みなさん、こんにちは。
窓から舞い込む薄紅色の花びら
ほんのり肌寒い午後をいかがお過ごしでしょうか。
さてね、
わたくしも田舎に越してから早や6年となりました。
6年ですよ、6年!!
はっやいですねえ、もうすっかり田舎者です!
まあ、じっさい、
おれも田舎者になったなあ~~~なんて思うことも
サムタイムスあったりするんですよ。
この前ですけどね。
東京に行ったとき
階段を下りていくと、すでに電車が来ているじゃありませんか。
駈けだすおれ、しかし無情にも電車は出て行ってしまいます。
ああ、どうしよう!!!
遅刻だああああ!!!
と、時計を見ながらあたふたしていたら
どうしたことでしょう、来たんですよ、次の電車が!!!
ええええ、なに、もう来たの!???
5分も経たず来たんです、次の電車が。
ビックリしましたねえ、
やはり東京は違うなあ、と。
東京にいた頃は感じませんでしたけどね。
おれが住んでいる街では1時間に1本とか
ぜんぜんふつーにありますから。
まあ、5分後に来た電車にビックリしているおれ自身にも
ビックリしましたけど。
田舎化してるとです。
それと、この前MTB(自転車)で街中を走っていたときのこと。
前の方で車が何台か停まっている。渋滞しているんですね。
それでおれは、「ありゃりゃ、事故でもあったのかな」と思ったんですよ。
ただの信号待ちだったんですけど。
東京だったらちょっとした渋滞なんてふつーじゃないですか。
それが田舎にいたら
渋滞なんてめったにないから
「事故ったんかなあ」と思ったりするわけです。
まあ、人も車も少ないから、事故なんてほとんどおこりませんけどね。
もう完全に田舎者化ですなあ。
さあて、それでは本日のメインテーマ!!
どうぞ~~~~~!!!
★★✰★✰
SENの不連続小説 その5
おれSENは
東京の郊外
倒壊間近の雑居ビルの 2階で「お金の悩み相談所」を営っている。
独身、彼女なし、借金あり。
スーツは一張羅で、
これをクリーニングに出すと1日中ジャージでいるしかない。
客はほとんど来ない。
細々と株投資をしながら、陽気なネコたちと過ごしている。
でも、
ごくたまに
客が来ることもあるのさ。
世知辛い世の中だもの。
それぞれの悩みを抱えながら。
「なるほど。
財産を特定人に相続させるためには
遺言(いごん)が一番いいですよ」
「やはり」
「兄弟姉妹だけでなく
会ったこともない遠い親戚が突然あらわれて
自分には金をもらう権利がある、なんて主張されても困りますからね。
ときどきいるそうですよ、そんな連中が。
会ったことがないからよけいに非情な態度もとれるそうで」
「へえ、こわいね。
誰がいるかなんてわからないもんね。
とくにジュンの家系ってなんだかんだ色々いそうだし」
「遺言の作成も今はずいぶん簡単になったとか」
「そうなんですよ。民法の改正がありましてね。
ご本人が自分で書かれて、財産目録と印鑑があればできちゃいますから」
「それじゃ今から自筆遺言を作成しますか?」
「ええ、ぜひ……ああ、でも財産目録が……」
「保有している資産全てですね。不動産から有価証券。銀行にある現金とか。
パソコンで作成することもできますよ」
「前に作った目録と印鑑が自宅の金庫に入っています。
書き足したり、削除する項目もあろうと思いますが」
「自宅に戻ってとってきます。20分もかからないので」
「ぼく、ここで待ってる」
「……」
「待ってるから早く行ってきてよ」
「わかった」
「それじゃちょっと失礼します」
立石が出ていき、少年は床にいたネコを膝に抱いた。
ネコがごろごろとのどを鳴らして甘える。
「なんつーか、不思議な緊張感がありますね。おたくら」
「え?」
「ようわからんけど」
「なにが? どういう意味」
「いや別に、なんでもないとです」
「ジュンはさっきのイケメンを心配してるんだよ。
やだなあ、まだぼくを信じてないみたい」
「おじさんにはわかりませんね。
副社長までやってる男が、こんなガキの、いや失礼、若い男の言いなりになるなんて」
「ベッドの中じゃぼくが言いなりになってる」
「あのさあ、やめてくれる、そういう話」
「ねえ、おじさん。ぼくの話を聞いてくれる?」
「な、なによ」
「今日さ、昼間だけど、ソファでうたたねしてたの。
春っぽくて、なんか温かくて、そんな午後はたいてい昼寝してるんだけど」
「きみって無職だったよね」
「そしたらネコたちがなにか追いかけてた。
ぼくはネコたちが生きものを捕まえたら
すかさず逃がしてあげるの。
家の外に。
セミとかトカゲとか」
「いいことだよ。
どんな生きものでも命は大切にしないと」
「それが蛾だった。
ぼくが気づくのが遅かったのか、
だいぶ弱っちゃってて……。」
「だから両手で、そうっと。
手のひらで覆うようにつかまえて、窓から逃がしてあげた、庭に向かって放して」
「よかったじゃない……」
「よろよろ飛んでいるから、がんばれよ、って思いながら。
そしたら、
そしたらさ、
ぼくが見ている前で、
鳥がさーっと飛んできて、ぱくっと」
「あちゃーーー!」
「もうショックだった。
鳥は悪くないんだけど、野生ってそういものだから仕方ないんだけど、
なんかすごいショックで。
だってさ、まるでぼくが
食べなよ、って感じで放ったみたいじゃない。
鳥に向かってさ。
あの蛾に気の毒なことをしてしまった」
「そうだねえ、
善意でしたことなのにね」
「そうなんだけど……」
「まあ、次から気を付けることだよ。
庭に放すときは、鳥がいないかどうかちょっと確かめてからにするとか」
「うん、そうだね。聞いてくれてありがとう」
「こんどはおじさんの話をしてよ。
なんか、胸がつまるような……」
「胸がつまるような話ねえ……」
「ああ、そういえばーーーーーーーー」
長くなったので、つづく