://estudio-cuba.cocolog-nifty.com/blog/)。


このサイトは現役のキューバ研究者が何人かで運営しているブログで、
キューバに関する最新情報を読むことができる。講演会の情報も掲載されている。


しかし、このサイトは参考になる情報も多い一方で、首を傾げたくなる主張も散見される。
例えば、キューバの有機農業に関する説明は、一面的というか極端に感じた。


キューバの有機農業は「世界的に」有名で、
日本でもキューバといえば有機農業として紹介されることが多い。


この場合、キューバの農業政策を褒める意味合いで語られるのだが、
同サイト執筆者の新藤氏によると、キューバの有機農業が凄いというイメージはゲバラに憧れ、
社会主義政権に夢を見たい左翼の願望から来たもので、実際には惨憺たる状況であるらしい


実際、キューバの有機農業はソ連崩壊後に同国からの支援が得られなくなり、
同時にアメリカからの経済制裁によりキューバの貿易能力が極端に制限されたために、
やむを得ず始めたものであり、悪く言えばその場しのぎのものでしかない。

有機農業といえば聞こえは良いが、大量生産するにはコストがかかり、
品質も劣るので商品作物としては不十分だし、作物の種類も限られているので、
これだけで国内の食糧事情を万事解決できるかといえば、そんなことはない。


その意味では、新藤氏の説明はその通りなのだが、言葉の端々に違和感を覚える。

例えば、同氏によると、実際にキューバ農業を視察して高い評価を下している人物は、
キューバのイメージアップのために良く出来ている農場だけを案内されていることになり、
キューバの農業に注目しているのは日本ぐらいなもので、世界的に有名なわけではなく、
キューバの学者は、自国の農業が最悪のものだと告白しているということになる。



ところが、実際には、キューバの農業は国連にも評価されている。
http://www.unep.org/greeneconomy/SuccessStories/OrganicAgricultureinCuba/tabid/29890/Default.aspx

それどころか、食糧保障運動に携わるアメリカ人たちにも理想視されている。
http://civileats.com/2010/04/21/the-exceptional-nature-of-cuban-urban-agriculture/

もちろん、この礼賛はキューバとアメリカのシステムの違いを無視したものであるのだが、
少なくとも「キューバの有機農業をベタ褒めするのは日本だけ!」という主張は間違っている。


そればかりでなく、新藤氏はアメリカの経済制裁を軽視しており、
それは政府によるプロパガンダの一種として無視を決め込んでいる。


実際にはどうか?

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しかし、キューバ革命から約30年後の1991年、ソ連が崩壊し、
キューバはほぼ一夜にして絶望的な食糧危機に陥りました

――が、それは、農業改革の速度を劇的に加速しました。

アメリカは、東欧、ソ連に続き、キューバでも
新たに資本主義反革命を引き起こす絶好の機会だと察知し、
1992年にトリチェリ法を、さらには1996年にヘルムズ・バートン法を成立させました。

アメリカがこれらの法規制によって、キューバの輸出入禁止を強化したので、
キューバ国民にとって事態はさらに悪化したのです。


今回の視察旅行を通じて我々はたくさんの人たちに出会いました。
行く先々で皆、口々にかなりの感情をこめて対ソ貿易の消滅と
アメリカの法規制という歴史的なワンツーパンチの衝撃について話していました。

ところが、どういうわけか誰もがそれぞれふりかえって
恨みがましい言い方にならないようにしようとしていました。

それどころか、押しつぶされそうな状況に直面しながらも、
自分たちが成し遂げてきたことについて誇りをもって語っていました。

それまで輸入によってもたらされていた濃縮飼料、肥料、殺虫剤や
その他の農薬が不足したために、この社会に暮らす人々は政府や大学の援助を得て
オーガニック農業が広範囲で多様でよく普及することを実現するようにと、
キャンペーンを大々的に展開したのです。まだ完全ではないまでも、
その成果は驚くべきもので、キューバ文化に依然として現存する、
革命の精神がもつ不朽の力というものを証明しています。

http://newfarm.rodaleinstitute.org/japan/features/200304/200304052Cuba/SJ_cuba.shtml
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このヘルムズ・バートン法というのは全4章で構成されており、

①キューバへの投資の禁止とキューバの国際金融機関への加盟反対
②暫定政権の樹立とその後の選挙による民主政権の樹立の支援
③国内の亡命者の資産を取引に使っている他国の法人、個人に対し訴訟を起こす権利を認める
④上記に該当する第三国企業の幹部社員と株主、その家族の入国拒否を認可

というもので、要はキューバに資金が入らないように圧力をかけたのである。


社会主義国であっても、資金は必要だ。資金がなければ輸入ができない。
輸入ができなければ原料がない。原料がなければ商品が作れない。

この法律の効果は絶大で90年代のキューバは他の共産主義国同様、甚大な被害を受けた。

ところが、キューバ研究室には、この制裁の詳細に関する記事がない。
1つぐらいはあるのかもしれないが、キューバを考える上で重要な問題が軽く扱われている。


次回、新藤氏いわく、日本人しか注目していないはずのキューバの有機農業について、
アメリカのNGOであるロデール研究所(ペンシルヴァニア州)の翻訳記事を紹介しよう。

キューバの有機農業①

2015-05-07 21:31:52 | キューバ・ベネズエラ
先月から藤永茂氏のサイト「私の闇の奥」でキューバについての記事がアップされている。


キューバ、小さな大国
キューバに対する経済戦争
キューバの医療改革(1)

氏の感心する(などと言っては失礼だが)ところは、反対派の意見も載せるところで、
1番下の「キューバの医療改革」には、キューバについて否定的な日本人の意見も紹介されている。

2番目の「キューバに対する経済戦争」は、現在のキューバ経済を知る上でも必読だろう。
ラムラニの『アメリカのキューバ経済戦争』を紹介した点でも同記事の意義は高い。
(Salim Lamrani,THE ECONOMIC WAR AGAINST CUBA, A Historical and Legal Perspective on the U. S. Blockade

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「保健衛生の領域も決して免れない。この分野での損失は3000万ドルになると評価されている。
 こうして、キューバ眼科研究所「Ramón Pando Ferrer」は
 ハンフリー・ツァイスによって商品化されている網膜検査機器の取得を拒否されただけでなく、
 多国籍企業ノヴァルティスによって供給されている医薬品Visudyne
(ビスダイン、加齢黄斑変性症の光化学療法に使用される薬)の取得も拒否された。

 同じ方法で、アボット研究所は小児向け麻酔薬Sevorane
(セボフルレン、日本での商品名はセボフレン)の販売を拒否した。

 アメリカ財務省はまた、特に心臓不整脈(訳注:不整脈ではなく、心臓弁膜症と思われる)
 に冒された小児向けの人工心臓弁の販売を禁止した。」

キューバに対する経済戦争より
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アメリカの経済制裁の影響を具体的に示した良い文章だと思う。

アメリカのキューバの交渉を好意的に受け止める人間が実に多いが、
それは、時にはカストロの暗殺計画すら実行するアメリカの干渉政策に言及した上ですべきだろう。


さて、藤永氏は元来、理系の先生で、
チョムスキーやサイード同様、政治学や歴史学とは別の畑からアプローチしている論客だ。

本来なら、彼の評論は素人のたわ言として読み流してよかろう存在である。

だが、中東研究者と同様に、キューバの研究者にも
微妙な発言をする者が少なからずいるため、相対的に傾聴に値するものとなっている。


この点について、次回、詳しく語って生きたいと思う。