ペドロランド日記

スペインの国際村「ペドロランド」を中心にフランスとイギリスに発信地を移しながら、日々の出来事を綴っています。

わたしのお気に入り映画

2009-12-31 17:05:50 | スペインの生活
わたしの一番のお気に入り映画は、「フィーバー・ピッチ」。前に1度見たことがあったのだが、イギリスの新聞に無料で付いてきたDVDを貸してもらって、最近再び見る機会があった。アーセナルファンにとっては、究極のフィール・グッド・ムービーである。ニック・ホーンビーの同名の小説を映画化したもので、コリン・ファース主演。コリン・ファースは、20年以上前に見た「アナザー・カントリー」以来大好きな俳優だが、BBCのテレビ番組「高慢と偏見」で一躍イギリス女性の憧れの的となった。

原作者自らアーセナルファンだけあって、一言一言のセリフが実に共感できる。うちのだんなは、悲観的ファンで、アーセナルの試合ははらはらするので、直視できないタイプなのである。それゆえ、コリン・ファース演じる主人公の気持ちがすごくよくわかるらしい。夫の一番好きなセリフは、1988/89年のリーグ優勝のかかったリバプール対アーセナル戦を家でテレビ観戦しているときの主人公ポールの言葉だそうだ。リーグ優勝のためには、リバプールを2対0で破らないといけないのだが、最初の1得点を決めた直後、歓喜するどころか、「2得点しないといけないところを、1得点してみて、ファンをその気にさせるところは、いかにもアーセナルらしい」と苦虫をつぶしたような顔。(アーセナルはそれから20年経った今も同じである。優勝の夢が消えたと思うと、強豪チームに勝って、再び優勝の夢をかき立てた直後、弱小チームに引き分けしたりする。いつの世でも、アーセナルファンをやっていくのは、楽ではない。)あまりに緊張して見ていられないから、外に出るぞと言いつつ、コートを着て、ドアの前でうろうろしながらも、テレビから目を離せない主人公の姿も、すごくわかるのだそうだ。

わたしは逆に強気の楽観的ファンで、勝とうとも負けようとも、とにかくアーセナルの試合を最後まで1秒も逃さずに見たいというほうなので、主人公よりは、マーク・ストロング演じるその友人のほうが、より共感を覚える。しかし、わたしの好きなセリフは、主人公・ポールの言葉のほうだ。

生徒のサッカーチームのコーチを務めるポールが、PKをはずした教え子を慰める。「この試合で自分がPKをはずして、アーセナルが明日のリバプール戦で2対0で勝つのと、自分がPKを決めて、アーセナルが明日負けるのとどっちがいい?」自分がPKをはずして、アーセナルが明日勝つほうがいいと言う教え子に、「最初の半分は本当になったぞ」と言うと、教え子は元気になる。こういう自分の人生とアーセナルとを密接につなげて考えるところが、すごく共感が沸くのだ。

ストーリーは、1988/89年シーズンと同時進行しており、その合間に回想シーンとして、ポールがどのようにしてアーセナルファンになっていったかが織り込まれている。1989年は96人のリバプールファンが圧死したヒルズバラの惨劇の年であり、この問題もポールとその恋人の視点を通して、映画の中に盛り込まれている。ポールがシーズンチケットを持っているノースバンクは、ハードコア・サポーターの集まるところでもあったそうだ。うちの亭主でも、ここはちょっと怖い場所だったと言う。中産階級の家庭で育った現役教師という主人公の設定は、作者の投影でもあるのかもしれないが、敢えてフットボール・フーリガンのステレオタイプを否定したかったのではないかという気もする。

物語を通して、ポールが直接的・間接的に関わった人たちが知らないうちに、フットボールとアーセナルにのめりこんでいき、最後に、ハイベリー近辺の住人たちを含め、みんながアーセナルのリーグ優勝で一つにまとまる様子が描かれている。

そして、大切に思う人が間にはいったことで、自分とアーセナルとの関係が、変わったことを主人公は意識する。同じくアーセナルのために、自分のキャリアを危うく棒に振りそうになった身としては、このへんのセリフも身にしみる。自分の世界に閉じこもる主人公が、他人に心を開くことによって、徐々に変化していく様を描くという点では、同じニック・ホーンビーの小説を土台にした「アバウト・ア・ボーイ」(ヒュー・グラント主演)に通じるものがある。これも映画だけで原作を読んでいないのだが、「フィーバー・ピッチ」は、確か我が家の本棚のどこかにあったはずだ。新年にはぜひ読んでみたい一冊である。

ティニの料理

2009-12-01 17:37:52 | 食べ物
今日のペドロランドの天気は

スペインに来て以来、到着した翌日を除いて連日晴天が続いていたが、日曜日についに雨が降った。この日を境に急に気温が下がって、ついにペドロランドも冬入りである。

先日お向かいのオランダ人夫婦、ヤンとティニの家に食事に招かれた。彼らは年に2回、春と秋にオランダからスペインにやってきて、2ヶ月ずつ過ごしていくのだが、その度に食事に招いてくれる。もともとティニが料理好きなこともあるのだろうが、二人とも英語の練習をしたいことと、異文化に対する興味からわれわれ夫婦を食事によんでくれるようである。

最初の頃はティニの料理はなかなか悪くないと思っていたものの、最近はかなり疑問が出てきた。以前、ティニの料理ってどう思う?というお隣のオランダ人のトーシュの質問に「うまいと思うよ」と答えたら、ものすごく怪訝な顔をされたのだが、トーシュの気持ちがわかったような気がする。

前回は、スモークソーセージとマッシュポテトとザワークラウトをご馳走になった。ドイツ料理の典型のようだが、ヤンとティニに言わせるとオランダの伝統料理なのだそうだ。が、独特なのは、全部が一緒くたになっているところ。オランダでは、いろいろなものをごった混ぜにすることがよくあるそうだ。が、マッシュポテトにパイナップルとレーズンが入っているのは、オランダ独特ではなくて、ティニのオリジナルなのではないだろうか??

今回の献立は、チキンのカレー味クリームスープの前菜に、メインはチキンのクリーム煮であった。それにライスと温野菜の付け合せ。チキンのクリーム煮の中になにやら得体の知れないものが入っていると思って口に含むと、スライスしたバナナだった。わたしは酢豚にパイナップルが入っているのは絶対に許せない人間なので、チキンのクリーム煮にバナナなんて言語道断と思ったのだが、失礼は許されないので、がんばって残さず食べた。夫は、満腹を口実に半分残した。後で家に帰って語ったところによると、吐きそうだったということである。イギリス在住の方ならご存知かもしれないが、『ヴィカー・オブ・ディブリー』のレティシアの料理を思い出した。

いつも招かれてばかりでは肩身が狭いので、こちらも食事に呼ばないといけないのだが、毎回日本のカレーというわけにもいかない(でも、向こうも毎日日本のカレーを食べているわけではないので、6ヶ月に1回くらいの割合なら許してくれるかもしれない)。今回はイギリス料理をテーマにして、ヤンとティニを食事に招いた。メニューは、コーンチャウダー(これはイギリスで買った三星の電子レンジについてきたレシピブックに載っていたものなので、特にイギリス料理ではない)の前菜に、ステーキ・アンド・キドニー・パイのメイン。パイはイギリス人の肉屋から買ってきた(平日だったので時間がないというのが、わたしの口実)。その後は、フランス風にチーズボードで、デザートはアイスクリーム(イギリスではこの順が逆になる)。で、最後に手作りのブレッドプディング(これは最近わたしの得意技になってきた)。

イギリスでは豚肉のローストにアップルソース、七面鳥のローストにクランベリーソースを添えるという話になったら、ヤンとティニは、豚肉にアップルムース(オランダではとても人気があるが、子供の好物という観念が強いようだ)なんて、とんでもない!と言っていたが、チキンのクリーム煮にバナナを入れるほうが、よっぽどとんでもないとわたしは思う。

(写真は、ラウンドアバウトの真ん中の像。なかなかすばらしいと思って、交通量が少ないのをいいことに、脇に車を止めて写真を撮ってしまった。)