金子みすゞの詩は、童謡らしくやさしい言葉の中に、何か深い、温かい
ものがあって、ホロリとさせられることが多いのですが、この『夕顔』の
詩がまさにそう。下を向いて咲く夕顔の寂しさに、胸がじんとなります。
お空の星が夕顔に、さびしかないの、とききました。
おちちのいろの夕顔は、さびしかないわ、といいました。
お空の星はそれっきり、すましてキラキラひかります。
さびしくなった夕顔は、だんだん下をむきました。
金子みすゞ童謡集『わたしと小鳥とすずと』より『夕顔』
源氏物語でも、垣根に咲く夕顔に目を留めた源氏がその家の住人、
つまり「夕顔の君」と文をやり取りすることから関係が始まります。
儚げながら可憐、美人薄命を絵に描いたような女人にピッタリの
花です。紫式部さんの力量ですね。
雨に濡れてうつむいた花の様は更にさびしげですが、これの実は瓢箪
の一種で、干ぴょうの原料です。干瓢巻を食べながら「夕顔の君」を思
い出すなんて、なかなか面白い感覚です。源氏は干ぴょうなんて食べ
たでしょうか?平安時代にはまだなかったかも。