
フランスの朝の部は12時に終わり、午後2時までの長い昼休みに入る。起床が遅いと、朝食をとってまごまごしているうちに、あっという間に11時になってしまう。ちょっと離れた町まで買いものに行くとなると(フランスの田舎に住んでいると、どこでも「ちょっと離れた町」になってしまう)、着いたら閉店時間ということになりかねない。幸い開いていても、店員の頭の中は、昼飯はどこに行って何を食べようか、早く行かないと満員になってしまうぞということでいっぱいだから、懇切丁寧なサービスを受けることは不可能である。フランスの午前の部というのは、わたしたちにとっては無きに等しいものだ。
ある土曜日の朝に大型店舗の密集した工業団地に行ったのだが、ここも12時になると一斉に閉まってしまう。1店くらい開いていたら、さぞかし繁盛すると思うのだが。家に帰るとなると、片道1時間弱かかるので、出直す意味がない。となると、やはりそこで働く人たち同様、レストランに行くしかないわけだ。で、典型的なフランスの2時間ランチになるわけである。お腹が空いているので5コースというわけではない。5コースもあれば店が開くまで2時間つぶせるだろうというわけだ。で、レストランのほうも12時から2時の間は殺人的な忙しさとなる。それぞれが異なった時間に昼食をとったら、給仕するほうだって、丁寧なサービスができると思うのだが。
そこへ行くと、スペインのシエスタのほうがずっと便利だ。午後2時から4時あるいは5時までと休みは長いが、午後2時まで営業している午前の部でだいぶ用事がこなせる。夕方の営業時間はおまけのようなものだ。さすが夜型人間の国である。夜型人間に便利なようにできている。
が、もっと便利なのは昼休みのないイギリス。もっとも、フランスでもスペインでも大型スーパーマーケットチェーンは昼休み無しで終日営業のところが多い。要するに店員の配置をシフト制にして、昼休み時間をずらせて取らせればできることなのである。なのに、どうしてみんなで一斉に2時間ランチを取らないといけないのか?
おまけにフランスは月曜日休業のところが多い。銀行が月曜日休業なので、その影響らしい。今日は聖母マリアの被昇天の祭日で、日・月・火と3連休である(フランスの銀行は月曜日の代わりに土曜日営業なので)。おかげで、また水道料金の支払い手続きをしそこなった。
日本のような便利な国に住んでいるとなかなか気づかないことだろうが、世の中にはまだまだ不便なところがたくさんある。そしてその不便なところには先進国と呼ばれているところも含まれているのだ。