勝ち組、負け組というが。色々考えてみたけれども。自分の人生すべてにおいて、『私は勝ち組の人間だ』と思って、生きている、人間なんて、存在しないのではないかと思う。
『勝ち組、負け組』という言葉は元々、ある結婚していない女性（知らないが、ある程度の有名人らしい）が、『子どもがいない女性は、負け組である』という内容の本を書いた事から来ている。その人の言う事によれば、『子どもがいる女性は、勝ち組』らしい。でも、『子どものいる女性が、自分の事を、“勝ち組である”と考えているか』と言えば、疑問だと思う。
３５歳で子どもを持った、キャリアウーマンの女性が言う。『子どもの、誕生日の前の日に、子どもに、「誕生日だけど。何が欲しい」と聞いたら、しばらく悩んだ後で、「うーん。チョコレートかな」と言われた』という話を書いていたが。私からすれば、「子育ての失敗」にしか見えない。でも、この女性でさえ、『子育てのために、会社での出世は諦めた』と書いているから。“会社での出世をあきらめないで”“子育てをしようと思ったら”子どもの事は、全部、自分の親（子どもにとっては、祖父・祖母）に任せるしか方法はないと思う。でも、そうした場合、自分が高齢になった時思うのでしょうね。『子どもが子どもの時期なんて、人生からすれば短いのに。なんで、子どもの入学式や卒業式や運動会や児童参観の時に行ってあげられなかったのだろう。仕事ばかりしていても、お金以外の物は何も残らなかったではないか』と。結局、人生すべてにおいて、女性が、勝ち組意識を持ったまま生きる事は難しいと思う。そして、これは、女性だけの問題ではなく、男性でも同じだと思う。
ノーベル賞を取った、田中耕一さんについて。『優秀な人なのに。会社の研究員なのね。大学に残っていれば、すごい人になれたのではないか』と言っている人がいる。私からすれば、こんな意見は、「この人は、研究者としての人生というものについて、何も知らないのだな」と思ってしまう意見なのだけれども。
京都大学出身者の人で、大学に研究者として、残って、月１２万の収入の仕事を京都大学が解雇したと言って、裁判に訴えて、京都大学出身者だと言う裁判官に、『京都大学を出た人が、月収１２万の仕事を解雇されたという理由で、裁判するのはおかしい。京都大学を出ているのなら、もっと金持ちになれる仕事があるのではないかと思うのが、世間的意見である』という補足をつけられて、憤慨していた人がいたが。
でも、大学に残って、研究者としての人生を生きる選択をした人達は、皆、この道を通っている。
『大学教授よりも、学校の先生の方が、生涯給与は多い』と言っている人がいる。
『京都市バスの運転手の給料は、私の給料より、多い』と言って、憤慨していた、大学教授を知っている。
私が行った高校の同窓会。一回目出席した人のほとんどは、２回目出席していなかった。１回目で、“社会的成功者”の立場に立てた人は、２回目の同窓会の時には、“社会的成功者”の立場に立てなかったからであろうと、私は解釈している。
人生において、すべての時期において、“人生の成功者”の立場に立つことは、難しい。
まあ、結局、すべての人は、ある人生の時期において。『私は人生の敗北者である』という時期を経験している、ということだな。
社会的名誉が、その人の給料を保障してくれる訳ではない、と言う事が言えると思う。
田中耕一さんの事を、“うらやましい人生だ”と思う、大学教授は大勢いると思う。大学教授になるには、まずは、助手にならなければならない。助手の給料は、月１２万とかである。助教授になって、同年代のサラリーマンぐらいである。教授にならないと、人生における元は取れない。今は、博士号を取っても、仕事に就けない人も大勢いるぐらいだから。博士号を取るまでの、大学費用はただではない。それを思えば、どう考えても、“学校の先生になる方が、得”である。結局、社会的名誉と金はほぼ無関係に近いと言う事になってしまう、と言う事で。
宇宙物理学者と同じように。研究者も、「その道を選ぶのは、ただの趣味です」という時代が来るかも知れないけれども。
