のちときどき3週間続いた遅い夏がついに終わった。一昨日は28日ぶりに雨がが降る。気温も下がって、15度程度。
さて、今回はイギリスの病院に関するお話の最後です。
日本では手術前日に入院するのが普通らしいが、イギリスでは手術日の朝に病院に行くのが普通のようだ。手術当日の朝、病院に電話をしてベッドの空きがあることを確認してから病院に来てくださいという病院も少なくないらしい。幸い、わたしが手術を受けた病院ではこういうことはなかったが、病院からもらった書類には、手術予定日間際になって手術がキャンセルされることもありますという注意書きがくどいほどあちこちに載っていた。もともと、わたし外来で行った病院は救急病院のため、手術当日になって緊急手術が入ったためキャンセルということが多かったらしい。そこで、予め決まっている手術はすべて、同じ管轄内で急患受付のない別病院で行うことにしたのだそうだ。
昔はイギリスでも、手術の1~2日前に入院させて、入院前の準備の忙しさから患者を解放し、術前にリラックスしてもらうという医者がいたらしい。が、ベッド不足の現在、こういう贅沢はもう許されなくなったのだそうだ。
また、手術前の準備というのがないので、前日に入院する必要もないのだろう。手術10日前に検査のため病院に行ったとき、手術の準備として下剤を医者が処方しようとしたので、なるほどイギリスでは手術のための腸の準備はDIYなのねと思っていたのだが、結局これは無しになった。手術当日も腸の準備はまったくなし。もっとも、アメリカのサイトなどによると、最近は万が一手術中に腸に傷がついてそこから漏れた内容物で感染する危険性よりは、浣腸や下剤などで脱水症状になったり、それによる精神的・肉体的な負担のほうが患者にとってずっと害が大きいというので、腸の準備はしないところも増えてきたらしい。剃毛はというと、手術前に使い捨てのかみそりを渡され、自分のベッドの周りにカーテンを引いて、その中で自分で処置するように言われた。
イギリスの病院は、体制としては放任主義だと思う。医者や看護婦による説明というのがあまりなくて、いくつか薄いパンフレットを渡されて、これを読んでおくようにというのが多い。手術の手順や手術に伴うリスク、手術以外の治療法などを具体的に統計を揚げて解説した20ページほどのコピーを看護婦が手術当日にくれて、これを読んでおくようにと言う。いまさらリスクやほかの治療法など説明されても遅いのにと思うのだが、手術当日に気を変えることもできるのだそうだ。が、わたしの場合、この手術を10ヶ月も待って、この日を中心に今年1年の計画を立ててきたのだから、ここにきて尻込みするわけにはいかない。
手術前に主治医が来て、手術のリスクを説明する。今までこんなことは一つも言わなかったぞ。幸い手術まで10ヶ月もあったので、十分研究・調査し、考える時間があったからよかったものの、この日初めて聞いたら、ものすごく動揺していただろうと思う。リスクについて説明を受けました、それを承知した上で手術に同意しますという書類にサインすると、控えをくれて、主治医にして執刀医の医者が去っていった。この医者に会ったのは術前に2回、手術当日の術前・術後に1度ずつ合計しても5分ほどであった。あとは、6週間後のチェックのときだけで、それも必ずしも主治医が診るとは限りませんと但し書きがしてあった。退院後、何か問題があったらGP(かかりつけの家庭医)に行くようにということである。
が、医療関係者は実によく面倒を見てくれた。看護婦さんたちはとてもよく働くし、感じがよい。院内感染が心配されていたが、患者が退院すると、即座に新しいシーツに換え、ベッドのすみずみまで殺菌効果のある使い捨てワイプで拭き取る。新しく用意されたベッドに座った後があるのを見て(たぶん隣のベッドに見舞いに来た人が座ったのだろう)、看護婦がまたシーツを取り替えていた。1日に何度も掃除の人が病室に入って、床を拭いている。
日本人女性の友人が入院したとき、差別を受けて、食事の配膳は一番最後、ついには食事を運んできてくれさえしなくなり、配膳所まで行ってその場で食べたというひどい話を聞いていたのだが、ここの配膳係(兼清掃員)の男性はとても親切だった。水曜日の晩家に帰る前にわたしのベッドに立ち寄ってくれて、もし木曜日か金曜日に退院するのなら、自分は休みなのでもう会わないだろうから、元気でねと挨拶をしていった。看護婦さんたちも、かゆいところに手が届くような面倒見のよさで、退院するときに迎えの車を待っていたら、「待っている間にお茶でもいかが?」と聞いてくれた。病院と言うよりは誰かの家にいるような雰囲気である。
あまりに事務の手際の悪さに、一度は自腹を切って私立の病院で手術を受けることも考えた。5,600ポンド(約130万円)かかるらしいと聞いて断念したのだが、自分の希望する時期にすぐに手術を受けられる(国民健康保険だと5~6ヶ月待ち)ということ以外はあまりメリットはないように思う。これらの治療をすべて無料で受けられたのはやっぱりありがたい。
さて、今回はイギリスの病院に関するお話の最後です。
日本では手術前日に入院するのが普通らしいが、イギリスでは手術日の朝に病院に行くのが普通のようだ。手術当日の朝、病院に電話をしてベッドの空きがあることを確認してから病院に来てくださいという病院も少なくないらしい。幸い、わたしが手術を受けた病院ではこういうことはなかったが、病院からもらった書類には、手術予定日間際になって手術がキャンセルされることもありますという注意書きがくどいほどあちこちに載っていた。もともと、わたし外来で行った病院は救急病院のため、手術当日になって緊急手術が入ったためキャンセルということが多かったらしい。そこで、予め決まっている手術はすべて、同じ管轄内で急患受付のない別病院で行うことにしたのだそうだ。
昔はイギリスでも、手術の1~2日前に入院させて、入院前の準備の忙しさから患者を解放し、術前にリラックスしてもらうという医者がいたらしい。が、ベッド不足の現在、こういう贅沢はもう許されなくなったのだそうだ。
また、手術前の準備というのがないので、前日に入院する必要もないのだろう。手術10日前に検査のため病院に行ったとき、手術の準備として下剤を医者が処方しようとしたので、なるほどイギリスでは手術のための腸の準備はDIYなのねと思っていたのだが、結局これは無しになった。手術当日も腸の準備はまったくなし。もっとも、アメリカのサイトなどによると、最近は万が一手術中に腸に傷がついてそこから漏れた内容物で感染する危険性よりは、浣腸や下剤などで脱水症状になったり、それによる精神的・肉体的な負担のほうが患者にとってずっと害が大きいというので、腸の準備はしないところも増えてきたらしい。剃毛はというと、手術前に使い捨てのかみそりを渡され、自分のベッドの周りにカーテンを引いて、その中で自分で処置するように言われた。
イギリスの病院は、体制としては放任主義だと思う。医者や看護婦による説明というのがあまりなくて、いくつか薄いパンフレットを渡されて、これを読んでおくようにというのが多い。手術の手順や手術に伴うリスク、手術以外の治療法などを具体的に統計を揚げて解説した20ページほどのコピーを看護婦が手術当日にくれて、これを読んでおくようにと言う。いまさらリスクやほかの治療法など説明されても遅いのにと思うのだが、手術当日に気を変えることもできるのだそうだ。が、わたしの場合、この手術を10ヶ月も待って、この日を中心に今年1年の計画を立ててきたのだから、ここにきて尻込みするわけにはいかない。
手術前に主治医が来て、手術のリスクを説明する。今までこんなことは一つも言わなかったぞ。幸い手術まで10ヶ月もあったので、十分研究・調査し、考える時間があったからよかったものの、この日初めて聞いたら、ものすごく動揺していただろうと思う。リスクについて説明を受けました、それを承知した上で手術に同意しますという書類にサインすると、控えをくれて、主治医にして執刀医の医者が去っていった。この医者に会ったのは術前に2回、手術当日の術前・術後に1度ずつ合計しても5分ほどであった。あとは、6週間後のチェックのときだけで、それも必ずしも主治医が診るとは限りませんと但し書きがしてあった。退院後、何か問題があったらGP(かかりつけの家庭医)に行くようにということである。
が、医療関係者は実によく面倒を見てくれた。看護婦さんたちはとてもよく働くし、感じがよい。院内感染が心配されていたが、患者が退院すると、即座に新しいシーツに換え、ベッドのすみずみまで殺菌効果のある使い捨てワイプで拭き取る。新しく用意されたベッドに座った後があるのを見て(たぶん隣のベッドに見舞いに来た人が座ったのだろう)、看護婦がまたシーツを取り替えていた。1日に何度も掃除の人が病室に入って、床を拭いている。
日本人女性の友人が入院したとき、差別を受けて、食事の配膳は一番最後、ついには食事を運んできてくれさえしなくなり、配膳所まで行ってその場で食べたというひどい話を聞いていたのだが、ここの配膳係(兼清掃員)の男性はとても親切だった。水曜日の晩家に帰る前にわたしのベッドに立ち寄ってくれて、もし木曜日か金曜日に退院するのなら、自分は休みなのでもう会わないだろうから、元気でねと挨拶をしていった。看護婦さんたちも、かゆいところに手が届くような面倒見のよさで、退院するときに迎えの車を待っていたら、「待っている間にお茶でもいかが?」と聞いてくれた。病院と言うよりは誰かの家にいるような雰囲気である。
あまりに事務の手際の悪さに、一度は自腹を切って私立の病院で手術を受けることも考えた。5,600ポンド(約130万円)かかるらしいと聞いて断念したのだが、自分の希望する時期にすぐに手術を受けられる(国民健康保険だと5~6ヶ月待ち)ということ以外はあまりメリットはないように思う。これらの治療をすべて無料で受けられたのはやっぱりありがたい。