キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

エミリ・ディキンソン

2013-03-25 10:05:52 | 季節の花々
             

             The Grass so little has to do - 草はなすべきことがあんまりない -

             A Sphere of simple Green - 単純な緑の広がり-

             With only butterflies to brood ただ蝶の卵を孵し

             And Bees to entertain 蜜蜂をもてなすだけ - 亀井俊介編「ディキンソン詩集」より

          生前はほとんど知られず短い生涯を終えたが、今ではアメリカ最高の詩人の一人

          に数えられるエミリ・ディキンソン。厳しいピューリタニズムの宗教的束縛の中

          で、深い洞察と繊細かつ大胆でユニークな言葉で綴られた数々の詩は、人の心

          を揺さぶらないではいません。自分を律することの厳しい人だったようですが、

          こんな自然への讃歌のような詩もあるんですね。草木の芽吹くこの季節に読むと

          ことさら愛おしい詩です。I wish I were a Hay-わたしは乾草になれたらいいのに-

          という行で、この詩は終わります。読んだ私にも、こんな草になりたいという思い

          が溢れます。

                 

          『野鳥観察とパンくず ― エミリ・ディキンソンの「生」の探求 ― 』という

          ディキンソン研究論文を、英文学徒の妹が発表しました。良い論文です。

          詩の中の花や鳥から考察したディキンソン論です。「貧しさを表すパンくずと、

          豊さを表すパン」の対比が的を得ていて、文章もなかなかに格調高く、我が

          妹の論文ながら感心しています。もっとも私は、ディキンソンの詩にしろ誰

          の詩にしろ、表面をかすめ読みするだけの全くの素人愛好家にすぎず、ディ

          キンソンについて、彼女を題材にした小説などから得た、わりとゴシップ的な

          一面しか知らないのですが。

自然と愛と孤独と ― ディキンスン詩集
Emily Dickinson,中島 完
国文社


          ともあれ、生前には10編ほどの詩しか世に出ず、死後に本国アメリカは言うに及

          ばず、今も世界中で愛好され、研究されているんなんて、彼女の詩の持つ深く大

          きな魅力を感じずに入られません。
コメント
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