ネコ好きSENの洋画ファン

ワン5ニャン9と共棲。趣味は洋画と絵画。ライフワークは動物・野生動物の保護救済、金融投資。保護シェルターの設立をめざす

座礁7

2015-04-29 12:33:42 | 小説はいかがでしょう★

 

 

不定期連載SF小説  座礁

 

 

 

 

 

古い皮カバン、金メッキを塗った留め金も褪せている。

シンは目を細めてあきれ顔になった。

 

「よかったらおれが開けてやろうか?」

「無理に開ければ中のものが壊れる。とてもデリケートなんだよ、

きみと違って」

 

レンはジャケットの袖をめくって腕時計を見た。

 

「時間がない。今後きみとどうすれば連絡がとれる?」

「よしてくれ」

「直接アクセスできるかな?」

「逢う気なんかないね」

 

ボイスが鳴った。

 

「D区に入ります」

「アビィ、速度を落とせ」

「落とすな、追いつかれる!」レンが叫んだ。

「金を払えば機嫌を直すのか?」

「その可能性は……おまえのそれ、女に言うみたいなセリフだな」

「わかった、OK。そんじゃ五日後に【オール・シングス・グッド】で逢お

う。D区の繁華街にある店だ」

「オール、シット……」

「【オール・シングス・グッド】だ。ミュージシャンのいるライブハウスだよ。

いや、まあ、とりあえずそういう看板だけど、扉の向こうはストリップとイカ

サマ師だらけのカジノになってる」

 

シンはヒューっと口笛を吹いた。

 

「最高の社交場か」

「D区に真っ当なやつはいないって? そういうこと」

 

レンはシートに手をつきながら後部に移動し、指先で壁を撫でるように

してサブユニットの在り処を確かめている。

 

「おいおい、ヒトのものに勝手にさわるなよ」

「その店にミンダミンというやつがいる。カバンを見せれば、好きなだ

けの金を払ってもらえるだろう」

「ほう」

 

シンはシングル銃にかけた手を放した。

 

「だったらもうおまえに逢う必要はないな」

 

ユニットのキィロックがはずれ、レンはふりむいた。

 

「シン、ぼくにはきみが必要だ」

「ご利用ありがとうございました」

「忘れるなよ、五日後に―――」

「リーレイレイが接近中です」

 

レンはレバーをひいてサブユニットに飛び込んだ。

一人用シート、腰を入れると即座に電気系統が点滅し、スタートボ

タンが点いた。

 

 

「逃げ足だけは準備を怠らないってことかな」

 

 

サーキットが流れてエッグ型ユニットは宙に放り出された。

しばらくきりもみ状態でころがった後、水平になり、勢いよくジェッ

ト噴射した

 

 

 

 

 

 

 

 



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