ネコ好きSENの洋画ファン

ワン5ニャン9と共棲。趣味は洋画と絵画。ライフワークは動物・野生動物の保護救済、金融投資。保護シェルターの設立をめざす

SENのお金の悩み相談所 その7

2019-10-03 11:45:22 | 小説はいかがでしょう★

 

 

こんにちは~~~お元気ですか?

まあまあ、日々が過ぎるのは早いもので

若いころは「一日が早いなあ~」とか思ってましたが

近頃は「一週間が早いなあ~~」

「一か月が早いなあ~~」

もう少ししたら

「一年って早いな~~」

になるかも!!

 

かもかも!!!!

 

 

まあ、近況を申しますとね

知り合いの男(建築士:45歳)が

会うたびに(そうそう会っているわけではございませんけど

 

「会社を辞めたい」

「仕事が忙しすぎる」

「疲れる」

 

を繰り返しましてね。

なんかちょっと気になっているわけです。

 

 

先日なんか

「辞めてもいいかな」

 

なんて申すので、

 

わたしは

おれ「あんた、子供が三人もいるんですからね。

一番下はまだ3歳でしょう。

そんなこと言ってはいかんとですよ」

 

その人「だよね」

おれ「おれたちは一生、死ぬまで働くんですよ」(笑

 

 

なんて言ってしまいましたが

今から思うと、

よけいなプレッシャーをかけてしまったかな、

と反省しているわけです。

もうちょっといたわる言葉のほうがよかったかなって。

 

 

 

しかし

子供の多い女性を見ると

大丈夫なんかなあ、と

思ってしまいます。

 

一人当たり大学卒業まで約10000000円かかるわけで

 

いや

数えなくたって

1000万円ですよ。

 

3人いたら3×1000万円=3000万円

 

最低でも大学卒業するまでに、フツーにそれくらいはかかるわけでして。

 

留学や私大の医学部なんていったら

さらにかかる。

 

 

 

というわけで話の続きです。

 ほほ。

 

 

だいぶ前に書いたものですが

またコンテニューしていくので

ヨロシク!!

 

 

 

 

 

 ==============

 2019 7.31




みなさん、こんにちは~~!!

いやあ、湿度高いっすねえ!!!


ワンたちが外に出ないのもわかりますよ、こんなに暑いんじゃ!!!!

居間は24時間クーラー使いっぱなしです。


でね、

熱いせいか何のせいか

このところわたし、血圧計にはまってましてね。(:7月31日当時

いえ、計器にはまってるんでなく、測定する、その結果と原因の探求に

はまっているんです。

 

え、

わかってる?

わかってましたか???

 

 

で 

わたし、頭痛餅、お餅、いえ、頭痛持ちだったんですよ。

わりと。

風邪もひきやすくてね。

もう頭痛系風邪薬(ベンザとかね)が手放せなかったんですけど、

そういうとき(おはよう頭痛ってか)に測ると

ものすごく血圧が高い!

びっくらこきまくり!

 

 

あるとき(絶不調のとき)なんか

血圧(上)が160もあってぶっ飛びそうになりました!

まじか!!!

頭痛はするし体はだるいし!!!

 

その原因がですね、

はい

 

原因ですけど

 

その血圧高い原因ですけど、

そのときの前夜、夜の12時過ぎまで

DVD見ていたんですよ。

お菓子を食いながら。そしてジュースをごくごく。みかんの。

 

そのスタイル、大好きなんですけどね。

スナックしながら洋画見るのって。

わたしの最大級なフェボレイトタイムなんですけど

 

しかし!!

次の朝、きましたね! 

周囲の自転が見えるほどの頭痛と絶悪な体調不良!

 

血圧もビョ~~~~ン!!!

 

通常と何が違ったかと考えますと、

12時までの菓子食い。

甘いもの食い、ですか。

 

ポテトチップス一袋とおせんべい。チョコレートなんぞ。

映画1,2本だと、けっこー食えますよね。

 

翌日への血圧上昇を考えますと、原因は前夜の食いもの!

もう、9時過ぎたら、いや、10時過ぎたらお菓子は食わない!

ポテトチップスはだめ!

甘いジュースも!!

糖分が解消されないようです。

そして、翌朝の血圧が悲惨なことになります。

 

逆に、

お茶がいいようです。

ウーロン茶とかね。

お茶を飲んでおりますとね、

血圧を沈めてくれるし、体調もすこぶる良いんです。

9時過ぎに飲んでも

11時くらいに飲んでもいいみたいですよ。お茶なら。

 

そこでわたしはですね、

血圧は体調の良し悪しに関連していると、

その体調は前日の食生活に関連していると

気づいたわけです。

 

ですからみなさんも夜の10時を過ぎたら----え、長い?

話が長いですか?

 

 

では前回の続きです。

(:ちなみに、また夜ポテチ・せんべい・チョコしちゃってます。

前ほど頻繁にではありませんが 10月3日現在

 






SENの不連続小説 その7

 

 

 

 

おれSENは

東京の郊外

倒壊間近の雑居ビルの 2階で「お金の悩み相談所」を営っている。

 

独身、彼女なし、借金あり。

スーツは一張羅で、

これをクリーニングに出すと1日中ジャージでいるしかない。

 

客はほとんど来ない。

細々と株投資をしながら、陽気なネコたちと過ごしている。

 

 

でも、

ごくたまに

客が来ることもあるのさ。

 

世知辛い世の中だもの。

それぞれの悩みを抱えながら。

 

 

 

 

窓の向こうで車の停まる音がした。

ドアを開ける音、軽快な靴音が階段を上がってくる。

二人の顔はいっそう青ざめ、おびえた目で互いを見合った。

 

「ああ、どうしょう……」

ここならばれないと思ったのに

 

彼女はささやくような声で言ったが

おれにはしっかりときこえた。

 

こんな場末の吹き溜まりならきっと見つからないと---

おれは片眉をつりあげた。

 

靴音は部屋の前で止まり、方向を変えた。

ガチャリと鍵を回す音、となりの部屋に入っていく。

あいつか。

 

 

 

「ご心配なく、あれはわたしの友人ですよ。

ときたま泊まりに来るので

合鍵を渡してあるのです」

 

 

 

二人は前髪が揺れるほどのため息をついた。

 

暗い男の目が弱しく光った。

 

 

 

「ああ、よかった」

「よかったわ」

「それに、ふたりだ」

「ふたり、いてくれたわね」

 

 

 

 

「はい?」

 

 

「立会人は二人必要なんです」

 

 

 

「??」

 

 

 

「さあ、早く婚姻届けを印刷してください」

 

 

おれは言われるままパソコンで自治体のHPにアクセスし

婚姻届けを印刷した。

たしかに二人の証人、立会人が必要とある。

 

 

 

「ほんとだ、結婚したことがないので知りませんでした。おほほ」

 

 

おれは頭をかいてみせたが

ふたりは笑わず、女のほうは軽蔑した視線を向けた。

 

男のほうはさらに具合が悪くなったようで

何度も息をつき、ひどい冷や汗をかいている。

 

 

「医者を」

 

「余計な真似はせず、証人欄に名前を書いてください!」

女が叫ぶように言った。

 

 

 

「そ、そんな、見知らぬ人の証人なんてなれませんよ。

それになんだか訳ありみたいだし」

 

 

「お願します」

 

 

 

「いやですったら!

連帯保証人には死んでもなるなと親から言われているんです」

 

 

「連帯保証人とは違いますから」

 

 

「証人って書くじゃないですか、

絶対に嫌です!」

 

 

男の体が椅子から崩れ落ちた。

床にひざをつき、手をつく。

「お…お願いします…」

 

 

 

「おれは、いいよ」

横のドアからケイが入ってきた。

 

 

 

「この二人の、証人になるよ」

 

 

 

「なんだよ、おまえ……」

 

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


不思議な子2

2016-09-09 23:51:22 | 小説はいかがでしょう★

 

 

割れた窓ガラスの向こうで黄ばんだカーテンが半分ほど開いている。

すっと、影が動いた。

カーテンの向こうだ。

 

ぼくの身体じゅうの細胞がきゅっと縮んだ。

数秒間、呼吸をすることを忘れた。

まさか、と思う。

影が再び動き、ぼくはもう少しで悲鳴をあげるところだった。

 

 

女だ。

女の子。

 

眠そうな顔であくびをし、割れているガラスをものともせず窓を左右に開いた。

長い髪が朝日に透けて、白い肌が輝いている。

にっこりとほほ笑み、ほつれた前髪を耳の後ろにはさんで

おはよう、と言った。

たぶん。

 

 

ぼくはすっとんで逃げた。

心臓が口から飛び出しそうだった。

まったく、足を止めることなく教室に駆け込んで、机に片手をついて大きく呼吸を繰り返した。

胸が苦しい。

 

何事かとぼくを見ている仲間の顔に

ようやく我を取りもどした。

 

「どうしたってのよ」

浩二が心配そうに訊いてくる。

 

大声で叫びたかったが、他の学生にきかせたくなかったからぐっと息をのみ込んだ。

なんとか心臓を落ち着かせて浩二の耳元に顔を寄せる。

 

 

「み、見た、見た」とささやく。

まだ息が切れている。

 

顔を近づけられたのが嫌だったのか、浩二は眉根を寄せて

「なにを」

とささやき返した。

 

だから見たんだよ、あれ、あれ、と荒い息を吐きながら再び顔を近づけると、

浩二は思いのほか身を引いた。

 

きみの息でぼくのシャツがよごれるだろう、と言わんばかりだ。

たしかに浩二のきているシャツ、こんな真っ白いシャツの襟を見たことがない。

だけど今は文句を言っているひまじゃない。

 

 

「見たんだ。あの家、誰かいた」

「あの家?」

「廃屋だよ。屋敷、朽ち果てたあの洋館」

「ええっ、なにを見たって?」

 

ぼくはごくりと息をのみこんだ。

「女の子だった、まちがいない」

 

口をあけ、浩二は目を大きくさせた。

「あんなところに女の子がいたって言うのか、ありえないだろ」

「本当だよ。女の子だった。それも」

「それも―――なんだよ?」

 

「すっごいかわいい」

 

 

ピューと誰かが口笛を吹いた。

武雄だ。

 

「おいおい、ねぼけたんじゃないのか。それとも朝からユーレイでも見たのかよ」

「違う、ユーレイなんかじゃない」

 

武雄が席を立ってそばに来た。

 

「本当に女だったか?」

「なんだよ」

「すげえかわいいって?」

 

ぼくはうなずいた。

 

「寝起きだったけど、こう、髪が広がって、すごくきれいで、でもなんであんなところにいたんだろう。

なんでかわからない。なんであんなところにいたんだろう」

「まあ、落ち着けって」

 

 

「やっぱりユーレイかな」

「ばか」

「じゃあなに」

「家出娘かなにかだろう。あの屋敷がもう少しまともだった頃に

浮浪者が住み着いたことがある」

 

「勇気あるな、その浮浪者」と、浩二が肩をすくめた。

「よその町から来たのだろう。すぐに追い出されたけどな」

 

 

武雄はセクシーなことを考えているみたいだ。

ぼくにはとてもそんな気になれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


不思議な子

2016-09-08 16:05:18 | 小説はいかがでしょう★

 

 

転校したばかりで、まだ慣れない通学路を歩いていくとちゅう

大きな屋敷の前を通る。

イギリスとかドイツの街並みで見かけるような

古くて大きな洋館だ。

 

 

 

「ああ、あの家か。ここいらじゃお化け屋敷って言われてるよ」

 

浩二がおしえてくれた。

最初に友だちになった子で

大きな目に白い肌で、女の子みたいな顔をしている。

 

「誰も住んでいないのに声がするとか」

とでっかい目を細めて。

 

「うそだろ」

「ほんとだよ」

「声って?」

「真夜中に女の悲鳴とか」

 

浩二はにやついた顔をしているからどうにも怪しい。

 

「なんだうそか」

「そうとも言えないかも」

「誰か聞いた人がいるの?」

「いや、さあ、あああ、どうだろうかね。

いかにも廃屋って感じだから、そんな噂があるのかな」

 

「いやいや、噂だけじゃないぜ」

 

向こうの席で武雄が言った。

背丈のがっしりした男で、いかにも体育会系って感じ。

 

「新聞に出ていた。あの家の住人が死んだって」

「死んだ? 殺されたの?」

 

浩二を見ると、かれは肩をすくめた。

 

「武雄がそういうんだからそうなんだろう。

ぼくは夏旅行に出ていたから、新聞は見てないんだ」

 

「病気かな」

 と、武雄に訊く。

 

「だったら新聞に載ったりするか」

 

「誰が殺されたの?」

「その家の娘。まだ14歳だった。

今にいたって犯人はつかまってない」

 

14歳だったらぼくより2歳もしたじゃないか。

殺されちゃうなんてかわいそうに。

気の毒に……

 

 

この田舎町はどことなく気に入って

いくつもの思い出を刻んでいこうと思っていたのに

近くに殺人現場があると知って、なんだか胸の奥に黒い雲がしきつめてしまった。

こわさというよりは、

痛みというか。

哀しみみたいな。

そのせいで夜はあまりよく寝られなかった。

 

翌日、屋敷の前に通りかかったとき、足を止めて、さびついたフェンスごしに眺めてみた。

 

背の高い雑草の向こうにある屋敷。

壁はところどころペンキが剥がれ、カビで黒くなり、

窓枠はゆがみ、ガラスは割れている。

 

正面のドアにしたって、取っ手がはずれて、ぶらさがっている。

 

 

 

 

 


短編小説はいかが

2016-04-29 17:58:04 | 小説はいかがでしょう★

 

熊本地震の被災者の方、お見舞い申し上げます。

早く自分の生活に戻れますようお祈りしております。

 

 

さて、今日は、ずいぶん前に書いた短編小説です。

どうぞ!!

 

 

 

 

「アイラブユーに想いを込めて」 

前編

 

 

 

「涼平、ケーキが焼き上がったわよ」

利布はふっくらした甘い香りのお菓子をテーブルに置いた。

庭で犬のフラニーと遊んでいた少年たちが元気よく走ってくる。

今月七歳を迎えたばかりの息子は、おかっぱの髪を乱してテラスから飛び込んできた。

 

「ママのケーキって大好き! 早く分けてよ!」

「それじゃ、すわって。ほら、みんなのぶんもあるわよ。大きく切ってあげる」

 

フラニーが赤い舌を揺らし、テーブルのまわりをくるくると走っている。

「ママ、のどがかわいたよ」

「ジュースがあるわ。これを置いたら持ってくるから―――」

 

ふと指先がとまった。

利布は切り分けたケーキを皿に持ったまま、音楽に耳を澄ませた。

懐かしいメロディ。

いつか聴いた、あの曲。

 

とまどいがちに振り返り、黒い瞳は居間のテレビを映した。

見知らぬ街角、夜空をゆっくりと飛んでいる飛行機、なにかのコマーシャルみたい……夢を、

あこがれを、アイ・ラブ・ユー。

 

「ママ」

 

利布はぼうぜんと画面を見つめている。

CMが終わっても、涼平が椅子をがたがた鳴らせても、突っ立ったまま。

 

「ママってば!」涼平が叫んだ。

「なにしてるの。持ったままじゃケーキが腐っちゃうよ」

 

彼女は少しあわてて、切り分けたケーキを少年たちの前に置いた。

「すぐ飲み物を持ってくるわね」

 

 

彼女は小さく息をついた。

テーブルを離れると居間のテレビを消し、そっと自室に入った。

あの曲。

なんて懐かしい。

 

今もまだ耳の奥であの曲が鳴っている。

甘酸っぱいときめきに心が揺れ、剥がれるような想いで身体がいっぱいになるのを感じる。

 

どうして。

なんで今さら。

 

オーク質のドレッサーの前に行き、その鏡に映った自分を見つめる。

ひとつに結った髪、顔の縁にそっていくらか白いものが混ざっている。重そうな頬、目尻のしわ……

彼女はふっと笑った。

 

しかたがないわ、わたしも四十二歳だもの。

子育てに忙しい主婦なのよ。

 

視線を落とせば、鏡の前に家族で録った写真が飾ってある。

眼鏡をかけた小太りの夫、自分、その前に息子がいる。

 

これがわたしの家族。

幸せそうだわ。

誰が見たって幸せな家族よ。

 

二十歳の頃とは違うのよ……

そう、違う……違っている。

あの頃とは何もかも……

 

 

 

あれはもう二十年も前のこと。

イルミネーションがきらめく十二月、街は賑やかで、あちこちからクリスマス・ソングが

流れている。

 

 

「クリスマスのプレゼントは何がいい?」

 

ウィンドーから都会を眺めていた利布は顔をもどした。

テーブル越しに座っている青年が照れた顔で微笑んでいる。

 

SF研究会の部長で本ばかり読んでいた頃と違って、肩まであったサラサラ髪は短く

切りそろっている。

就職したときは別人になったみたいとからかったけど、切れ長の目はあいかわらず

優しげに微笑んでいるわ。

 

「クリスマスプレゼント? へえ、おどろき。陽平がそんなこと言うなんてめずらしいな」

「あのさ、おれだって社会人二年目だぜ。ボーナスだって入るっちゅうの」

 

利布はグラスをとってワインを揺らした。

 

「いらない」

「なにそれ」

「ためるのよ」

「そういうと思った。がっくり」

「だって、来年は新居とか新しい生活とか、いろいろとお金がかかるでしょう。ふたりのボーナスは

とっておきましょうよ」

 

陽平は両手をひろげた。

 

「とっておくのはおれだけでじゅうぶんだよ。おまえにとっては最後のボーナスなんだし、

自分のために使えっていうの」

まあねえ、と彼女はワインを飲んだ。

 

「あなたがそう言ってくれるから旅行に行くことにしたんだわ」

「そうか、よかった」

「結婚したらそうそう行けなくなるものね。独身最後の旅行よ」

「おまえは旅行が好きだからな」

「いろいろ迷って、イタリアにしたわ」

「イタリアか、いいねえ」

 

利布はにっこり笑った。

優しくてとても素敵な人、陽平が好きでたまらない。

こうしていても胸がときめいて、身体中がふるえてしまいそうなの。

 

「空港へはおれが送り迎えするから」

「ほんと?」利布はグラスを戻した。

「でも、仕事が終わってからじゃたいへんよ。成田だから高速道路を走っても二時間以上

かかるわ」

「それくらいなんだ」

陽平はワインで口の中のフィレを胃の中に流し込んだ。

「おれだって早く逢いたいし、きっと待ちきれないから迎えにくるなと言われても行ってしまうよ」

ありがとう、そういって利布はくすくす笑った。

 

「ねえ、なにがいい?」

「なにがって?」

「おみやげよ。イタリアみやげ」

「そうだなあ。イタリア、イタリアならあれしかないだろう、ほら、おまえが今、食っているやつ」

 

彼女は目の前の皿を見た。

 

「ピッツア?」 

「それ。ピッツアの斜塔」

 

利布は目を大きくさせた。

「あんなに大きなもの、どうやっておみやげにするのよ」

「おまえが押せば簡単に倒れる」

 

くすくすと笑い、ふたりの目がお互いを映して見つめ合った。

そのとき、やわらかいメロディのラプソディが流れてきた。

華やぐ街によく似合う曲。

 

「ああ、おれ、この歌好きなんだ」     

「へえ、誰」

「聞いてみて」    

 

利布は耳を澄ませた。

透き通った声、スィートなフレーズ。

陽平は目を細め、身を任せるように耳をかたむけている。

ゆっくりと流れるメロディ。夢を、あこがれを、アイ・ラブ・ユー。夜空に願いを込めて。

 

「ロマンティックな歌ね。すごく幸せな恋人たちって感じよね」

「おれたちみたいに?」

陽平が笑った。

 

 

 

後編につづく

 

 

 


投稿用新作小説「死・神・天・使」

2016-02-17 12:58:45 | 小説はいかがでしょう★

 

 

 

「 死・神・天・使 」

 

 

 

 

その1

 

 

 

 その夜、年に一度の花火大会が行われていて、多摩川の土手は賑やかだった。

 大勢の人、ずらりと並んだ露店、タコ焼きのうまそうな匂いがする。

 ゆっくりと歩く人波の中で、片手に赤ん坊を抱いた女はもう片方で娘の手を

にぎっていた。

 

 ああ、どこかにすわりたい。

 すわれそうなところは人でいっぱいだ。

 向こうの草地にすわってしまおうか。

 でも雨でぬれているだろう。

 あたしときたら、こんな日に敷物を忘れるなんて

 

 ひゅるひゅると火の玉があがって夜空がぱっと明るくなると人々は歓声をあげ、

自分の小さな娘もはしゃいだ声をあげた。

 

「まま、きれいだね」

 

 まだ三つになったばかりの娘は大きな声をあげ目をかがやかせている。

髪を赤いリボンで左右に結い上げ、ピンク色のゆったりしたワンピース姿で、

身体を動かすたびに白いパンツが見える。

 

 なんて蒸し暑い夜だろう。

 

 スモックのたっぷりした服を着た母親は娘から手を放し、額の汗をぬぐうと

赤ん坊が着ている服の襟元をひろげた。

 まだ二か月の赤ん坊はよく眠りこくっている。

 ドンと音がしようと、すぐ横で大きな歓声が上がろうと目を覚ます気配はない。

 

 こんなことなら連れてこなけりゃよかった。

 どうせずっと眠っているんだし……でも誰もいない部屋に置いてくることも

できないじゃない。

 

「ままあ、アコ、あれがほしい」

 

 娘は甘えた声をだしてスモックの袖を引っ張っている。

 まだ三歳だというのにけっこうな力だ。

 

「なによ」

「あれ」

 

 人ごみの向こうの露店を指でさしている。

 赤々とした電燈の前では紐につるした綿菓子が揺れている。

 

「あれがほしい」

 

 まったくもう、お金なんか持ってきていないのに―――母親は小銭が

あったかとポケットに手を伸ばすが、指先が触れるものは何もない。

 

 綿菓子の前に七〇〇円と書いた張り紙がある。

 

 やだ、あんなにするの。

 七〇〇円もあったら夕食のおかずが買えるわ。母親は小さく舌打ちした。

 

「こんどね」

「いやだあ、ほしい」

「ママね、お財布、おうちに忘れちゃったの。だからこんどね」

 

 いやだあ、いやだあ、娘は母親の袖をつかんで離さない。

 両脚で踏ん張ってぐいぐいと引っ張ってくる。

 

「やめなさい、アコ、放してよ、あぶないじゃない」

 

 母親は赤ん坊を守ろうと娘の手を突っぱね、そのはずみで小さな身体は

しりもちをついた。ぎゃあと泣きだす。

 

 ああ、うんざりするわ。

 この子にも、この暑さにも。頭がくらくらしてくる。

 八時になるというのになんて暑いのかしら。

 

 

 

 

 

 ツービーコンテニュー