ペドロランド日記

スペインの国際村「ペドロランド」を中心にフランスとイギリスに発信地を移しながら、日々の出来事を綴っています。

ペドロランドのクリスマス

2006-12-29 18:45:22 | スペインの生活
先週1週間は午後になると雨が降り、気温も13度程度と寒い日が続いたが(お向かいのヘルムートが去った後、息子のミヒャエルとその友達夫婦・マーティンとスージーがドイツから遊びに来ていたときだった)、例年通り(と言ってもここ2年間クリスマスはイギリスだったのでわからないが)、クリスマスの日から天気が一転、暖かな晴天となった。今日も最高気温17度と暖か。週末には最高気温は19度まで上がるらしい。

クリスマスイブはジムとヴァルが経営する近くのバーでのクリスマスイブパーティーに出かける。集まったのは20人程度で、ほとんどがジムとヴァルの友人ばかり。こじんまりと親密な感じで、友達の家でのパーティーという雰囲気だった。食事はポークパイ・ソーセージロール・カクテルソーセージ・ジャケットポテトとチリコンカルネにコールスローサラダなど、典型的なイギリスの立食パーティーメニューだったが、ほとんどがヴァルの手作りでとてもおいしかった。ちなみに会費は15ユーロ(約2,300円)で、ドリンクは別。

クリスマス当日は、かねてから予約してあったイギリス人の経営するレストランで典型的なイギリスのクリスマスディナーをいただく。今年は、夫の弟一家が総出でスペインにやってきた。スペインに住むお舅さんが今年の夏に51年間連れ添った奥さんを亡くしたばかりで、心配してクリスマスを一緒に過ごすために家族全員でやってきたというわけだ。クリスマスはイギリスではもっとも自殺の多いときらしい。特に、身内を亡くした場合、一番こたえるのが、家族が集まって楽しいときを過ごすクリスマスの時期というわけだ。わたしたちを含めて総勢8人のグループとなった。

食事は3コースからなり、それぞれ選択の余地があったのだが、1年に1度の縁起物(?)だし、伝統の七面鳥のローストとクリスマスプディングのデザートを選んだ。わたしは本当はこのこってりどっしりしたクリスマスプディングが好きではない。子供の頃のおせち料理と同じで、1年に1度で結構という代物である(今では味覚が大人になったので、好きなおせち料理も増えてきたけど)。

不思議なのはクリスマスプディングのソース。伝統のブランデーソース付きなのだが、このソースが実に不思議な味がする。外見は白いとろりとしたソースに茶色のぶつぶつが入っているのだが、なにかデザートにあるまじき味が混じっている感じだ。しきりにこれは何の味かと考えていると、夫の弟が「このブランデーソース、マッシュルームスープの味がする」とこぼした。それでやっと謎が解けた。しかし、マッシュルームスープをベースにデザート用のブランデーソースを作るという発想が理解できない。

2時間かけての食事が終わり、夕方から余興が始まる。女性歌手がまずはクリスマスソングから歌い始めた。実はこの歌手、牧師さんの奥さんで、この夏夫の弟のお姑さんが亡くなったときに、葬式で歌を歌ったのがこの女性だったそうだ。ミキシングの機械を操作しているのがそのご主人で、葬式を執り行った牧師さんである。せっかくやもめになったばかりのフレッドを慰めようとにぎやかなクリスマスディナーになったのに、また悲しい思い出が蘇ってきてしまったりしないかと心配になった。

この女性歌手、歌はうまいのだが、レパートリーの狭さが問題だ。ポーグスの「フェアリーテール・イン・ニューヨーク」のリクエストがあって、カラオケの画面を見ながら歌い始めたが、この歌をまったく知らなかったらしい(今ではクリスマスソングの定番なのに)。画面に現れた粗暴な言葉に驚いていた。牧師さんの奥さんにはちょっと刺激が強かったかもしれない。

素人のカラオケ歌手などに、それで食べていけるほどうまくはないぞという冗談で、イギリスではよく"Don't give up your day job"という言い回しが使われる。この女性歌手の場合、文字通り昼間の仕事(=葬式歌手)のほうが本職なのである。人に聞かせるようなしっとりした歌はうまく歌いこなせるのだが、パーティームードを盛り上げて、みんなが一緒に歌ったり踊ったりしたくなるような歌はあまり知らないらしい。夜の仕事で成功するためには、もう少し研究と練習が必要だ。

3カ国住み比べ

2006-12-15 15:39:17 | 異文化・風俗・習慣
今週初めからいよいよ寒くなってきた。日中の最高気温は17度ほど。最近は昼間からガスストーブをつけている。

スペイン・イギリス・フランスと住んでみて、どこが一番住みやすいかと言うと、便利さの点ではやはりイギリスだろう。とにかく物が豊富である。トレーラーハウスのある村も結構田舎であるが、それでも歩ける範囲内(片道15分だが)にいわゆるコンビニらしきものがあり、たいていのものは手に入る。近くの町まで車で出れば、デパートはあるし、スーパーも品揃えが豊富で、物欲を満足させるにはやっぱりイギリスだ。

が、難点は物価が高いこと。でも、イギリスの所得水準は高いほうなので、現地に住んで、そこそこの給料をもらっていたら、それほど物価の高さは感じないのかもしれない。

その点、スペインは物価が安い。その代わりに売っているものの質はあまりよくなくて、品揃えも少ない。もっとも、都会はまた話が別だろうが、その都会は遠いのだ。フランスもこの点では同じ印象がある。が、異なるのは物価の高さ。イギリスよりは物価が安いが、決して安くはない。地元の人たち(つまりフランスの田舎に住む人たち)は、こんなに稼いでいないだろうにと思っていたら、先日とても興味深い統計を目にした。

OECD(経済協力開発機構)がまとめた統計で、加盟国内で所得と物価との関係を調べたものである。これによると、2005年のOECD加盟国の平均を100とした場合、イギリスの物価水準は111、所得水準は111となっている。つまり、物価水準と所得水準のつりあいは取れているわけだ。スペインの物価は93、所得は94。やっぱり物価はイギリスよりずっと安い。これに対して、フランスの物価水準は109で所得のほうは104。わたしの生活しての実感は実際に統計によって裏付けられたわけである。物価はスペイン・フランス・イギリスの順に高くて、フランスの所得は物価の高さに追いついていない。フランスの人たちは暮らすのがたいへんそうだ。フランスのスーパーで、50代くらいの主婦が「カリフラワー1個が3ユーロ(464円)もするなんて!」と悲鳴を上げていたが、きっとこれがフランス人の本音なのだろう(でも、そこまでして8月にカリフラワーを食べなくてもいいと思うけど)。

ちなみに、同じ調査で日本の物価水準は114で、所得水準は105となっている。暮らしにくいのは、フランスも日本も同じかもしれない。もっとも1999年の調査では日本の物価水準は143(所得は110)であるから、物価はずいぶんと下がってきているようだ。


スペインの強力粉事情

2006-12-07 17:15:36 | スペインの生活
最近さぼっていたので、まずはお天気の話など。ペドロランドはこのところ暖かい日が続いている。日中の気温は22度くらい。12月に日向ぼっこが楽しめるというのはありがたい。日向で座っていると汗ばんでくるくらいだ。が、夜はさすがに気温が下がってガスストーブが必要になる。暖炉で薪を燃やす家もあって、夜気の中に秋の匂いが漂ってくる。しかし、レーゲンマイスターことウィルフレッドが昨日ドイツからやってきたので、きっとすぐに天気が崩れることだろう。

さて、イギリスから持ってきた5キロのグラナリーフラワーがまだ半分弱ほど残っているのだが、そろそろ小麦粉調査を始めることにした。

まず近所のスーパーマーケット、メルカドナ。この店はバレンシア地方で展開しているスーパーチェーンで、地元産の食料品を中心としている。規模としては比較的小型。自社ブランド商品ばかりで、ほかのブランドを置かないのが欠点である。小麦粉は、自社ブランドの製菓用小麦粉と揚げ物用の小麦粉の2種類と、イギリスから輸入したと思われるホームプライド社の小麦粉だけ。製菓用と揚げ物用ということはどちらも薄力粉ということですよね?ホームプライド社の小麦粉の袋には、英語で"self-raising flour"と書いてある。つまりふくらし粉入りだ。スペイン語の輸入ラベルには製菓用と書いてある。というわけで、どれもパン作りには適していないようである。

我が家から車で15分ほどの知人の家を訪れたときに、新しくできた近くのイギリス食料品店に行く機会があった。ドアを開けるなり目に飛び込んできたのが、パン用の強力粉。思わず躍り上がってしまった。そこはホームベーカリー・コーナーであった。白の強力粉だけでなく全粒粉の強力粉まである。残念ながら普通のグラナリーフラワーはなかったが、代わりにグラナリーのミックスは置いてあった。小麦粉と使い比べてみるのもおもしろいかもしれない。ホームベーカリー用のインスタントのイーストまであるし、ここはホームベーカリー利用者の(スペインの)天国である。

この品揃えの違いには驚いた。スペイン人にとって、パンとは買うものであり、家で作るものではないのだろうか。実際、わたしたちもこれまでは近くのキオスクで毎日焼きたてのパンを買っていた。その前は、小型トラックに乗ったパン屋がうちの前までパンを売りに来ていた。

スペインで暮らすイギリス人の間でこんなにホームベーカリーが流行っていたというのは意外な発見であった。パサパサで軽い生地のバゲット型のパンと、これもパサパサでしかも甘い食パンが多いスペインでは、歯ざわりのしっとりしたふわふわの食パンが恋しいというイギリス人が多いのかもしれない。とりあえず、強力粉が手に入る場所が見つかったのは収穫だ。